夜の仕事をしてみて感じたこと

推進BGM:ヴァンパイア

学生時代、キャバクラで働いた経験がある。バイト感覚で週に2回。木曜と土曜だけ。きっかけは駅前でスカウトされたからだ。 漠然とお金がほしーなーと思っていた。好きなゲームもリリースされるし女はとにかくお金が掛かる。美容室代、永久脱毛、ネイルにも凝っていたし新しいコスメもスキンケアも服も必要だ。

友達は心配していたが元々どんな分野でも根拠がない自信があり変な度胸みたなものがあった。夜の仕事には多少の偏見はあったものの今流行りの自己肯定感を養う子育てを親がしてくれていたのかスカウトされたのなら私にもニーズがあるのだろうと楽観的に思っていた。それよりも人とお酒を飲んで会話するだけで対価が支払われるなんてこんな楽しいことはないと遊びに近い感覚で考えていた。

キャバクラのバイトは一日体験というものがあり、その名のとおり一日お試しで働いてみてその後どうするか決めることができる。その際例え一回もお客につくことがなくても一日分のお給料がいただける。今考えれば店側の戦略かもしれないが私の一日体験は一度も接客することなく5時間待機室で携帯を見ていただけで給料を貰うことが出来た。

これ幸いとそのまま週2回そこで働くことになる。元々お酒は嫌いではなかったし人と話すことも億劫ではなかった。なにもかもが煌びやかでキャバ嬢はお姫様のように大事にされた。独特のルールがあり基本秘密保持、コンプライアンスの塊だった。特に女の子の個人情報は客に絶対に漏れることがあってはいけない。若くてかわいいこも子供がいたり結婚していたりする。うっかりヘルプで○○さんお子さんいるから~なんて客に言おうものならバレた時にはツカツカとピンヒールで駆けよられ思わぬ仕打ちに合うだろう。

キャバクラでお客さんを見ていると一つの共通点が見えてくる。どの方も人間性が素晴らしいことだ。エロオヤジではあるが皆そこそこ人生を経験している世間でも勝ち組といわれる人たちで、仮に1つ相談を持ち掛けようものならガラッと人が変わり新味になって聞いてくれ、あらゆる面から真剣に答えを出す。中には口調が強めで一見強面の人も中身を知ると人情に溢れる素晴らしい人であることがわかった。

少し前に経済雑誌のインタビューでTOYOTA の社長の記事を読んだ。「私たちの会社では上司を選ぶ時仕事が出来る人間は選ばない。選ぶのは人間性が優れた人間を上司にするのです。じゃないと下の人間がついてこないんです。」と語っていた。   

人は仕事を人間性を買って任せることを学んだ。 

そもそも簡単にお金が欲しくて働いたキャバクラも人間観察のほうが楽しくてある意味夢中になった。夢中なのは客だけではなく、一緒に働く女の子もだ。皆びっくりするくらい美人であらゆるジャンルがそろっている。その時感じたことは「かわいい女の子はみんな夜にいたんだ…」ということ。どの娘も恐ろしいくらい淡白で自分以外には興味がないという顔で働いていた。それでも客が来れば信じられないくらい人が変わり愛想よく振りまくのだ。精神的に大人で派閥もない。分かり易くいえばそれぞれが個人経営をしているかのような感覚だ。お揃いの物を一緒に揃えよう♡と言われることもなければ変なマウントを取ろうとしてくることもない。私の性に合っていた。

そのうち指名を貰えるようになった。同伴といって出勤前に食事をし一緒に来店したり、アフター(閉店後も別のお店で飲む)の誘いもくる。そうなるとお給料もプラスに貰える。
この人が今日この場所で最高に楽しい時間を過ごす為には、そして次も必要だと感じて貰えるために自分は今どんな行動を起こせばいいか考えるのも楽しかった。
正にゲーム感覚だ。頭のいい彼らの事だから一生懸命は直ぐに伝わる。一生懸命が買われれば次は指名を貰える。彼らは人の努力を買う。一生懸命な人間が大好きだ。


しかし、大人で良い客ばかりではない…。
中にはストーカーのような人も現れる。閉店後に店の外で待ち伏せしていたり、講義中なのに今から会いたいと駄々をこねる客もいた。

正直、私の場合はただのバイトだ。
学業を疎かにするつもりもないし、
プライベートで客に会うなんて持っての他だ。
間違いなくそんな時間があるならゲームをする!
お金を稼ぐ手段以外の何物でもない。

女の子の中には客と体の関係をもったり、客と付き合ったりしてる人がいたが私には信じられなかった。

よく、モテたい!という人がいるが、この時学んだ事は「モテるとはつらい」だ!
自分がおこがましいことを言っているのはわかる。しかしモテるとは大変な労働だ。
好意を持ってくれているひとりひとりを相手する時間!
付かず離れずの間合いを保ち次の来店に繋げるのだ。
人を読み常にプラス発言をし神経を使う。
客商売ゆえあしらうことも出来ない。

本物の銀座のホステスさんなら「それはまた今度来てくれたら考えてもいいよ」などと上手いことを言い次回の来店に繋げるのだろうが私には上手く操る度量がなかった。と言うか嘘がつけなかった。
例え仕事でも好きでもない人に勘違いさせるようなことは言えなかった()
いかに自分を騙して働けるか。まずいのもを食べても「美味しい!」と食レポする芸能人の凄さを知った。
プロ意識の問題かバカ正直なのか不器用なのか最後まで有耶無耶にしてきた。
この仕事に対しての最大の自分の課題としながら手を付けることなく進路をきっかけに辞めた。

もし人生で何か経験をしたい、人として成長したいと思う女子がいたら是非就活前の学生時に夜のお仕事をお勧めしたい。
この仕事で学んだ事は沢山ある。
自分の磨き方、本当の美しさ、人間の本質、お金の使い方、プロ意識、人の立て方。
沢山の人と接することで人の系統がみえてくる。こんな雰囲気の人はこう質問したら大体こう答える。あれが好きな人は大体あんな性格。
ゲームの様に人間を攻略できる。大学の講義より素晴らしいし、本を100冊読むより勉強になる。間違いなくその後の人生にも活きる。
正直夜の世界は偏見の目を持っていたがあの仕事こそ馬鹿では出来ない。完全なマニュアルはない。
雰囲気を読み取り、場を察っし、客のニーズに合わせて楽しいや素敵な時間をつくる。

夜の世界は私たちが思っている以上に素晴らしいひとが沢山いて物凄い情報が飛び交っている。
彼らが商業施設の話をすれば実際に数年後その場所に巨大モールが建つ。
それらたくさんの会話を聞くことできっと就職の面接も何も緊張することなく内定を勝ち取れるだろう。

「誠実に仕事をすれば君がストリッパーでも構わない」
大好きな映画のセリフだ。
仕事の種類に優劣はない。
どんな仕事でも己さへ持っていれば人は輝ける。



ーN-

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