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【引用】5:二次的著作物の引用

著作権法違反の【二次的著作物】と「引用」についての自学と執筆です。

‘ 著作者の許諾を得ていない二次創作物 ’ をインターネット上で公表する行為は、著作権法の「公衆送信権の侵害」にあたります。これはSNSの投稿も該当します。我々は権利侵害対策を努めながら創作発信を行います。

~ はじめに ~

私は法律の専門家ではありません。
当記事は、執筆初級者である私の「権利侵害対策の自由研究」の一環です。そして「引用についての学習記録」と「執筆練習」も兼ねています。

私が執筆で行う引用や参考の出典は、基本的にウェブページです。

私の記事をご覧いただくにあたり【免責事項・リンク・著作権について】の内容をご了承くださいますよう、お願い申しあげます。
(記事末にもリンクバナーあり)

引用の記事は6つに分けて投稿します。
この記事は下記のうちの【引用】5 です。

【引用】1:概要/著作権法(第32条)
【引用】2:画像の引用(3パターン)
【引用】3:出所の明示/リンクカード
【引用】4:改変の禁止/加工の必要性
【引用】5:二次的著作物の引用

【引用】6:伊盾の自学と独り言


以下の本文は約3,300文字です。
(著作権法13条にあたる出典の文字数を除く)
読了の推測時間は7分程度です。



 

1. 「二次的著作物」とは

別記事【引用】3-1. にも記載。

二次的著作物
著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
(注記:太字は引用者による)

出典:e-Govポータル.
「著作権法(昭和45年法律第48号)」.
1章1節2条(定義)11号.
https://www.e-gov.go.jp

ここでは「投稿サイト」への執筆に関わる可能性が高いと思われる、上記引用のうちの太字4つについての記載とする。

◉「翻訳」とは
ある言語で表現された文章を 別の言語表現に換える こと。(例:英語を日本語にする、専門用語や特殊な言葉を一般的な言語表現にする、子ども対象の言語表現にするなど)

◉「変形」とは
既存の著作物の表現形式を 別の表現形式に換える こと。(例:写真をイラストにする、平面の著作物を立体の著作物にするなど)

◉「脚色」とは
既存の著作物を別の著作物の「脚本」に書き改めること。「脚本」とは、台詞・動作・舞台設定などを書き表すこと。(例:小説や漫画の映画化、アニメ化、舞台化、その他の放送化の台本やシナリオなど)

◉ その他「翻案」_[1] とは
既存の著作物にある  創作的な表現 を直感できる別の著作物を創作する こと。既存の著作物に基づく創作的な表現の同一性を保ち、修正・増減・変更などを加え、新しい思想や感情の創作的な表現すること。(例:漫画やアニメに基つく同人誌作品、パロディ作品など)

[1]:裁判所ウェブサイト>裁判例情報>裁判例検索-検索条件指定画面-最高裁判所判例集(平成13年6月28日/平成11(受)922/ 最高裁判所第一小法廷/判決/破棄自判/著作権/民事訴訟/第55巻4号837頁/原審-東京高等裁判所-平成11年3月30日-平成8(ネ)4844/損害賠償等請求事件). 裁判結果詳細 . 全文-pdf

上記 [1] の判例によって、“ 創作的な表現 “ ではない事実の表現やアイデア・テーマなどの設定の共通性においては、翻案にあたらないことになる。

◉「二次的著作物」と「二次創作物」の違い
二次的著作物」とは著作権で定められた法律用語。基となる著作物(原著作物)に “ 新たな創作性 “(独創性・オリジナリティをくわえた著作物。著作権の保護対象(著作権を有する)。

二次創作物」とは法律用語にはない一般用語。基となる作品(原著作物)に 上記の要素がない創作物も含まれる。これには模写(真似て描く)、複写(なぞり描く・機器での複製)、複製(コピー・そのまま同じものを新たに作る)が該当し、複製には立体も含まれる。これらは著作権の保護対象外(著作権は有しない)。

原則的に、上記はすべて原著作者の許諾を得る必要がある 。この点は共通しているため、以下「二次創作物」と記載する。

🐺:私と私のバディ(作画担当)は「二次創作」および「二次創作物の引用」を行うか否かについて考えた。

我々は、“ 著作権がある他者の著作物からの二次創作は行わない 。他者の二次創作物の 引用も行わない

我々は、我々の著作物に基づく二次創作を行われたくない 思いが強くある。そのため、当該二次創作物の利用 において 個人への許諾はしない 

インターネットユーザーの中には著作権法の知識がない人、理解ができていない人がいると察する。そのため、我々は 意思表明として明記 した。

我々は、我々の著作物からの二次創作と公表は行う。著作権が消滅した著作物(パブリックドメイン)からの二次創作と公表も行う。すでに当記事のヘッダー画像はパブリックドメインからの二次創作物である。

当記事シリーズは、法律の内容にくわえて私の未熟な執筆であり、楽しい記事ではないだろう。閲覧者さまの目に、ヘッダー画像が映った一瞬だけでも楽しんでいただけたなら、私も幸いである。

 

2. 「二次創作」に関わる原則

基となる著作物を以下「原著作物」と記載し、その著作者を「原著作者」と記載する。ここでも「投稿サイト」への執筆で関わる可能性が高いと思われる点についての記載とする。

< 著作物の利用の原則 >

著作物の利用の許諾)第六十三条
著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる
2 前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる
(注記:太字は引用者による)

出典:e-Govポータル.
「著作権法(昭和45年法律第48号)」.
2章7節63条(著作物の利用の許諾)
.
https://www.e-gov.go.jp

翻訳権、翻案権等)第二十七条
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(注記:太字は引用者による)

e-Govポータル . 
「著作権法(昭和45年法律第48号)」.
2章1節27条(翻訳権、翻案権等)
.
https://www.e-gov.go.jp

上記によって、原則的に 著作物の利用 は著作者(著作権者)から許諾を得た者が行える。また、二次創作 を行う権利は著作者が専有するため、どちらも著作者の許諾を得ずに利用した場合は、著作権法違反 となる。


<二次的著作物の利用に関する原著作者の権利>_[2]

二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)第二十八条
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
(注記:太字は引用者による)

e-Govポータル . 
「著作権法(昭和45年法律第48号)」.2章3節3款28条
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
.
https://www.e-gov.go.jp


◉上記の「同一の種類の権利」とは
二次創作物の著作者の権利は、原著作物に創作性をくわえた “ 新しい思想・感情の創作的な表現部分のみ “ にある_前項1. [1]-判例。二次創作物において原著作物と共通する部分 が “ 原著作者の新しい思想・感情の創作的な表現部分 “ である場合は、当該部分の 権利は原著作者の専有 となる。

上記 [2] によって、原著作者は二次創作物の無断利用をされない権利 と「私的使用」_次項3. の範囲を超える利用をされない権利を有する。したがって、他者の二次創作物の利用 を行う場合は、原則的に 原著作者と二次創作物の著作者、両者の許諾が必要 となる。


基本的に「引用」は複製行為が含まれるが、著作者への許諾を得ずに行える(適法)。二次著作物の引用も、原則的には原著作者と二次著作物の著作者の許諾を得ずに行える。

しかし、' 原著作者の許諾を得ていない二次創作物 ' の公表は違法行為 にあたり、当該二次創作物を 引用した場合も同様 となる。原著作者から削除要請などをされる可能性があり、応じない場合は裁判となる可能性もある。


🐺:以下 ' 原著作者の許諾を得ていない二次創作物 ' を ' 無許諾の二次創作物 ' と記載する。

原則的に、' 無許諾の二次創作物 ' を インターネット上で公表 した場合は「公衆送信権の侵害」にあたる。「私的使用」_次項3. の規定範囲外へ、紙やCD・DVDなどの記録媒体で配布 した場合は「複製権の侵害」にあたる。

これらの行為は ' 無許諾の二次創作物 ' である以上、営利目的があるか否かに関わらず ' 権利侵害行為 ' となる。原著作者からの訴えで裁判となった場合、無料・無償であれは適法!との審理にはならない。

私的使用」_次項3. の “ これに準ずる限られた範囲内 “ の理解ができていないならば、“ 個人や家庭の範囲内 “ での使用とすべきである。この範囲も理解できない場合は行なうべきではないだろう。

 

3. 「私的使用」の範囲とは

著作者の許諾を得ずに著作物を利用できる場合 “ には「引用」の他に「私的使用のための複製」_[3] も含まれる。「翻訳・変形・翻案」も可能とされている_[4] 。原著作者の許諾を得ずに “ 二次創作を目的とした原著作物の使用も可能 “ ではあるが、許される私的使用の範囲は狭い

[3]:e-Govポータル . 「著作権法(昭和45年法律第48号)」.2章3節5款30条(私的使用のための複製).https://www.e-gov.go.jp
[4]:e-Govポータル . 「著作権法(昭和45年法律第48号)」.2章3節5款47条の6(翻訳、翻案等による利用).https://www.e-gov.go.jp

上記 [3]・[4] の条文を下記 [5]・[6] のウェブサイトが解説してくれている。

[5]:文化庁.「令和5年度著作権テキスト」-全体版.著作権テキスト-令和5年度-pdf-pp.60-92(13.著作者の権利の制限(許諾を得ずに利用できる場合). 
[6]:公益社団法人著作権情報センター>著作権Q&A.「著作権が制限されるのはどんな場合?」.著作権が制限される場合(著作物が自由に使える場合).翻訳、翻案等による利用(第47条の6). https://www.cric.or.jp/index.html

理解すべきは上記 [3] の条文が “ 私的 利用 “ とはされてない 点である。まず、著作権法においての「使用」と「利用」の違いについて記載する。

◉「使用」とは
原則的に “ 有体物 “ のみの利用の場合に用いられる。主に CD・DVDなどの記録媒体見る・読む・聞くなどの行為。ウェブ上のコンテンツをダウンロード ( 複製 ) をせずに視聴できる場合の実行 ( 行為 ) も該当する。

◉「利用」とは
用いるものに “ 無体物 “ も含む。権利を利用する場合に用いられる(原則的に 著作者の許諾を得る必要がある行為 )。複製 ( コピー ) 、公衆送信 ( アップロード ) などの行為も該当する。

[5]:文化庁.「著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について」>(参考資料)>著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について(解説)-pdf-pp.34-35( ②「使用」を「利用」に変更した理由 )

上記 [5] の趣旨は、ICT活用教育の推進にともない学校や教育機関などでの「使用」を「利用」へと改正し、著作者の許諾を得ずに著作物の利用ができる範囲を増やすことである_上記 [4]-pp.9-10。

上記の改正は行われたが「私的使用のための複製」_上記 [2] は「利用」へと変更されない。根本的に、著作権とは著作者の財産的な権利の保護である。「公衆送信行為も含む利用とはせず使用のまま である理由は理解すべきである。
「私的使用のための複製」_上記[3] についての詳細は今後の機会に執筆。

🐺:' 無許諾の二次創作物 ' だと知らずに引用 してしまった場合はどうする?

気づいた時点で引用をやめる。削除要請などの通知が届いた場合は迅速に当該引用を削除する。知らなかったことを明示するとともに、自分の知識不足を反省し謝罪する。

即刻削除を行えば情状酌量の余地もなく罰せられることはないようだが、その 対応・対処 の ‘ 浪費 は発生 するだろう・・・。

二次創作を行う行為自体は著作権法違反にはあたらない。原則的に原著作者の許諾を得ずに行える。二次的著作物であれば著作権も得られる。

しかし、その ' 無許諾の二次創作物 ' の使用は著作権法で制限 されている。そして、例外規定にある「私的使用の範囲はかなり狭い 。この規定に則していない行為は「使用」ではなく「利用」となり、無許諾である場合は違法行為にあたるのだ。

このことから、インターネット上に公表されている二次創作物に、リンクを張る行為も安易に行うべきではないといえよう。

他者の二次著作物と察する場合も含めを引用したい場合 は次の2択 かな? 私は ② である。

① 当該二次著作物の原著作者への確認を行い、原著作者が許諾している二次書作物であれば引用を行う。許諾していない二次著作物であれば引用は行わない。

② 確認も引用も行わない。リンクも張らない。

「私的使用」の「家庭の範囲内」とは4~5人ともいわれるが、明確な基準はない。裁判では人数以外に状況や様態なども含めて審理されるため、法律は包括的に理解しなければならないだろう。

 

~ おわりに ~

このたびも文字数過多となり、割愛した点が多いです。今後の機会に執筆いたします。著作者の権利の尊重を保ちつつ、時代への適応と文化の発展を推進する日本であってほしいと願っています。

読者さまの “ 貴重なお時間 “ をいただきました。
私の記事を最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございました。

当記事の執筆にあたり、著作権に関する知識の恩恵を受けましたウェブサイトへの敬意と感謝の気持ちをもって、以下に参考ウェブサイトの明示をいたします。記載は順不同にて失礼いたします。


【 参考ウェブサイト 】:19件 / (参照2024-05-26)


文化庁.政策について>文化審議会・懇談会等>文化審議会-著作権分科会>過去の議事録・配布資料-著作権分科会 法制問題小委員会>平成23年第4回(2011年9月21日)>(平成23年第4回)議事録-5 配布資料一覧-資料3-2 著作権法第30条に係る論点の整理-pdf. https://www.bunka.go.jp/index.html

マンガでわかる著作物の利用 作太郎の奮闘記(文化庁の著作権教材).著作権解説集>キーワード解説>な行 . https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/h22_manga/index.html

公益社団法人著作権情報センター.著作権データベース>著作権審議会・文化審議会著作権分科会等の報告書-著作権審議会>作品審査委員会第5小委員会(録音とビデオの関係)報告書-II 著作権法制と国際的検討の動向-1-第三に~.文化庁.昭和56年6月.https://www.cric.or.jp/index.html

公益社団法人著作権情報センター.「著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループ中間まとめ」.2 技術の進展に伴う著作物等の保護・活用の変化-(注)用語の意味.文化庁.平成10年2月.https://www.cric.or.jp/index.html

みんなのための著作権教室.学ぼう著作権>「③著作物を自由に使える場合とは?」. http://kids.cric.or.jp/index.html

白濱秀二.「-著作権の制限-私的使用のための複製」-pdf .日本弁理士会「月刊パテント/別冊パテント」-目録検索システム(月刊/特集≪著作権実務ガイドライン≫/2006年1月).https://jpaa-patent.info/patent

ベリーベスト 法律事務所 弁護士編集部.「二次的著作物を創作したら原著作者の権利はどこまで及ぶのか」.LEGAL MALL BIZ.2023-05-23.https://business.best-legal.jp

ベリーベスト法律事務所 船橋オフィス.「二次創作やパロディは法律違反? 著作権法違反となる行為を弁護士が解説」.ベリーベスト法律事務所 船橋オフィス.2021-06-11.https://funabashi.vbest.jp

ベリーベスト法律事務所 松山オフィス.「二次創作は法律違反になる? 行為の解釈と著作権法違反のポイントを解説」.ベリーベスト法律事務所 松山オフィス.2020-12-10.https://matsuyama.vbest.jp

弁護士法人モノリス法律事務所.「二次的著作物と利用権の範囲は?実際の判例を解説」弁護士:河瀬李-監修.MONOLITH LAW MAGAZINE.2023-01-19.https://monolith.law

弁護士:坂田晃祐 .「翻案の限界を考えていたら著作権法の深淵にはまりこんでしまった―BL同人誌事件評釈続論」.STORIA法律事務所-ブログ.2021-08-04.https://storialaw.jp

弁理士:伊藤大地.「著作権侵害にならない「私的使用」の限界はどこか」.イノベーションズアイ.2024-01-19.https://www.innovations-i.com

弁護士・弁理士:大熊裕司.「「表現上の本質的な特徴を直接感得する」ことの意味」.虎ノ門法律特許事務所 著作権法相談室.2022-12-14.https://chosakukenhou.jp

行政書士: 遠藤正樹.「意外に狭い?著作物の無許諾利用ができる私的使用の範囲」.著作権のネタ帳.2020-08-18.https://copyright-topics.jp

行政書士: 遠藤正樹.「実は問題あり?著作権侵害の親告罪に対する誤解」.著作権のネタ帳.2022-10-21.https://copyright-topics.jp

ビーンズ行政書士事務所.「著作物の「使用」と「利用」を使い分ける」.契約のミカタ.2020-06-09.https://keiyaku-mikata.info

弁理士:坂根剛.「私的複製について」.企業の総合病院®CACグループ>コラム>弁理士の実務解説.20-08-17.https://www.cacgr.co.jp

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