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「自分のギャグは日常でも通用するか」「お寿司屋さんのキングコング」(ミニショートショート付き)

「自分のギャグは日常でも通用するか」

ふだんのおれは、冗談一つ言わず、まったく笑わないことも多いけど、自分の内部でカチッと歯車が合うとわりと冗談を言う。ここ一週間くらいの話で「ちょっと何を言ってるのかわからないです」と言われたギャグを思い出してみた。こういう投稿をするということはネタ切れです。笑 自分のギャグを冷静に振り返るってなかなかしんどいですね。笑 おれって痛いやつだ。

レストランでアルバイトをしている。年末年始は特に忙しかった。ま、仕事は楽しいからやっているのであって、忙しいことはいいことです。

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①お客さんが帰った後に、テーブルの下に蕪(カブ)の葉っぱが散乱していると同僚が言い出した。魚料理にカブを使っているからだ。

おれ「小さいカブの葉っぱが落ちているように見えるけど、それは一部で、床をはくともっと葉っぱが出てきますよ。床に巨大なカブが埋まっていて、びくともせずに抜けないんです」

同僚「それ、『おおきなかぶ』じゃないですか。うんとこしょどっこいしょ」

レストランは二階にあり、一階は車やバイクの模型のお店になっている。

おれ「下の階の模型屋さんの天井から生えて床を破るほどのカブだから、カブが育ちすぎて下のお店めちゃくちゃになってると思いますよ」

同僚「ちょっと何を言ってるのかわからないです」

模型屋さんは店の窓がショーウィンドウになってるから、外から店内がよく見える。天井からまん丸の巨大なカブが生えて、壁を圧迫するほど育っていたら面白い。初夢で見ると縁起のいい茄子🍆に掛けて、カブをナスにしてもいい。

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②団体のお客さんに食後に出すコーヒーを、丸いおぼんに乗せて運ぼうとしていた同僚が、コーヒーカップをおぼんのふちに沿うように、数珠つなぎに並べていき、中華の円卓のコース料理みたいだと言い出した。

おれ「満漢全席。だけど出てくる料理は全部コーヒー!」

注いだコーヒーをおぼんにさらにのせるおれ。最後にシュガーボウルとクリーマーをのせる。

ガチャガチャ

おれ「食後のデザートはミルクと砂糖!」

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③雑巾が黒ずんだから、同僚がバケツに水を張って、雑巾をつけた。それを見たおれは、ハイター(漂白剤)を入れた。

同僚「本多くん。汚れた雑巾をバケツにつけといたから、ハイター入れてくれる?」

おれ「はい。ハイターはもう入れました」

同僚「今の本多くんの返事、なんか抑揚がなくて元気がなかったよ」

おれ「はい。ハイターの『ハイ』と返事の『はい』を掛け言葉にしたことを際立たせるために、あえて抑揚を消しました」

同僚「ちょっと何を言ってるのかわからない」

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④デザートの後に出す、食後の温かい飲み物にはコーヒー・紅茶・ハーブティーがある。

コーヒーはあらかじめ出そうな数を予想して、コーヒーメーカーに粉をセットする。たとえば、予約が10人ある時、10杯コーヒーを作っても、紅茶とハーブティーをセレクトするお客さんもいるから、人数分作ると必ずムダが出る。だから7,8人分くらい作るとムダが少ない。

ほぼ満席の日、コーヒーをたくさん作ったのに、なぜかこの日はコーヒーがまったく出ず。紅茶とハーブティーばかりお客さんが頼んだ。

おれの地元の愛知県から来た団体のお客さんが、全員ハーブティーと紅茶なのも大きかった。営業が終わり、コーヒーがものすごく余った。

おれ「いやあ、コーヒー出なかったですねえ。特に愛知県からの団体のお客さん。愛知県の人間の県民性が如実に現れた結果ですね」

同僚「そうなの?愛知の人って何を飲むの?」

おれ「さあ、わかんないです」

同僚「他の席のお客さんもコーヒーを頼まなかったね」

おれ「お正月だから、やっぱりお屠蘇気分なんじゃないですか?」

同僚「それ、関係ある!?」

おれ「ハーブティーって、コーヒーよりお屠蘇な感じが」・・・・・調べたらお屠蘇って薬草酒らしいので意外と的外れではないかも。笑

適当なことばっかり言ってる。コーヒーを飲まないのが愛知県の県民性というデタラメはそのまま。これ以上言うとギャグにならず、頭がおかしい人になってしまうから、言及しなかったが、さらに続けてみよう。

愛知県民はコーヒーを飲まない。他の席の人たちもコーヒーを飲まなかったから、彼らもまた、愛知県民だったのかもしれない。愛知県民とは、愛知県から観光に来たとか、愛知県出身の人とは限らない。愛知県民には「潜在的愛知県民」「無自覚の内なる愛知県民」とでも言うべき人たちが少なからずいるのである。これは愛知の県民性を内に秘めた他の都道府県の人間のことである。

コーヒーの話はイマイチだけど、埼玉をテーマにしたギャグマンガがあるから(読んだことない)、こういうギャグもありかなあと思った。

⑤急に思いついたから、オマケのショートショートでも。笑

「お寿司屋さんのキングコング」

(2005年版の「キング・コング」は小学生の時に映画館で観たけど、キングコングが可哀そうで泣ける映画でした。笑)

日本のどこかの回転すし。タッチパネルで寿司を注文すると、新幹線の形をしたレーンがお皿を運んでくる。その日はざわざわと店内が騒然としていた。女性客が店内に闖入したキングコングに捕まって人質にされているのだ。テーブル席をぐるりと囲むレーンの内側が厨房になっていて、板さんがお客さんの目の前でお寿司を握ってくれるが、そのど真ん中に、天井まであるエンパイアステートビルのミニチュアが立ち、女性を掴んだキングコングがビルのてっぺんに登ってウガーとほえたり、胸をドコドコ叩いて暴れている。ゴリラに捕まった女性は人形サイズに小さくなってしまった。板さんがお客さんの注文した寿司を握っては、「ヘイ・おまち」とキングコングに投げつける。キングコングを寿司で攻撃しているつもりが、どれも見事に片手でキャッチされてペロリと食べてられてしまう。注文した寿司を全部ゴリラに食べられてお客さんは不満そうだ。やがて、おれの席に、注文したお寿司を乗せた新幹線が到着した。まぐろ、やりいか、海老、いくら軍艦、ばい貝、わさびなすだ。キングコングと目があった。ゴリラはビルからさっと降りてくると、おれの寿司をかっさらっていき、むさぼり食いながらまたビルのてっぺんに戻っていった。軍艦は粉々になり、おれは残されたわさびなすをポロポロと涙を流しながら食べた。わさびが効きすぎたのである。キングコングはわさびなすを食べなかった。ひょっとしてわさびがやつの弱点なのではないか。この回転すし、全皿サビ抜きで提供している。ふざけた店だ。わさびを付けたい人はテーブル備え付きのわさびの小袋を使わないといけない。おれは板さんにそっとキングコングの弱点を耳打ちした。「はい、よろこんで!」板さんは手が炎症を起こさないようにビニール手袋をはめると、シャリの代わりにワサビを握って、米粒をほんの一粒(ワサビと米が逆転している)、極上のトロの寿司にすると、好物のトロの握りをキングコングに投げた。ゴリラは「ウマッ!」とおいしそうにトロをほおばったが、両目をかっと見開き、真っ赤になった頬と鼻孔をぱんぱんに膨らませると、ぶはっとむせて思わず女を離した。解放された美女は元の大きさに戻ると、おれの席にやって来てキスの嵐を降らせた。喉をかきむしってごほごほと咳き込むゴリラのいるエンパイアステートビルがピカッと光った。ビルはS&Bの練りワサビの巨大チューブに変身した。練りチューブのタワーからわさびが噴き出しゴリラをワサビで埋め尽くしてしまった。おれはキングコングを退治したお礼に、「お代は結構です」と会計をタダにしてもらい、全身にキスマークを付けて揚々と口笛を吹きながら店を出た。初日の出がまぶしい。次の週も寿司屋に行ってみた。メニューに「ゴリラのわさび漬け」があった。値段は「時価」と書いてある。

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