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「IAが与えてくれたもの」

山本耀二郎
東京大学院 工学系研究科 システム創成学専攻 → 米系戦略コンサルティングファーム


【戦略コンサル内定後、空白の1.5年間。何して過ごす?】
〜リスクテイクへのコンプレックス〜

 「とりあえず内定したけど、ここから1.5年間どう過ごそうか?」

 これが自分の大学院1年生の秋口からの悩みであった。自分は就職活動時に「日本経済の競争性の回復」というキャリア目標を掲げて、「インパクトの最大化のためには、サポートの立場から大企業かスタートアップを伸ばすのが必要」と考え、戦略コンサルとVCを志望していた。その中で、自分の分析的な思考との相性、キャリアパスの柔軟性に加えて、縁があって早期に内定をいただけたことから米系戦略コンサルティングファームに就職することを決めた。

 そんな中で、卒業までの1.5 年間をどう使うか? そこで頭をもたげたのが、「リスクテイクをした選択肢を取れない」という自分のコンプレックスであった。

 自分は大学選択から就職活動まで一貫して、過度なリスクをとったチャレンジをしたことがなかった。一方で、就職活動やスタートアップ村の人との交流の中で、リスクをとって自分のやりたいことを追求している人に対して焦りや劣等感を感じていた。「このままでは将来的にも、リスクをとった主体的な行動ができない人間になるのではないか?」と少なからず危機感を抱いていた。

 リスクテイクをするためには、

 ①より多くの情報を手に入れて、自信を持って客観的な判断をする
 ②リスクテイクをして、チャレンジしている人達に触れて、ハードルを低くする

 ことが重要であると考え、有望な選択肢であるVCでのインターンなどに従事していた。

 そんな中で、尊敬する先輩より「金融のリスクマネジメントを用いた意思決定方法を学べる場がある」と聞き応募した。

【予想以上のハードスキルと常に刺激される知的好奇心】
〜就活したから見えたもの〜

 上記の思いを胸に、IAで実際に体験したのは予想以上の投資における実務的な知識であった。株式投資におけるポートフォリオ理論や財務モデルの構築、債券、株式、オルタナティブなどの関係性など、工学部の理系畑で育ってきた私には全てが新鮮であった。自分以外にも、直近での米国金利政策の背景と日本株への影響など、説明できない人も数多くいると思う。IAの講義のおかげで理解し、自分なりの見立てを持つことができるようになり、日々のニュースまでもが知的好奇心を刺激してくれるようになった。

 また思いがけないメリットとして、就活を経て(表面的に)身につけたビジネスへの分析力や知識も大いに役に立った。IAでは金融業界の第一線を経験している方との議論を中心に講義が進行する。既に持っている知識を前提に、疑問を投げ込むと、経験に裏打ちされた深い答えが返ってくる。

 こんなにも知的好奇心を満たし続けられる魅力的な環境は初めてだった。知識が加速度的に新たな知的興奮を生み出せる。現役のHFのヘッドに、投資哲学について直接質問ができる幸せな学生が日本にどれだけいるだろうか?

【誤解していたリスクテイクと自分自身の正当化】

 またもう一つ大きな学びを得られたのは、リスクテイクに対する考え方であった。世間的には起業や転職について、「今ある立場を捨てて、一攫千金の宝くじに挑む」かのようなイメージが少なからずあると思う。自分も地方の非進学校という古典的な環境におり、どこか自分には取れない選択肢であると思っていた。

 一方でご自身で事業会社やファンドを起業されている方とお話をすると、

 「これまでの環境よりも一歩だけ挑戦する」×「ダウンサイドのリスクも加味して、事前に行動しておく」

 の二つを徹底されていた。

 特に印象的であったのが、

 「リスクを取りすぎている人はいつか失敗する。コツコツ上手くいっている人が本物」
 「成長はローリスク、停滞はハイリスク」

 というある講師の方の言葉である。自分のこれまでの歩みを正当化し、前を向いて歩き続ける勇気をくれた。

 無理に大きな意思決定をするのではなく、適切な準備をしながら堅実に一歩づつ進んで行くことが重要であると、自信を持つことができた。

【IAが与えてくれたもの】

 空白の1.5 年間のうちの立った4ヶ月は、応募当時の期待値を遥かに超えて、圧倒的な知的興奮と自信を与えて過ぎ去っていった。この経験を経て金融業に対する解像度が上がり、新たなキャリアプランとしてファンド設立への興味も芽生えた。

 しかしこの目標を現状と乖離したハイリスクな選択肢とは思わない。着実な準備と成長に裏打ちされた、適切なリスクテイクにより実現できると信じている。

 IAは金融のリスクマネジメントの知識と、主体的な意思決定へのきっかけをくれる。4ヶ月間、本当にありがとうございました!


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