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舞台『ブライトン・ビーチ回顧録』懐古録

9月末、東京芸術劇場で舞台『ブライトン・ビーチ回顧録』を見た。

『ブライトン・ビーチ回顧録』はブロードウェイの大御所コメディ作家、ニール・サイモン三部作の1作目であり、思春期の少年ユージンがユダヤ人の一家の中で成長する姿を描いた作品である。


キャストについて

ユージン役はこの作品が初の単独主演舞台となるSexyZoneの佐藤勝利。母ケイト役を松下由樹、兄スタンリー役を入野自由、父ジャックを神保悟志が務めたほか、ケイトの妹ブランチを須藤理彩、その長女ローラを川島海荷、次女ローリーを岩田華怜が演じた。

今回は、主演を務めたSexyZoneの佐藤勝利の話を中心にさせてくれ。

まず見た目。佐藤勝利は1996年10月30日生まれでブライトン・ビーチ回顧録の上演中は24歳。そんな彼が演じたユージンは14歳。実年齢の10個下…。そろそろ高校生役もねぇ…って頃にさらに年下の役持ってくるのヤバすぎだろ。

でも舞台に立っている姿を見て本当に驚いた。コンサートなどで見る度に華奢だな~華奢だな~と思ってはいたけど、やっぱり華奢だな。兄役の入野自由のガタイが良いのも相まって2人並ぶと本当に良い。ちゃんと14歳の弟じゃねぇか…。

あんまり言うとあれかな。嫌かな…。King&Princeの髙橋海人がお姉ちゃんに言われて嫌だった言葉に「華奢」を挙げていたので心配。

骨格ばかりは努力してもどうにもならないので、これは本当にキャスティングのセンスを感じた。成人男性でも14歳を上手に演じられる人はたくさん居ると思う。でも骨格から14歳に入れる人はそうそういない。視覚が与える情報ってやっぱり大きい。

登場人物全員で食卓を囲むシーン、ユージンは客席に背を向ける形で座っていたんだけど、その時の背中から滲み出るクソガキ感ったらないぞ。これが背中で魅せる…ってコト!?

こんな繊細な身体のつくりとは相対的に佐藤勝利は少し大袈裟なくらいの演技が似合う。映画やドラマよりも舞台向き、それもコメディ向きだなと思った。

世間的にはまだ大人しく真面目な性格の正統派ジャニーズのイメージが強いかもしれないが、実際はかなり「笑い」への執着が強い。コメディからコント、漫才、落語まで好きで勉強しているらしく、パンフレットでもそのようなことを語っている。アイドルとお笑いって一見結びつかないように思えるかもしれないけど、人を笑顔にすることに貪欲なアイドルは意外とコメディ作品に向いているんじゃないかと思った。


セットのつくりが一軒家を真ん中で切断したような所謂シルバニア形式だったからスポットライトが当たっていなくてもず~~っと見えてる。スポットライトが当たっているのはことが起こっているリビングだけど、2階で本を読んでいるところも客席からは見えてるみたいな。複数回見に行ったし、せっかくだからそっちにも注目してたけど、なかなかおもしろかった。

特に好きだったのは部屋で化粧をする川島海荷と風呂場でタバコを吸う入野自由。



ストーリーについて

家族がぶつかるシーンが何回かあったんだけど、結構心理描写が丁寧だったから自分にその経験がなくても共感できる。

ケイトがお嬢様気質で悲劇のヒロイン気取りの(悪口?)ブランチにムカつく気持ちもすっげ~わかったし、ブランチのケイトに対する「そんなこと言ってくれないと分かんない」って気持ちもすっげ~分かった。
ノーラの「母親はいっつも身体の弱い妹を優先して私のことを見てくれない」っていうのは事実ではあるんだろうけど、ノーラが思っているよりブランチはノーラのことも同じように愛してたと思う。そこが見えずに「私ばかりが可哀想」と悲壮感に浸っているらへんがやっぱこの人たち(ノーラとブランチ)親子だな…ってなったよな。

ユージンの性知識の仕入れどころがほぼ全部兄のスタンリーであることを踏まえた上で、スタンリーの「俺にはそんなの教えてくれる人なんていなかったから全部自分で勉強したんだ」という旨の発言も男兄弟の解像度がめっちゃ高い。
「妹だけじゃなくて私のことも見てよ!」というノーラの気持ちも分かるけど「弟には自分より成功して欲しい」というスタンリーの気持ちがすっげ~わかる。
特にユージンの成績表を見てスタンリーが言った「お前は頭が良いから大学へ行け」っていう言葉は自分が下の兄弟に思ったことに近く、少し泣いた。


戦争中だけど、目の前で戦いが起こっているわけではない。でも明日がどうなっているかはわからないし、何となく先が見えない感じはコロナ渦にある現代に少し通じるところがあるなと感じた。

特に今まで我慢できていたようなことがこの不安と貧しさの中でどうしても目について、ケイトが妹のブランチに感情をぶつけてしまう様はさながらコロナ渦で価値観の違いが露呈して上手くいかなくなってしまった家族のようだった。
劇中でケイトとブランチは和解と共生を選んだけれど、後者はきっとこのまま疎遠になってしまうケースが多いと思う。ここが家族が支え合わないと生きていけなかった1930年代と1人でも生きていける2020年代の違いかなんじゃないかな。

1人でも生きていけるこの時代に家族と生きる意味なども考えてしまった。



舞台と言えばミュージカルを見に行くことばかりだったけど、ストレートプレイも本当に良かった。これからも食わず嫌いせず色々なエンターテインメントに手を伸ばしたい。

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