よくわからない言葉を使う高学歴たち

 私は頭が悪い。
 最終学歴は高校で、これといって専門知識を得ようと進んで学んだりしなかったし、たぶん現役の学生よりテストの点が悪いはずだ。
 頭の悪い私だが、一般的な生活をして一般的な会社に所属して貧困層寄りな収入を得て適当に暮らしている。

 さて、私は最近、過去に大学を卒業し向上心や知識のある頭の良いと思われる人々と接する機会があり、たまに会話をするのだが、彼らの話す言葉はとてもわかりにくい。
 彼らはなぜかやたらとカタカナを使いたがり、難解な言い回しをするのだが、そのたびに私はイライラしながら「ええと、ごめんなさい。……つまり?」と聞かなければならない。これは業務を行うにあたって非常に非効率的だ。
 おそらく彼らは通常接するのが彼ら自身と同レベルの知識を持った人々で、同レベル間であれば難解な言い回しや単語でもたやすくコミュニケーションが取れるのだろう。でなければ、難解な言い回しや言葉を使える理由がないのだ。

 もちろん、頭の良い彼らの中には知識を持たない私にも通じる言葉を使う人はいる。だが残念なことにそういうひとは少数派だ。
 職場なので口にするのを我慢しているのだが、なぜ彼らは、小学生でも理解できるような言葉で話せないのか?
 いやまさかここで私が彼らのレベルに追いつく必要はないはずだ。レベルを下げるなんてしごく簡単だ。私がいまさら業務時間外に非効率的な意思疎通を克服するためだけに勉強するなんて、まったくもって不必要である。
 それが業務に関係していればいい? いいや違う。
 業務時間外に学ぶ必要があることがおかしいことだろう。だって、そこまでするほどの給与を私は得ていないだから。

 この、同レベルの知識間でしか伝わらない言語はニュースにも見受けられそのたびとても悲しく思う。
 私がぱっと思いつく顕著であった例はイギリスのEU離脱だった。世間は連日この「EU離脱」を報道し、ヨーロッパでの情勢や人々の様子をニュースで流し、そして私へ知らせた。だが、不思議なことにそもそもこの「EU離脱」がなんなのかを、小学生でも理解できるよう解説しているところは見当たらなかった。
 私は自力で少しずつ調べたのだが、結局、途中から面倒になりやめた。調べる道中で出会う難解な言葉を都度検索するのがめちゃくちゃなストレスだったのだ。

 (いきなりだが次から突飛な発想をする)

 私は最近、謎のカタカナを発する人々のことを、私の住む地球に限りなく似た別の星の人だと考えるようにしている。彼らはなにかしらの目的で私の住む星に来ており、自動翻訳機能が搭載されているのだが、その機能はたまにエラーを起こしてしまうのだ。
 あまりに馬鹿馬鹿しいファンタジックな現実逃避だが、理解できなくてイライラするときに「自動翻訳機能壊れたのかなー」と思えばそれで済むのだ。
 ストレスへの自己防衛である。

 私は生粋の日本人で、日本語が好きで、日本語以外にさほど興味がないので日本語以外を急に言われてもわからない。
 謎のカタカナを交えた小粋で難解な言い回しは、私にはなんの意味もなさず、今後も「ええと、……つまり?」はたびたび口にするだろう。

 もし万が一この記事の読者に、謎カタカナ語を話す人がいるのなら、自動翻訳機能の故障には気をつけて。「つまり?」と聞かれても、「おっとこいつは小学生だったな」と考えて。お互いに仕事がんばろう。
 ではおやすみ。