起業家こそリスクマネジメントの学びを
西原 靖貴
東京大学 経済学部金融学科 4年
IAに入る前
自分は元々、大学2年時に株式会社カンデという会社を起業し、主に金融系の事業会社のサポートを日々の仕事としながら、テスト期間にレポートや勉強をこなす生活をしていました。
そんな中で知り合った大学の先輩から、このIAの事を教えてもらいました。
以前より、自分のそれまでの人生経験から、展開する事業が誰かの役に立ち、大きな利益をあげ、従業員にも高い給料が支払われるような会社を作りたいと日々思っていたのですが、それを実行するにあたりこのIAは何かの役に立ちそうだなと感じたので、試しに応募してみる事にしました。
そして、代表理事の森山さんとお話しした結果、無事に通わせてもらえる事になり、4ヶ月の間週に2回のペースで夜に3時間ほど、このIAの活動に参加しました。
IAの内容と感想
毎回の内容は主に3つのカテゴリに分類でき、それぞれ同時並行で進めました。
1つ目はポートフォリオゲームと言って、5人ほどのチームに別れ、それぞれIAの理事たちからもらった400万円を元に、4ヶ月の間国内上場株に投資して利益を狙うものです。
2つ目は、投資家や実業家として活躍されている方と、実際にお話しさせて頂くというものです。
3つ目は、起業アイデアを考えて、投資家へのプレゼン資料にまで仕上げてみるというものです。
これらの活動は全て、同じ期の学生(20人くらい)と共同で行いました。
また、1と3に関しては、毎回課題が出されました。
以下、それぞれについての感想です。
まず、1を実践してみて感じた事ですが、それを言語化すれば、
「不確実な事象について、その系の性質を俯瞰的に見て正しく理解し、様々なシナリオを正確に構造化し、実用に耐えられる精度で定量的に判断材料を記述して揃えていく能力・数字を見て人間のリアルな行動を正確に感じ取る能力・変化に柔軟に対応しつつも、根源的な規律は一貫して守って行動していく能力が、自分にはまだまだ足りていない」というものになります。
まず、このポートフォリオゲームで、自分のチームは大変な損失を出してしまいました。
そして、それは煎じ詰めれば、上記のような力の欠如が原因だっだと思います。
ところで、よく考えてみれば、この上場株投資は、何かしらの軸において中長期で大きな成果を出す事を目指すという意味で、他の様々な人間の活動と本質的な構造は同じです。
ただ、数ある軸の中でも、手持ちのお金を増やすというのは、数字で簡単に表されるので、誰にとっても分かりやすいです。同時に、これまで金を増やすためにたくさんの賢い人が考えてきたため、方法論が最も発達していると思います。
このような事を考えると、投資の方法論は、何らかの軸で成果を残したい人にとっては、一番分かりやすく、中身の濃い教材になるのではないかと思いました。逆に言えば、これが身についていないと、どのような軸で自分の人生を歩んでいくにしろ、長い目で見た時には大きな成果は出せない気がしてきました。
以上のような事を踏まえた結果、今の自分の会社の数字が一期目としてもめちゃくちゃ悪いという訳ではなかったのですが、このまま上記の能力を高めず続けていけば、「一生停滞」シナリオや「どこかで再起不能になって強制退場」シナリオを歩む事になってしまいそうだと考えるようになりました。
また、2の活動で様々なケーススタディに触れてみて一番強く印象に残ったのは、以前から思っていた事ではありますが、「やはり自分以外の人の役に立つ事を生業にしたい」という事です。
トークセッションにお越しくださった方々には、いわゆる社会的地位や金銭的成功を手にした方も多かったです。
ただ、最も印象的だったのは、自分の信念に基づいて何かしらの形で人の役に立つ仕事に全力投球してきた人は、心の底から自信に満ち溢れていた姿になっている事でした。
そして、そういった姿の人が、仲間に慕われている様子も見ました。
こういう人生はこの世で最も格好良いものの1つだと感じ、自分もそうなりたいと以前よりも本音で強く感じるようにもなりました。
3の活動は、上記の2つ活動のハイブリッド版という位置付けなのだと思いました。
これは、自分がオーナーという立場でリスクと責任を負って何かを始めて、それによって自分の飯代を稼ぎながら何かを成していく暮らしをした事がない人にとっては、ある程度良い練習試合にはなるのではないかと感じました。
自分は既に上記のような生活を、まだまだスケールは小さいものの実際にしていたので、この活動単体から新たな学びがあった訳ではありませんでしたが、前から感じていた事実を強く再認識しました。
具体的には、
「要するにお前は、何ができるの?それは誰のどういう望みを叶えるもので、他に取り替えが効かないものなのか?」という質問に一言でバシッと答えられるように武器を磨く必要がある事と、
自分とバックグランドが違う人と組むとチームとしてできる事の幅や可能性が広がるという事です。
(※自分の次の代からは、実際に企業から案件を取ってきてお金をもらい、新規事業を提案するという形になっているようで、より実践的になっているようです。)
最後に付け加えると、
同期とは、1日の活動が終わった後に飲みに行く事に加えて、期の途中でバーベキューをする事もありました。
このような関わりを通して、高校卒業後の生活では作られる事の少ない密度の濃い人間関係が築かれたのではないかと感じました。
これも、3つの活動と同じくらい、意味のあるものだったと思います。
IAが終わった後に起きた変化
大きく2つ変化があったと思います。
1つ目は、仲間やお客さんの人生を無駄にしないためにも、この4か月のケーススタディで自分に足りていないと実感した部分を、いくつかの要素に分解して、それぞれを学び直す事にも時間を使うようになった事です。
目の前の事象をもっと時間的にも空間的にも広い視野で見ると、別の事象とどのような相互作用があり、どのようにノイズが含まれているのか?
未来に起こるストーリーとして、どのようなものが考えられ、それぞれどれくらいの確率で起きそうに感じるか?そもそも、自分に見える世界には、どういうバイアスがかかりがちなのか?
幾らかでも良いので、何か信用できる数字やファクトに基づいて判断できないか?それがないなら、自分で行動して、それらを作れないか?
この定量的なデータは、他の数字との比較などにより、人間がどのように行動しているのかが読み取れるか?そもそも、信用できるサンプリングはされているのか?
規律を守って判断を下し続けられるか?
大雑把に言えば、上記のような観点でレベルを上げられるように、各分野でより高度な本を読み、先駆者に考え方を聞き、今の仕事や学校の勉強で実践してみるようになりました。
その結果、仕事の直近の数字にはまだ僅かにしか表れていませんが、安定感や将来のアップサイドはかなり増している感触があります。
もう1つ変化を挙げるとすると、自分なりの考えに基づいて多数派のコンセンサスとは違う選択を勇気をもって実行に移す事が当然とされるコミュニティが、自分の周りに形成されたです。
学生は、みんなそれぞれバックグラウンドや目指す方向性がバラバラですが、何か多くの人とは違ったチャレンジをしようとしており、また周りのリスクテイクを否定しない人が多いような気がします。
そのようなカルチャーの元、同じ期はもちろん、期を跨いでの交流も定期的にあります。
更に、トークセッションに来られた方々は、思い切って不確実な状況へ飛び込んで成功を掴んだか、現在進行形でチャレンジされていますが、この人たちに学生が講義以外の場で何か相談する事や、はたまた師弟関係になる事なども起こっています。
そういった集団が身近に形成される事で、他人や世間一般が言っている事ではなく、自分自身の頭で未来のシナリオを色々考えて、それに合わせて行動を起こしていく事のハードルが、以前より更に下がり、ひいては習慣化にまで繋がっています。
最後に
漠然とでも良いので、何かを成したいという熱量がある学生の方は、応募する価値はあるでしょう。
もし、参加する事になれば、活動期間中は少々時間を割く必要があります。
ただ、その結果、受験勉強の模試やスポーツの練習試合のように、自分の人生に必要だが足りていない部分を実践を通して把握するという事が、学生の間にできると思います。
また、登壇者の方々の話を聞いて、そもそも自分はどういう人生にしていきたいと心の底では思っているのか、よりはっきりと分かるようになるかもしれません。
そして、そういった事ができるようになった後、多くの人とは異なるが自分は正しいと思う行動を実際に取ろうとした際に、自分のその選択を後押しして自然に行動に移させてくれるような人たちに囲まれるようになります。
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