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ネクロマンサー猿かに合戦

日米合作で映画にしてほしい。

亜光速ロケットの星間航行から地球に帰還した宇宙飛行士。

着陸の失敗で、ごうごうと燃えさかるロケットの中で瀕死の宇宙飛行士は左腕を失い意識を喪っている。

「猿かに合戦」で猿に柿の実をぶつけられて潰れた蟹が、冥界で大蟹となって何千年もさ迷っている。

光速に近いロケットでは時間の進み方が緩やかになり、地球ではとっくに1000年も過ぎていた。人類は滅亡し、地球は知能をもった猿による「猿の惑星」となっていた。

冥府の大蟹は、大きなハサミで時空を歪め、手を伸ばした先が、生死の境にある宇宙飛行士の腕の根本と繋がった。

彼は魔導の力で再び蘇った。左手に大きな蟹のハサミを持っている。

宇宙飛行士の左腕は大蟹の意思で不埒な猿たちをつぎつぎと切り刻んでいった。

彼の左腕に触れられたものは死んだものでも、無生物でもたちまち命を吹き込まれる。

「猿かに合戦」では臼、栗、牛糞、などが人格をもっている。

「自由の女神像」はハサミで触れられるとまるでチェスの駒のように跳び跳ねて猿たちを踏み潰していった。

「猿コップ」のリボルバーの拳銃は、弾丸の一発一発までが生命をもち、一発の弾丸で10匹の猿をしとめた。

死んだ猿は「ゾンビ猿」となって仲間になる。

宇宙飛行士は蟹の意思に従って、ひたすら前進を続けた。

彼が目指す先は、大きな樹齢数千年の柿の木だ。

「猿の軍隊」が出動した戦車部隊や航空機部隊の集中放火で自由の女神像はこなごなに砕けちり、宇宙飛行士もほとんど原型をとどめないくらい穴だらけにされて、それでも不死身の復元力で、ささくれだったボロ雑巾のような肉塊が無傷の赤いハサミを振るい続けた。

粉々の自由の女神は等身大の「自由の女神ソルジャー」となって、「猿ゾンビ」とともに、猿の軍隊を苦しめた。

やはりこの世のものではない魔界のものだからいくら攻撃してもまったく効果がない。

猿の軍隊は巨大柿の木の実に砲弾の狙いをつけた。

柿の実がつぎつぎと落下して、大地はとどろき、砂煙が晴れると柿の実の山に潰された全長40メートルをこえる蟹🦀の怪獣の姿があった。

猿の軍隊は盛大な蟹鍋パーティー🍲を開いた。

翌朝、猿たちの体表が硬化し、全身が蟹のように真っ赤になってしまった。

猿が蟹になる病が流行し、蟹になった半猿半蟹の生物は一斉に柿の木を登り始めた。

樹齢数千年の柿の木は、人類の文明が滅びるきっかけになった核の放射能で突然変異し、月にまで届く大きさだった。

赤い「カニ猿」たちは月🌕を目指してひたすら登った。

何世代にも渡って猿たちは月まで登りつづけ、深海魚がじょじょに海面に適応していくように、宇宙空間でも宇宙服なしで生きられるスペース・モンキーが誕生した。

ついに月に到達した世代がムーン・モンキーと呼ばれた時に、重力の制限のない宇宙空間ではどこまでも成長し、水の中で物が軽くなるから海のクジラが哺乳類なのにあそこまで大きくなるように、ムーン・モンキーはシロナガスクジラほどもあった。蟹の甲羅よりもさらに硬い岩石のような表面をもち内部に骨をもたないからクラゲのような性質もある。

ムーン・モンキーは柿の木につかまることもなくどこまでもどこまでも広い宇宙空間を漂うスター・モンキーに進化して、宇宙のいたるところに拡散した。

そんな無重力猿の夢を、温泉でぬくぬると温まるニホンザルが見るか。

「温泉お猿は無重力猿の夢を見るか」


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