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第3の感染症診断~感染防御・免疫力診断~感染症診療の基本的な考え方~その7

みなさまこんにちは。
本日は、引き続き感染症診断のお話の続きです。

本ノート記事は、世界初公開の内容です~著者自信も改善の余地があるものと考えていますので、読者の皆様もお読みになり、自分なりに考えてみていただければと思います。

それではまいります。

これまで、2つの感染症診断
・臓器・解剖学的診断
・微生物学的診断

についてお話いたしました。

そして、これら2つ感染症診断は、相互に強く影響し合う・影響され合う関係~相互規制関係~にあるということも説明いたしました。

本日は、この2つの感染症診断を大きく左右する第3の感染症診断
・感染防御・免疫力診断

について考えてみます。

まずは、ヒトに備わっている、感染症に対するヒトの防御能力・いわゆる免疫力に影響する要因について確認してみましょう。

ヒトの感染防御に大きな役割をはたしているものは、皆様の体表に存在している、皮膚や粘膜となります。
もし、皮膚が正常な構造・機能を果たせないと、環境中・たとえば土の中の細菌・微生物等にふれただけでも、感染が成立してしまう可能性があります。
また、粘膜・特に消化管粘膜が正常でないと、食べ物・飲み物の中の細菌・微生物が消化管粘膜の破綻部位から侵入し、感染を引き起こし兼ねないことも想像に難くありませんね。
同様に、ヒトのあらゆる臓器が何らかの構造上・生理機能上の問題を抱えた場合にも、正常な状態と比較して、感染症への抵抗力・免疫力が低下しているであろうことも予想可能と思います。
ただし、これら感染防御・バリア機能の破綻、各種臓器・組織の正常構造・生理機能の破綻は、どの程度免疫力の低下を来すのか?の定量的な評価は困難となります。
ですから、感染防御・バリア機能の破綻については、その問題が存在していることを正しく認識すること~これが重要なのではないかと考えております。


そして、感染防御・バリア機能の破綻が想定される部位の感染症の存在~臓器・解剖学的診断~について注意深く確認することが重要であることも言うまでもありませんね。(これも広義の相互規制関係とも捉えられるでしょうか)。


次は、非特異的な免疫応答~好中球やマクロファージが担っている食細胞機能・貪食能です。これらが障害されることで有名なのが、抗悪性腫瘍剤投与後に生じる白血球減少症・好中球減少症でしょうか。

これらは、血液検査・白血球分画検査である程度推察可能ではあります。

また、しばしば特定の医療行為~薬剤投与や放射線治療等~の後に生じるものでもあり、予想・推定がしやすい場合もあるかと思います。

そして、好中球減少症の際に、注意する微生物学的診断(細菌)は~

そうです!緑膿菌ですね。

3つ目は、特異的免疫応答です。
これには、抗体・免疫グロブリン、補体、リンパ球等が関与しております。
そして特異的免疫応答は、予防接種・ワクチンにより能動的に獲得する努力が可能なものでもあります。
また、近年は感染症領域でも、特定の微生物に対する抗体製剤も臨床現場で使用されるようになってまいりました。
・例:RSウイルス抗体製剤、SARS-CoV-2モノクローナル抗体製剤など
特異的免疫応答の評価については、各種ウイルス抗体価(麻しん、風しん、ムンプス、水痘等)や、B型肝炎ウイルスに対するHBs抗体価等評価の可能な微生物が存在している一方、臨床現場でしばしばおめにかかる微生物の多くは、特異的免疫応答の評価が困難であることもまた事実ですね。

最後に、感染防御・免疫力診断の要点をまとめておきます。

上記スライドの補足です。

・年齢加齢が免疫力の低下にかかわることは、ここ数年間の新型コロナウイルス感染症流行により、広く一般の皆様にも認識されやすい状況が生まれてきたでしょうか。
新型コロナウイルス感染症を発症した場合、年齢が高くなるほど、重症・死亡の可能性が高くなる~新型コロナウイルスを排除する能力≒免疫力~が低下していくと想定される

このことが広く知られるようになったことは、年齢・加齢が免疫力の低下をもたらすことを認識する重要性を広く一般の皆様にも認識していただける絶好の機会と捉えております。

ちなみに、50才を目安とさせていただいたのは、以下の理由からです。
 ・帯状疱疹ワクチンの接種開始の目安
 ・50才以上の細菌性髄膜炎でリステリア菌(Listeria monocytogenes)考慮
上記2つの例は、どちらも加齢に伴う細胞性免疫不全の際に問題となる微生物の例となるでしょうか。

筆者はこれまで、感染防御・免疫力診断の内容を、
・免疫不全の背景因子

として、評価して感染症診断・治療に活用するように教育・指導してまいりました。

残念ながらこの方法では、目の前の患者の皆様の免疫状態を適切に評価して、感染症診断・治療の最適化を図ることにつながるような活用の仕方がなされることが少なく、この点の改善が必要であると感じておりました。

そこで今回、感染防御・バリア機構の評価と免疫力評価を一括して、その重要度をランクアップさせて問題認識をしていただくべく、第3の感染症診断として感染防御・免疫力診断を提案いたしました。

まだまだ改善が必要な部分は多いと思いますが、ぜひ3つの感染症診断を考え・実践いただくことで、患者の皆様の適切な感染症診療へとつながる機会が増えれば、筆者は大変うれしく思います。

感染症診断シリーズもそろそろそろそろ終盤にさしかかってまいりました。次回もぜひご拝読くださいね。

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