見出し画像

理詰めで誰でも面白いストーリーが作れる 5 目的とストーリーの多層性

面白いストーリーを作るための、充分な量と質の理論を提供する連投テキスト。
5回目である今回は、目的という概念について触れつつ、ストーリーを多層的に捉える考え方について述べる。


行動と目的

前回のテキストで述べた通り、エンタメ系物語作品の受け手は、次の展開を予想している。
ではその展開というものは、そもそも一体何であるのか?
まずはその点について述べたいと思う。

極端に単純化して言えば、ストーリーにおける展開とは、行動と反応の応酬である。
主人公が何らかの行動(及び発言。以下「行動」と言った場合は全て同様)を起こすと、
それに対する何らかの反応が起こる。
反応の主体は人であるとは限らず、人以外の生物、物質、事象である場合もある。
主人公はその反応を承けて、また何らかの行動を起こす。
その繰り返しが展開である。

以上のことから、行動が、展開を左右する重要な要素だということが、おわかりいただけると思う。

そして、ここからが最も重要なポイントなのだが、
その行動を左右するのが、目的という要素なのだ。

主人公は常に何らかの目的を持っており、主人公の起こす全ての行動は、その目的を達成するための手段なのだ。
このことを意識できるか否かで、物語作品の見方も作り方も、全く別次元のものとなるだろう。

目的の多層性とストーリーの多層性

主人公にはいくつもの目的がある。
以下、それらを箇条書きにしてみる。

①ストーリーとは独立して持っている人生の目的(超越目的)※
②ストーリー全体を通して達成しようとしている目的(究極目的)※
③局面(フェイズ。後述)を通して達成しようとしている目的(局面目的
④場面(シーン。後述)を通して達成しようとしている目的(場面目的
⑤場面内の一つの行動によって達成しようとしている目的(行動目的

※一般によく知られている「超目的」という演劇用語は、上の箇条書きで言うところの、超越目的を指す場合と究極目的を指す場合とがある。紛らわしさを避けるため、この連投テキストでは「超目的」という言葉はあえて使わず、超越目的と究極目的という言葉を使う。

名作と呼ぶに値する物語作品においては、登場人物が単なる登場人物としてではなく、生身の人間としての存在感を有している。
多くの生身の人間は、それぞれの人生において、達成したい夢や目標を持っている。
それらの夢や目標に当たるのが、①の超越目的である。
生身の人間たる主人公から見た場合、ストーリーというものはあくまで、長い人生の中における一定期間内の体験に過ぎない。
その体験がその後の人生を左右することはあり得るし、良いストーリーとはそのようにあるべきだが、それが人生の中の一部分でしかないことに変わりは無い。
主人公の人生はストーリーが始まる前から続いており、ストーリーが終わった後も続くのである(ただし主人公死亡エンドを迎えた場合等、例外はある)。
ストーリーで描かれた体験を経て、超越目的が変わるということもあり得るが、超越目的は基本的には、ストーリーからは独立して存在する、主人公の人生の目的なのである。

生身の人間たる主人公は、もともと送っていた日常の世界から、ストーリーで描かれる非日常の世界へと引きずり込まれる。
主人公が再び日常の世界へと戻って来るまで、その非日常の世界において達成しようとする最終目的が、②の究極目的である。
究極目的が達成されるか否かは、大抵クライマックスにおいて明らかになる。
この究極目的が「非日常の世界における目的」であるのに対して、
①の超越目的は、「日常の世界における目的」と言い換えても良いかも知れない。
究極目的は超越目的の影響を受け、稀に究極的目的と超越目的が一致するケースもある。

日常の世界から非日常の世界へ渡り、再び日常の世界へと戻って来るまでの一連の体験、すなわちストーリーは、いくつかの局面(フェイズ)に分けることができる。
その分け方には一定の法則があり、詳細については今後に譲るが、八つの局面に分けるのが理想的である。
つまり、ストーリー全体は、全部で八つの局面から成ると考えていただきたい。
その八つそれぞれの局面において、主人公が達成しようとする目的が、③の局面目的である。
②の究極目的は維持されたまま、各局面に応じた目的を達成すべく、主人公は奮闘するのだ。

各局面はいくつかの場面(シーン)に分けられる。
場面の数については決まりは無く、非常に極端な話をすれば、一つの局面が一つの場面で構成されていたり、一つの局面が100個の場面で構成されていたりといったこともあり得る。
局面に比べて場面は捉えどころが無いので、一応定義づけをしておこう。
場面とは、場所、時間、登場人物等の要素によって規定される、単一の状況である。
つまり、場所が変わったり(屋内から屋外へ等)時間が移ろったり(昼間から夕方へ等)、登場人物が登場したり退場したりした場合、それは状況が変わったとみなされ、場面が変わったということになる。
そのような一つ一つの場面(単一の状況)の中で、主人公が一貫して達成しようとする目的が、④の場面目的である。
②の究極目的も③の局面目的も維持されたまま、それぞれの場面に応じた目的を達成すべく、主人公は奮闘するのだ。

各場面はいくつかの行動(及びそれに対する反応)によって構成される。
場面内の行動の数についても決まりは無く、非常に極端な話をすれば、一つの場合もあれば100個以上の場合もある。
主人公は現行の場面目的を達成するため、何らかの行動を起こす。
だがその行動が功を奏して目的が達成されることは稀で、大抵の場合は主人公(及び受け手)の予想に反する反応(これを慮外反応と呼ぶ。詳しくは次回以降)が起こって、場面目的は達成されない。
主人公は引き続き同一の場面目的に基づき、次なる行動を起こす。
それがまた次なる慮外反応を起こし、といった具合に、同一の場面の中で、行動と反応の応酬が行なわれる。
その行動の一つ一つにも、場面目的とは異なる(同一の場面目的に基づく、場面目的よりも細かくて具体的な)目的が存在する。
それが、⑤の行動目的である。

なお、慮外反応の内、単に主人公(及び受け手)の予想に反するのみならず、場面目的を無効化(具体的には達成・破綻・無意味化等)してしまうものを、変転反応と呼ぶ(詳しくは次回以降)。
上記の場面の定義で述べた、場所・時間・登場人物のいずれにも変化が無くとも、変転反応によって場面目的の変更が強いられた場合、それは場面が変わったと言える。
上記の場面の定義を「一応」としたのはこのためである。
では改めて、「一応」でない厳密な場面の定義を以下に示そう。
場面とは、場所、時間、登場人物、場面目的等の要素によって規定される、単一の状況である。

多層性のイメージと今後の予定

主人公の行動を決定付けるのは行動目的だが、
行動目的は場面目的・局面目的・究極目的・超越目的の影響を受け、
場面目的は局面目的・究極目的・超越目的の影響を受け、
局面目的は究極目的・超越目的の影響を受け、
究極目的は超越目的の影響を受ける。

このような構造を多層性と呼びたい。
目的が多層性を有するのと同様、ストーリーもまた多層性を有する
人生というレイヤー(層)
ストーリーというレイヤー(層)
局面というレイヤー(層)
場面というレイヤー(層)
行動というレイヤー(層)が、重なり合っているというイメージである。

その多層性を視覚化したものが以下の画像だ。

下から順に見ていこう。
水色で示した主人公の人生は、画像内に収まりきらずに長く続いている。
その一つ上に黄色で示したストーリーのレイヤーがあるが、それは人生のある一時期の出来事に過ぎないことを表してもいる。
緑色で示した局面の層は、ストーリーを分割したものであり、
オレンジ色で示した場面の層は、各局面を分割したものである。
なお、画像には盛り込めなかったが、場面の層の上には行動の層もあるとイメージしていただくとありがたい。

ストーリーを把握する視点は大別して、
キャラレベル(主人公の人生)から捉える視点
マクロレベル(ストーリー全体や局面)で捉える視点
ミクロレベル(場面や行動)で捉える視点
の三つがある。

この連投テキストではその全てを洩れなく扱うが、量が膨大であるだけに、適切な順序で語ることが重要になってくる。
次回以降、基本的な方針としては、①②③の順序で、面白いストーリーの作り方について語ってゆく予定である。
先に示した画像で言うと、下から順に扱ってゆくイメージである。
中には「その順番じゃ嫌だ」と思う方もいらっしゃるかも知れないが、どうか気長にお待ちいただきたい。

まとめ

ストーリーにおける展開とは、行動と反応の応酬であり、
全ての行動は目的を達成するための手段である。

目的には、行動目的場面目的局面目的究極目的超越目的とがあり、
それらは多層的に結び付いている。

ストーリーを把握する視点には、キャラレベルマクロレベルミクロレベルとがあり、
次回以降のテキストでは、キャラレベル、マクロレベル、ミクロレベルの順序で語ってゆく。

今回のテキストは以上である。
最後まで読んでくださったそこのあなた、本当にありがとうございましたm(__)m

参考文献

ロバート・マッキー著、越前敏弥訳『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』(フィルムアート社)(2018年)

沼田やすひろ『超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方』(講談社)(2011年)


Xやってます。
https://x.com/ideology_theory
主に政治経済ネタをつぶやいてます。
国債発行ベーシックインカムで
万民救済!日本復活!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?