【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第二部 第三十二話「伍代の話」
第三十二話「伍代の話」
「ん~ただね、彼女には陽と陰の占いがあって、
中には彼女の事を魔女だの悪魔だの言った人もいたらしいの。
で、彼女の命を狙う人物も増えて、
私がまだ子供の頃だから、昭和の東京五輪の前ね。
何度か殺されかかってるんだけど、
彼女に危害を加えようとした人物は、
その家系全てが没落の一途を辿っていくので、
それこそ末代まで祟ると言われて、
それからは崇めるように、
お言葉だけ貰いに来るようになったとか。
菅原道真公でもあるまいし、
生きているのに怨霊だって騒いでいたそうだから、
みっともない話よね。
おばあさまの当時を知る人はもうみんな亡くなってるし、
両親が生きてたら詳しく知れたんでしょうけど。
ごめんなさいね」
「いえ。では、その後は命を狙われることはなかったんですか? 」
「そうね。私が知る限りでは………あっでも、
今の総理の大臣時代から、
何度か家を荒らされたことがあって、
それで年も年だからもう占いを辞めることにしたのよ。
でもね、そのあとすぐに、
TVでしか見たことのない政財界の人達が次から次にきて、
土下座してたわね」
伍代があきれ顔で笑った。
「うちにも米倉さんの所にも来て、
なんとかしてくれって、
下げたくもない頭を下げてたわ。
断ったけど」
「それで何か被害はなかったんですか? 」
「大丈夫よ。何かしたら祟られるのが分かってるから。
でも、おばあさまも亡くなったし、
瑠璃さんの存在を知って、
何か聞きだしたいことでもあるのかしら。
瑠璃さんに会わなかったのも、
それを危惧されていたのかもしれないですね。
危険ですし、
監視カメラを設置しましょうか。
警察に言ったところで、
相手が相手だから何もしてもらえないし。
気休め程度かもしれないけど、
抑止力にはなると思うから」
伍代が考え込む表情をした。
「いえ、それは大丈夫です。
一応家中に防犯ブザーを設置したので。
今は何かあっても家から人は出てこないでしょう。
でも、あの音がずっと鳴り響いてたらうるさくて、
誰かは通報してくれると思うんですよ」
瑠璃が笑って珈琲を飲む姿に、
「やはり瑠璃さんはエリスさんのお孫さんね」
伍代が驚く顔で言った。
その後家に誰かが入り込むことは無くなった。
一応監視カメラも付けた。
家捜しは一度されてるわけだから、
あと狙われるとしたら私だろう。
だが、今や魔法使いにレベルアップしている。
杖も自由自在に操れるようになったし、
最近では杖がなくても、
簡単な魔法が使えるようになった。
人質を取られても妖精がいるし、
相手が魔法使いではない限り、
私の方が有利だ。
この所コピー空間で攻撃魔法も練習しているので、
戦闘能力もかなり上がっている。
「瑠璃の力は宝石王国にいても、
敵う魔女はいないんじゃないか? 」
アレクが言った。
手にはアメリカンドッグを持っている。
コンビニのサイドメニューを知ってから食べたがるので、
会社帰りに買う事が多くなった。
フォスは可愛いからいいとして、
ふわふわ飛んで動く妖精は金食い虫だ。
六歳くらいの見た目になっているのは、
美味しいものを食べたいから。
魔法能力を最小限に抑えて動くには、
このくらいの大きさが楽なのだそう。
お陰で色々手伝ってもらえて助かるが、
食費の方が増えている。