不良品でも捨てないでね

 「わたし」という商品には、欠陥がある。

 それは、「3人以上の会話になったとき他人の発する言葉の意味がわからなくなってしまう」というものだ。

 きっとなんらかの障がいであることは間違いないのだが、もう検査をしても仕方がないと思っている。薬で改善したとしても ”改善” するだけであって、わたしの欲しい "普通の人間として生きる能力” は手に入らないから。

 おそらく「障がい」と呼ばれるこの現象と、なんとかここまでの22年間付き合ってきた。意味はわからなくともひとまず相槌をうってみたり(あとでゆっくり思い返せば意味が理解できることもしばしばある)、学生時代イベントなどで大人数を避けられないときはひたすら影を潜めたり。読書が好きなのは、1対1の関係に必然的になれてラクだからなのだと思う。

 しかし社会人になった今、さすがに限界を迎えてしまった。

 日常的に行われるテレビ会議では、なにについて話し合っているのか正直全くわからない。だから聞こえてきた言葉を箇条書きでひたすらメモする。(このときも不自然さが伝わらないように、わかったフリをして切り抜ける)あとでその言葉たちをつなぎ合わせて、やっと会議の内容が浮かび上がってくる。

 ほかにも、みんなが笑っているとき一体なにに笑っているかすらわからず困ることが多々あったり。でもひとりだけ真顔と言うのも目立つので、みんなが笑ったらわたしも笑ってみる。(目立つのは、この世でいちばん苦手だから。)

 ・・・うん、もう本当はわかっている。会社という組織への適応力がないに等しいこと。やさしい人たちがたくさんいる素敵な場所だけど、ずっと望んでいたこの職業だけど長くは働けないこと。無理して居座り続けたら、どんどんじぶんが苦しくなること。そしてこれから、不良品のじぶんが不良品のままで働ける環境をつくらなくてはならないこと。

 不良品、生きます宣言。(日によって変動があるのはお許しくださいませ~)

 同じ悩みをもつひと、世界にどれくらいいるのかな。いるとしたら、どうやって暮らしているんだろう。

 ふお~海をみにいきたいな~