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(株)片平エンジニアリング・インターナショナル新社長に聞く【若手人材が活躍する体制を目指す】

2022年5月に創設35周年を迎えた片平エンジニアリング・インターナショナルは、 運輸交通から環境・社会配慮までを担う総合コンサルタントとして 開発途上国を中心にプロジェクトを手がけてきた。 2022年9月に代表取締役に就任した中村友彦氏に、35年の実績、今後の展望について聞いた。

代表取締役社長 中村 友彦氏
早稲田大学理工学部土木工学科卒業、1991年に(株)熊谷組入社。2002年に(株)片平エンジニアリング・インターナショナルへ入社し、17年5月に執行役員開発業務本部担当に就任。取締役開発業務本部長を経て22年9月から現職


Interview

国際機関事業にひるまない人材へ

― 新社長としての抱負は。
 片平エンジニアリング・イン ターナショナルは、交通インフラの総合コンサルタントである片平エンジニアリング (現・片平新日本技術) の海外事業部が独立する形で1987年に設立された。 以来、国際協力機構(JICA) の事業をはじめ、日本の政府開発援助 (ODA) の最前線で開発事業の基礎調査・計画・設計・施工管理、技術支援などを続けてきた。手がけた事業数は35年間で60カ国・900件を超える。
 近年は、途上国の社会経済の開発成長に伴い、道路や橋梁、鉄道などの運輸交通部門、貧困削減、環境改善、紛争地域の和平構築など複合的な課題の解決を目指す技術協力プロジェクトにも取り組んでいる。今後も弛まぬ努力を続ける、コンサルタントを目指したい。

― 世界銀行やアジア開発銀行 (ADB) などJICA以外の案件受注にも積極的と聞きます。 社員にはどのような意識を求めますか
 日本ODAの規模が先細る中、さまざまなドナーの事業に対応できる必要がある。国際機関などの案件を受注するにあたり、「契約形態が違う」「図面の作り方が異なる」「国際機関の案件は簡単に入れない」などの違いに抵抗を感じるスタッフもいるようだ。 しかし、開発途上国における技術課題は共通点が多い。大きな視点で見れば、そうした目の前の小さな “違い”はそれほど重要なことではない。
 むしろ、柔軟な体質に変わるため、社内の人材の流動化に取り組んでいく。たとえば、これまでJICAの事業を担う人材とADBなど国際開発金融機関のプロジェクトに携わる人材は分かれて仕事をしていた。しかし、今後は、より一体となって事業に取り組む構えだ。JICA案件をやっていた人が国際機関の案件を担ったり、国際機関を担当していた人がJICA事業に取り組んだり、互いのノウハウを生かし、柔軟な対応ができる人材を育成していく。


活躍する外国人人材

― 他に課題はありますか。
 前社長から引き継いだ課題の一つに「技術者の確保」がある。現在、当社では正社員70人、契約社員30人、業務委託スタッフ約 70人で、合わせて170人ほどが働いている。環境社会配慮や施工計画など、事業全体を見渡すことができる人材を豊富に有しているのが当社の強みだ。しかし、社員の平均年齢は50代。主力は60歳以上の人材が多い。
 若い人材が活躍できる体制づくりが不可欠だ。特に必要なのはめまぐるしく変わる途上国のニーズに適切かつ迅速に対応していく力だ。優れた能力、斬新な発想と積極性、協調性に溢れた人材の確保に取り組む。
また、現在、多くの女性も活躍している。主に環境社会配慮や平和構築の分野だ。今後も積極的に採用したい。
 さらに、意欲ある外国人人材の採用も積極的に続ける。これまで東南アジアの国々、ネパールやウズベキスタン、メキシコ出身の社員が入社している。今年はベトナムやケニアから人材を雇用した。外国人の雇用にあたって日本語能 力が課題となる。しかし、日本語ができなくても、海外で活躍できる。フィリピンやベトナム、ケニ ア出身の社員は、もともと現地事業を遂行するため現地で雇用した。しかし、今では世界中で活躍する正社員になっている。

― 社員の働き方に変化は。
 2020年に新型コロナウイルス が拡大した当初、弊社でもテレワークを推奨した。 しかし、 今は「出社」を基本とする体制に変更している。テレワークを続けた結果、コミュニケーション不足による課題が増えたからだ。社員アンケートでも「テレワークをしたい」 という人は4割程度だった。特に途上国の事業を遠隔で進めるのは難しい。現場重視の事業展開の必要性を改めて感じている。


現地事務所との連携を強化

― 重視していく地域は。
 当社は東南アジアを中心に、世界各国で道路や橋梁づくりを手がけてきた。今後も同地域で新しい案件に積極的に取り組んでいく他、かつて手がけ、老朽化している道路や橋梁などのメンテナンスも行う。また、アフリカなど、他地域における事業にも注力する。その上で重視するのは現地事務所との連携強化だ 現在フィリピンのマニラ支店が各国の有償案件 民間案件を管理、東京本社が調査、技術協力プロジェクト案件などを管理しているが、東京本社とマニラ支店、また各国現地事務所と案件情報、課題などの共有を強化し、より一体となり事業に取り組みたい。

― 持続可能な開発目標(SDGs) やカーボンニュートラルなどへの取り組みは。
 当社の中心業務である、途上国の運輸・交通インフラ整備はSDGsの目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」と深い関係がある。たとえば、運輸・交通インフラの設計や建設の際、 環境影響評価や住民移転計画などの調査を通して、環境や気候変動への影響を最小限に抑えている。高齢者や女性、子ども、障がい者、貧困層など周囲への影響にも配慮している。
 こうした取り組みを、「BIM/ CIM」導入を通じて計画、調査、設計段階から三次元モデルを導入し、事業全体の情報共有を容易にすることで、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る。また、カーボンニュートラル関連では、低炭素型プロジェクトなど環境に配慮した事業や、環境と防災に関連する事業の提案にも力を入れている。

― ODAへの期待や要望とは。
 コロナ禍で案件数が急速に減り、組織運営に大きな影響を与えた。少しずつ数が増えて元に戻りつつあるが、ウクライナ問題の影響を懸念している。さらに原油高、円安により厳しい経済状況にある。こうした問題に根気強く立ち向かって行く必要がある。
 その上でも、当社はODA事業だけでなく民間事業に積極的に取り組む。現状、当社の民間セクターにおける売上は全体の10% に満たない。インドネシアなどでは民間企業による高速道路などの開発事業が盛んになりつつあり、その割合を高めていきたい。


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本記事は国際開発ジャーナル4月号に掲載されています。
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