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気になるコトバ⑧ーーーしっかりと

こんにちは。

やはり、このコトバにもふれておかなければならないでしょうね。

「しっかりと」あるいは「しっかり」 

政治家や役人、あるいは経営者のみなさんetc. 連発していますよね。とくにコロナ禍においては、国会、あるいは記者会見でこの言葉を聞かない日はない、というくらい多用されています。

なぜ「しっかりと」「しっかり」が多用されるのか? 結論から言ってしまうと、

「いま、しっかりできていないからしっかりやらなきゃいかんのだけれども、どうやればいいかまでは思いつかないので、とりあえず、『しっかり』とだけ言っておきます」

ということですね。

これだけでは身も蓋もないので、まず、そもそもの「しっかり」の意味から見ていきましょう。

「デジタル大辞泉」によれば、

しっかり【▽確り/×聢り】
[副](スル)
1 物事の基礎や構成が堅固で安定しているさま。
㋐かたく強いさま。「ロープを―(と)結ぶ」
㋑確かでゆるがないさま。「土台の―(と)した建物」
2 考えや人柄などが堅実で信用できるさま。「―(と)した意見の持ち主」「論旨の―(と)した論文」
3 気持ちを引き締めて確実にするさま。「―(と)勉強する」「上級生らしく―しなさい」
4 身心が健全であるさま。また、意識がはっきりしているさま。「―(と)した足どり」「高齢でも頭は―している」
5 十分であるさま。たくさん。皮肉をこめていうこともある。「今のうちに―(と)食べておく」「金を―ためこんでいる」
6 相場が上昇傾向にあるさま。

6番目の用法は「相場用語」だから、とりあえずおいておくとして、冒頭に述べたように、現状がまるで1〜5までの意味に当てはまらないのでとりあえず「しっかりと」と言うしかない、ということがわかりますね。まあ、結局のところ、一時しのぎ、その場しのぎの、意味のない決意表明、虚しいファイティングポーズなわけです。

で、言葉の話とは少しそれますが、これ(しっかりの多用)で済んじゃってる現状というのが、輪をかけて「しっかりと」を多用させることになっていることに私たちは気がつかなければなりません。

「しっかりと」という発言があったならば、その後に「あの件はどうなりました?」という追及があってしかるべきなのです。けれどもそれがなされないから、「しっかりと」と言えば、メディア(そしてその先にいる国民)は、それなりに納得していると、自分に都合の良いように思っているわけですね。

なにしろ政治家=公人としての発言が「撤回」できるし、「誤解を与えたとしたら申し訳ない」と、聴く側の理解力の責任を転嫁するし、「お答えをさし控える」とうそぶいて口を拭っていられる国ですから、そう言う人たちにとってはとりあえずの「やってる感」を出すには「しっかり」はじつに都合のいい言葉だといえるでしょう。

しかしねえ。言葉の用法、意味は時代とともに変遷していくものだ、という大前提に立つとしても、もともと語彙の少ない人たちが、おかしな使い方を連発して意味や用法が変わってしまうのはいかがなものかと思う今日この頃です。


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