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デニムにトレーナー #3

競馬場の解体の仕事は、
変わらず土に埋まった
何百本の木の杭を抜く作業。
木の杭にチェーンを引っ掛け
車で引っ張り抜いた後に
それを二人で持ち上げて
車の荷台に積んでいく作業を1日中。

その木の杭は、週末にチェーンソーで切り
暖炉用の木として持ち帰ります。
暖炉は本当に暖かく
眺めていると時間が経つのを忘れてしまい
僕の一番の癒しとなっていました。

ある日、仕事を終え
いつもの様にボスの家へ
夕飯を食べにお邪魔したのですが
ボスの家の電気が点いていない。

あれ?どうしたんだろう、、
窓から中を覗こうと家に近づくと
1枚の張り紙が窓に有り、そこには、
「 今日は家族で映画に行きます」。
とメモ書きが。

ずん、、、っと心に寂しさが訪れ
星空を見上げ
そうだよな、、僕は家族じゃないもんな。
たまには家族団欒が必要だよな、、、
毎日毎日じゃ邪魔だったよな、、
なんてネガティブになった僕の心を
暖炉の炎が何も言わずに
ただただ温めてくれたこともありました。



とある週末、ボスの息子ウェインが
シドニーへ修学旅行に行く用に
新しい洋服を買いたいとの事で
僕も一緒に行くことになりました。

僕は作業着を1枚しか持っていなく
同じものを毎日着ていて
泥だらけになっても洗濯ができず
かなり汚い日本人になっていたので
新しいツナギを1枚買いに。

新しい洋服を買いに行くと言っても
郊外のショッピングモールの様な
ホームセンターの様な場所に
作業服売り場と並んでオーストラリアの
サーフブランドの服が並んでいるだけで
特におしゃれな場所ではなく
いつもウェインが着ている様なものばかり。

ですがウェインもお年頃。
悩みます。かなりの数を試着します。
どこの国の子でも修学旅行前は
洋服で悩みます。

なかなか納得がいかない様子で
一旦お昼休憩を挟むことにしました。

ウェインが、YUTA(僕の名前)が
着てた服は日本のもの?
と、質問してきました。

え?どの服?

前一緒に街までドライブした時に着ていた服、
仕事初日にも着てきてボスに作業着と交換させられたやつ。

あ、デニムにトレーナー?

そう。

あれは、デニムはリーバイスで
トレーナーはわからない。
なんで?

修学旅行の時に貸してくれる?

え? 勿論いいよ。

そっか、そうだよな。
普通のリーバイスのデニムに
トレーナーなんだけど
この街であの服は珍しく映るのかもしれない。

そう思った僕は、新しい作業着と一緒に
ウェインと同じ、短パンにビーサン
オーストラリアと文字の入った
サーフブランドのパーカーを買って
ショッピングモールを後にしました。



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