前回までは、こもりうたの英語"Lullaby"の由来Lulla(なだめる)+by(そばにいる)である説についてご紹介しました。「ラララ」と歌う音から来ているのかも?という、ほのぼのしたお話でした。
今回は、一変して悪霊が登場する、別の説をご紹介します。
悪霊リリスから子どもを守る
あくまで民間語源(ある語の由来について、言語学的な根拠がないもの)という前提ではありますが、さまざまな文献でこのような由来が支持されています。
リリスはアダム最初の妻とされ、アダムとリリスの交わりから悪霊たちが生まれたとも言われるほどの悪魔。
夜の子供の魂を盗む悪魔リリスから…身を守るために…身震いがします。
語源としては、"lull"が「リリス」で、"aby"が「去れ」になります。
さらに、「リリス」の"LYL"の部分は「夜」の女性形、「嵐の妖怪」など見解が様々あります。この説に従えば、前編で取り上げた「なだめる」等の語源とはまた異なる趣を纏いますね。
「by」の扱いも、「そばにいる」と「去れ」と、真逆のようにすら捉えられます。
魔除けの意味が込められた子守唄
この説が強く支持されているためか、多くの子守唄は、神の加護を求めたり、子供たちを見守るために天使を呼び寄せたりしていると言います。
例えば、All Through the Night という子守唄では、「我が子よ 眠りなさい そして平安があなたを守ります 一晩中守護天使があなたを遣わします」(意訳)と歌われております。
昔は赤ちゃんの死亡率が高く、かつ現代のような医学的な知見のない時代は、悪霊をはじめとした目に見えないものへの畏れは想像以上だったのでしょう。
次回、これまでに紹介した二つの語源を知って感じたことをお話します。
涼しさ感じるこもりうたです。