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抗菌薬感受性結果を臨床判断に活かす方法~最適治療抗菌薬の選び方①

本日は、細菌検査結果が判明した後の「最適治療抗菌薬」選択のための導入のお話です。

抗菌薬は「2度決定」するのでしたね。
参考:正しい診断なくして適切な治療なし

https://note.com/idshowa/n/nba77ccf8479b

1度目抗菌薬決定:初期治療抗菌薬
2度目抗菌薬決定:最適治療抗菌薬
(初期治療抗菌薬と最適治療抗菌薬が同一の場合もあり得る)

初期治療抗菌薬
は、2つの感染症診断
 ・臓器・解剖学的診断
 ・微生物学的診断

この内、主に「微生物学的診断」を推定し、目的とする細菌に対して、どれくらい有効なのか?の過去のデータ(これを『アンチバイオグラム』と言います)を参考に、初期治療抗菌薬を選択いたします。

今回は、初期治療抗菌薬開始「前」に提出した、血液培養や各種細菌検査の結果、「菌種同定+感受性結果」が判明した後、

最適治療抗菌薬をどのように選択するか?

のお話です。

あらかじめお話しておきますが、この「最適治療抗菌薬」の選択、

かなりムズカシイです。

ですから、少しずつお話を進めてまいりたいと思います。

最適治療抗菌薬選択に必要な情報は、確定した「2つの感染症診断」です。
・臓器・解剖学的診断
・微生物学的診断
 ・菌種同定
 ・薬剤感受性結果

2つの感染症診断が確定していれば、過去の知見(わかりやすく言えば教科書等)を参照すれば、多くの感染症病態の最適な抗菌薬選択は決定できることになります。

その際に、必要となるのが、細菌検査結果に記載のある「感受性検査結果の解釈」です。

日本の多くの医療機関で報告されている「細菌検査結果」は、
・菌種:多くは一番上に記載
・抗菌薬種類:左側に縦方向に略号(通常アルファベットの大文字)で記載
となっております。

この抗菌薬略号毎に、検出・同定された菌株の発育を阻害可能となった抗菌薬濃度≒最小発育阻止濃度(MIC:minimum inhibitory concentration)っぽいもの(MIC?)が記載されております。

ここで重要なのは、記載されているのは、多くの場合、最小発育阻止濃度MICそのものではなく、「MIC?っぽいもの」であるという点です。

この点は、次回以降詳しくお話する予定です。

さらに細菌検査結果には、もう一つ記載があります。

それが、感受性の判定結果です。通常、”S",”I",”R"の3種類です。
・”S":susceptible 感受性
・”I":intermediate 中間
・”R":resistant 耐性

そして、”S"と記載のある抗菌薬から「テキト~」に選べば、最適治療抗菌薬が選べる・・・わけではありません。

実は、ここでも「予想」が重要なんです。

最適治療抗菌薬選択で最も重要なことは、薬剤感受性結果を見る「前」に、2つの感染症診断
・臓器・解剖学的診断
・確定した微生物学的診断
この2つから、最適治療抗菌薬は「この抗菌薬」と「予想」しておくことが大切なのです。

で、この予想しておいた「この抗菌薬」の略号の部分を確認して、”S"(感受性)と記載があれば、安心して「この抗菌薬」を最適治療抗菌薬として選択すればよいのです。

ところが、世の中「予想」というのはハズレることもありますね。

「この抗菌薬」が、残念ながら”R"(耐性)であった場合はどうするか?

その場合には、あらかじめ第ニ選択抗菌薬「あの抗菌薬」を「予想」しておいて、「あの抗菌薬」の略号部分を確認して”S"(感受性)と記載があれば、「あの抗菌薬」を最適治療抗菌薬として選択すればよいのです。

では、「あの抗菌薬」も”R"(耐性)だったら・・・

第三の選択肢をあらかじめ「予想」しておけば、同様に対応可能ですね。

このように、臨床現場では、常に「先を読む」≒「予想」しておくことが重要なのです。

では、この最適治療抗菌薬を予想するためには、どうすれば良いでしょうか?

その際に、必要となる「勉強」が、各菌種の薬剤耐性機序を知ることとなります。

「予想」するためには「勉強」が必要なのでした。
参考:ヒトはなぜ勉強するのか?

薬剤耐性機序で重要なのが、「自然耐性」と「獲得耐性」です。
参考:薬剤耐性菌~自然耐性と獲得耐性

それでは、今回の話題である「抗菌薬感受性検査結果」を臨床判断に活かすためには、何か重要なのでしょうか?

読者の皆様が、手にした「細菌検査結果と感受性結果」。
そこから、「獲得耐性機序」を「予想」すること~これが重要なのです。

ちなみに、「自然耐性」の抗菌薬は、どんなに頑張ったって、「もともと効かない」わけですから、そもそも「最適治療抗菌薬」になるはずがありませんね。

それに対して、「獲得耐性」に関しては、検出された菌種・菌株が持っているか、持っていないかで、効く抗菌薬が変わる⇒最適治療抗菌薬選択に影響を与えることになるわけです。

そして、この「獲得耐性」の機序を、検出された原因菌が持っているかどうか?を予想するために活用するのが「感受性検査結果」なのです。

本日のお話のまとめです。

・2つの感染症診断から、最適治療抗菌薬を予想し抗菌薬選択肢を列挙
 その際に、第一選択から順に優先順位をつけておくことが望ましい
・最適治療抗菌薬を選択するためには感受性検査結果の解釈が重要
・特定の菌種が、どのような抗菌薬に「自然耐性」なのか?
・特定の菌種が、どような「獲得耐性」機序を持つ可能性があるのか?
 上記を予想するために、あらかじめ勉強して知っておく。
・そして、抗菌薬感受性結果を参考にして、検出された原因菌が、どのような「獲得耐性」機序を保有しているか予想し、最適治療抗菌薬を選択する。

感受性検査結果は「獲得耐性機序を『予想』する」ために活用する

これがわかると、抗菌薬選択が大変ラクになります。

今後、具体的な抗菌薬感受性結果の数値の解釈についてお話していく予定です。

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