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虫の羽ばたき、スピード、ブルー

この季節でも羽虫がいることに驚く
届いた手紙に付着していた卵から孵ったのか
それとも長く続いた夜に退屈して気まぐれに羽化してみたのか
時々飲み残したワインに浮かんで死んでいるのを見ると
予言されたおれの死に思えてならない
ちっぽけで態度ばかりデカくて不機嫌でいやらしい
そんなおれの死に方だ

いつでも「ブルーに生まれついて」のイーサンホーク演じる
チェットベイカーの生き方に苦しみと輝きを覚える
ひとは誰もがダイヤモンドの輝きを持っているが
石のつくりや光の当たり方がちがう

かなしいことが起きた時に待ち望んでいたようなきもちになるひともいれば
太陽を信仰して薄暗い部屋さえもむりやりに照らしてしまうひともいる
(おれが死んだら脳と右手だけ残して永遠に描き続ける機械にしてほしい)

羽虫は自殺したのか 事故だったのか そもそも虫の世界に事故の概念はあるのか 生の実感はあるのか
虫の感覚を思うと濡れた薄いガラス板を想起させる
意識は暗くどこへでも滑り込むスピードの世界

話は変わるがおれは昨日まで8歳だったが気付いたら33歳になっていた
ガチョウのように無理矢理に時間と栄養をぶち込まれた
そういう時代でそういう愛だった
やがて死亡し丁寧な解剖の末
何者でもなかったことにおれ自身が気付くだろう

それは虫のスピードと同じだ
強烈な光に曝されたとおもえば
一瞬で生は終わり 人生の解剖図を見せつけられる
すべての嘘が暴かれ すべての裏切りを教えられる
そしてそのままどこかの母親の腹に続く道を歩かされて
強烈な光に曝されて…
 

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