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理詰めで誰でも面白いストーリーが作れる 3 エンタメ系物語作品と面白さ至上主義

面白いストーリーを作るための、充分な量と質の理論を提供する連投テキスト。
3回目である今回は、面白さという言葉について軽く掘り下げた上で、エンタメ系物語作品の本質について述べる。


面白いストーリーと上手いストーリーは別物

タイトルや前々回のテキストでは「面白いストーリーの作り方を教える」と謳っておきながら、前回のテキストでは「面白いストーリー」という表現を用いず、「上手なストーリー」「良いストーリー」という表現を用いた。
参考までに、前回のテキストの結びの部分を引用しておこう。

どのように意図し、どのようにあらしめれば、上手いストーリー・良いストーリーになるのかについては、次回以降徐々に語られてゆくだろう。

もしかしたらこの点に関して、以下のような憤りや疑念を抱いている方もいらっしゃるかも知れない。
「俺が知りたいのは面白いストーリーの作り方なんだよ! 上手いストーリーだの良いストーリーだの言って、曖昧な話でお茶を濁して、肝心の面白いストーリーの作り方については教えずに済ますつもりなんじゃないのか! だとしたら看板に偽り有りだろ!」
そのような感情を少しでもお持ちの皆様に対して、一言申し上げておきたい。
「心配御無用!」
この連投テキストでは看板通り、面白いストーリーの作り方を提示する。
そのことはここで改めて明言し、強調しておきたいと思う。

ではなぜ前回のテキストでは、「面白いストーリー」という表現を用いなかったのか?
答えは至ってシンプルで、
「面白いストーリー」と「上手い・良いストーリー」とは、似て非なるものであるからだ。

面白くて上手いストーリーも在れば、
面白いけど下手なストーリーも在るし、
つまらくて下手なストーリーも在れば、
つまらないけど上手いストーリーも在るのだ。

この連投テキストで語られるのは主に「面白いストーリー」の作り方だが、「上手い・良いストーリー」の作り方についても、副次的に語られることになる。
「面白いストーリーの作り方」にしか興味が無いという方にはこう問いたい。
「面白いけど下手なストーリーと、面白くて上手いストーリー、どちらも自在に作れるとしたら、あなたはどちらを作りたいですか?」
おそらく多くの方が、「面白くて上手いストーリー」と答えるだろう。
「俺が作りたいのは面白いけど下手なストーリーなんだ」という方がいらっしゃったとしても、「上手い・良いストーリー」の作り方を知っておくことは、決して無益ではないだろう。
「下手なストーリー」を意図的に作るためには、「上手いストーリーの作り方」の反対を、意図的に行う必要があるからだ。

抽象的な話が続いた。
話の具体性を上げるためには、「上手いストーリー」とは何であり、「面白いストーリー」とは何であるかについて、定義を明らかにする必要がある。

上手いストーリーとは何か

前回のテキストで強調したように、物語作品の作り手は、ストーリーの全てを意図してそのようにあらしめる。

ところで、およそ現実というものは、人の意図した通りになるとは限らない

よかれと思ってしたことが、逆に相手を困らせてしまう。
何の気無しに放った言葉が、相手を怒らせてしまう。
そういったことは日常茶飯事ではないだろうか。

物語作品もそれと同じで、作り手がある意図をもって創作したその箇所が、必ずしも、実際にその意図通りの効果を発揮しているとは限らないのである。
意図した通りの効果をその箇所に盛り込めるかどうかは、作り手の腕の良し悪しによって左右される。
ストーリー全体を通して、作り手の意図した通りの効果が認められると判断できる場合、それは「上手いストーリー」「良いストーリー」であると言える。
逆に、作り手の意図した効果が認められなかったり、そもそも作り手の意図そのものがお粗末だったりする場合、それは「下手なストーリー」「悪いストーリー」であると言える。

まとめると、
この連投テキストにおける「上手いストーリー」とは、
ストーリー全体を通して、作り手の意図した通りの効果が認められ、しかもその意図に極端な粗が無いと判断できるストーリーのこと
である。

狭義の面白さと広義の面白さ

「面白い」という言葉には、狭い意味(狭義)で使われる場合と、広い意味(広義)で使われる場合とがある。

狭義の「面白い」とは、「何か面白い話してよ」と言ったり、幼稚園児が「○○くん面白いから好き~」と言ったりする場合の「面白い」である。
この狭義の「面白い」は、「可笑しい」「笑える」「ウケる」等、爆笑に近い笑いとセットになっている。

広義の「面白い」とは、狭義の「面白い」に加えて、ユーモア(諧謔)、ユニーク(独自性が強い)、インタレスティング(興味深い)等の言い換えとして使用される「面白い」である。
この広義の「面白い」は、爆笑とは違うクスっとくる笑いや、必ずしも笑いを伴わない好奇心ともセットになっている。

物語作品に当てはめると、
ギャグ漫画やコメディ作品やコント等は、狭義の面白さを追求した作品と言える。
一方、ホラー映画や刑事ドラマや歴史小説等は、広義の面白さを追求した作品と言える。

以後この連投テキストでは、単に「面白い」「面白さ」と言った場合には、広義の面白さを指すものとする。
狭義の面白さを指す場合には、必ず「狭義の」と付けることにする。

タイトルや前々回のテキストで繰り返し言及されている面白さは、広義の面白さの方である。

もしこの連投テキストに、狭義の面白さ――ギャグやコメディやコントの笑いの秘訣を期待しているのだとしたら、残念ながらその期待には応えられそうにない。
無論、狭義の面白さは広義の面白さに含まれるから、ギャグやコメディやコントの笑いについても、ある程度は扱うことになる。
とは言え「ある程度」にとどまるので、狭義の面白さに関する深い知識を貪欲に欲している方については、他を当たることをお勧めしておく。

話を戻してまとめよう。
この連投テキストにおける「面白いストーリー」とは、
好奇心をくすぐるストーリーのことである

爆笑を含むあらゆる種類の笑いも、好奇心に含まれるもの、あるいは、好奇心によってもたらされたり、強調されたりするものであると、そのようにイメージしていただきたい。

エンタメ系物語作品と非エンタメ系物語作品

全ての物語作品は、エンタメ系物語作品非エンタメ系物語作品の二種類に大別できる。

非エンタメ系物語作品については、例えば純文学小説や、前衛的な映画や、現代アートの映像作品や、コマーシャルムービー等をイメージしていただきたい。
そういった少数の、いわば例外的な物語作品以外の、大半の物語作品が、エンタメ系物語作品である。

以上の説明で大雑把なイメージは掴んでいただけたとは思うが、もし明確に定義するなら以下のようになる。
エンタメ系物語作品とは、面白さが最優先される物語作品であり、
非エンタメ系物語作品とは、面白さ以外の何らかの要素(文学性や芸術性、広告・宣伝・啓蒙・勧誘効果等)が最優先される物語作品である。

ここで言う面白さとは既述の通り広義の、すなわち好奇心をくすぐるという意味での面白さである。

また、どちらも「専ら」ではなく「最優先」とした点に、充分留意してほしい。
大抵の物語作品には、面白さとその他の要素(上記の文学性や芸術性、広告・宣伝・啓蒙・勧誘効果等)が混在している。
それらの中で最も優先されるのが面白さなのかその他の要素なのかが、エンタメ系物語作品と非エンタメ系物語作品との、本質的な差異なのである。

面白さが最優先されるという、エンタメ系物語作品の本質的特徴を、キャッチーな言葉で表すとすれば、面白さ至上主義とでもなろうか。
エンタメ系物語作品の作り手を志している方にはとくに、ぜひともこの面白さ至上主義という重要なポイントを、押さえておいていただきたい。

まとめ

この連投テキストにおける「上手いストーリー」とは、ストーリー全体を通して、作り手の意図した通りの効果が認められ、しかもその意図に極端な粗が無いと判断できるストーリーのことである。

この連投テキストにおける「面白いストーリー」とは、好奇心をくすぐるストーリーのことである。

全ての物語作品はエンタメ系物語作品と非エンタメ系物語作品とに大別でき、
エンタメ系物語作品とは、面白さが最優先される物語作品である。

今回のテキストは以上である。
最後まで読んでくださったそこのあなた、本当にありがとうございましたm(__)m

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