見出し画像

3 別離後の子育ての取決めを作成する上で子どもや若者に対して重要な課題

離別家庭の子どもと若者:家族法制度の経験とニーズ
最終レポート 2018年
レイチェル・カーソン、エドワード・ダンスタン、
ジェシー・ダンスタン、ディニカ・ルーパニ
オーストラリア家族研究所

 この研究に参加した子どもや若者は、別離後の子育ての取決めの発展と調整における継続的な発言権は勿論のこと、支持と理解のある親子関係と複数の社会的支援や精神的支援(例えば、友人、家族、メンタルヘルスサービス)の必要性を表明しています。その他、子どもや若者は、両親間の尊敬に満ちたコミュニケーション、安全で安心できる環境、そして長期的には、変化に対する柔軟性と開放性の必要性などを重要な課題として挙げています。
この章の議論は、別離後の子育てに関する取り決めを行う際に、子どもや若者が最も重要な問題として認識していることを探ることに重点を置いています。これらの問題は、意思決定のプロセスに参加するために自分たちの声に耳を傾け、自分たちを支援することを含め、自分たちのニーズや最善の利益を考慮した決定をするための鍵であると認識されていました。この章では、別離家庭で育つ子どもや若者の生活体験がどのような特徴を持っているかについても、幾つかの洞察を示しています。また、横断的なデータで可能な限り、様々な種類の子育ての取決めの経験、父親、母親、兄弟姉妹、義理の家族との関係、子育ての取決めの変化の根底にある力学、それらの子育ての取決めが子ども中心なのか大人中心なのかについても考察しています。

3.1 別離のプロセスを通じて子どもや若者の声に耳を傾け、支援する

 この研究に参加した子どもや若者は、機会があれば、親や他の大人が別離の過程とその後を通じて、自分たちの主張に耳を傾けてくれることを強く望んでいることを示しました。データによると、傾聴とは、時間をかけて彼らの意見を聴き理解すること、別離の過程で何が起こっていたかを彼らに伝えること、意思決定プロセスに貢献し、彼らの経験や感情を処理するための時間と空間を彼らに与えることを意味していました。
 研究に参加した子どもや若者の4分の3以上が、親が自分たちの意見に耳を傾け、別離に関して、また子育てに関する取決めの過程でコミュニケーションをとることを望んでいる旨を表明しました。傾聴の重要性は、研究に参加した子どもや若者から寄せられた幅広い回答からも明らかでした。

傾聴するのよ!子どもが言いたいことに耳を傾けるの・・・敬意を払い、なぜそのような決断をしたのかを理解しようと努めること・・・そして、ただサポートすること。(ルーシー、女性、12~14歳)

そうかもしれませんね、ええ、・・・子どもたちが何を望んでいるのかをもっと考慮してください。なぜって、あなた方(親)が望んでいることが常に最善だとは限らないから。うん、その状況全体にとってはね。(オスカー、男性、15歳以上)

ああ、そうだな・・・子どもの言うことをよく聞いて、よく理解することが大事だね。(マイケル、男性、15歳以上)

うーん、そのことについて子どもたちに話しかけるの、嫌がらずにね。それから、最終的に子どもたちが実際にどう考えているかを聴いた時に、怒ったり、不機嫌になったらダメ。(ヘイリー、女性、12~14歳)

 この知見は、オーストラリア²³と海外²⁴の家族法に関する多くの研究と一致しており、子どもや若者が、自分たちに影響を与える意思決定において、自分たちの意見を聞き、考慮される機会を持つことの重要性を立証しています。特に、研究では、別離後の養育の決定に関連する事項と、両親の別離に伴うより一般的な影響に関する事項の両方について、こうした意見を聞く機会を促進することの重要性が強調されています(例えば、バーンバウムとサイニ、2013、2015;フェルベルクら、2018;フェルナンド&ロス、2018;フォーティン、ハント&スキャンラン、2012;マッケイ、2013;マーシャル、2017;ク&ウェストン、2015;クイグリー&シル、2017;サドウスキーとマッキントッシュ、2016)。例えば、この研究の子どもや若者の観察と一致していますが、バーンバウムとサイニ(2015)が35人の若者の別離後の経験を分析したところ、共通のテーマとして、若者が別離後の養育計画の作成に関与を求めることが確認されました。
 この研究に参加した子どもや若者に、それぞれの親と過ごす時間についてどの程度発言権があったか尋ねたところ、殆どの参加者が、「自分の意見は全く影響を与えなかった」(n=17)、または「意思決定の過程で限られた発言しか許されなかった」(n=17)と回答しました。注目すべきことに、9人の研究参加者が、「かなり」の発言権があると報告し、更に13人の参加者が、作成された子育ての取り決めについて「幾らかの」の発言権があることを示しました25。別離の過程で両方の親が自分の意見に耳を傾けてくれたと答えた21%(n=13)のうち、1人を除いて全員が両方の親に対し「かなり親密」、または「とても親密」という感情を抱いていました。このような子どもは、親とコミュニケーションができることに強い自信を示していました。

(面接者:それで、あなたは・・・そのとき、お父さんとお母さんはあなたの話をどれくらい聴いてくれたと感じていますか?)かなり聴いてくれました。僕が何か言ったら、両親は無視したりしません。そのことについて話し合ってくれます。(セバスチャン、男性、10~11歳)

うーん、とてもいいよ。(面接者:そうなんだ。そうしたら、両親があなたの話を聴いてることを示す何かあります?)僕が尋ねたことをやってくれたし、コメントにもとてもオープンでした。(ジェレミー、男性、12~14歳)

うん。何か言えば通じる、みたいな。もちろん、うまくいかないことも時々ありますよ。もちろん、時には手を加えねばならない場合もあります。でも、それは・・・未だ自分の言ったことにしてるんです。(ポール、男性、10~11歳)

(面接者:なるほど、では、当時、あなたの意見を聴いてくれている、受け止めてくれているということを、ご両親はどんなふうに示していましたか?)両親は僕と一緒にテーブルに座って、まあ、僕たちの古い家でのことですが、両親は僕と一緒に座って、ここに残りたいか、それとも父と一緒にシティー2に行きたいかと尋ねました。(なるほど、分かりました。それであなたは、・・・その状況で、どちらか一方を言うことに抵抗は感じませんでしたか、望んでいることを言えばいいというような、そんな感じでしたか?)両親は、何を選んでも気にしないよと僕に言いました。(なるほど。それで、どちらを言っても大丈夫だと思ったんですね。) はい。(リーバイ、男性、12~14歳)

 子どもや若者の視点や経験を受け入れた子育ての取決めをすることは、親密な親子関係と関連するだけでなく、より良い意思決定にも関連していました(例えば、カスピウら、2014; パーキンソン&キャッシュモア、2008)。
 しかし、上述のように、若い研究参加者の半数以上が、別離の過程を通じて、親の一方または両方が自分の話を聴いてくれなかったと報告しました。例えば、次のようなことです。

ええと、僕の・・・お母さんは、たくさん聴いてくれました。お父さんはほんの少しだけ。・・・そうですね、お父さんの脳内処理は、一方の耳から入ったことがもう一方の耳から抜けるような感じで、恐らくまるっきり別なものに変えてしまい、そう、僕が「父さんのところには行きたくない」みたいに言ったのに、「父さんのところにすごく行きたい」みたいに変わってるんです。・・・そうやって、僕が言っていることと反対のことが、お父さんの脳に入ってしまったんです。(ハリー、男性、12~14歳)

お母さんは全身を耳にして聴くけど、お父さんは自分に都合の良いところだけが聴こえる。(ニコラス、男性、15歳以上)

う~ん、僕の母はよく聞いてくれたよ。う~ん、父は僕の言葉を歪めているような気がします。(面接者:そうですね。では、もう少し話を広げてもらえますか?)う~ん、そうですね。どうでしょう。僕が何か話すと、父はいつもある部分を文脈から取り出して、反対のことを言うような気がしました。(ライダー、男性、12~14歳)

 また、先行研究とも一致しますが、子どもや若者のデータから、傾聴とは、彼らの意見を聞き、理解し、尊重すること、別離の過程で何が起こっていたかを伝え、その過程を通じてオープンなコミュニケーションが継続することを意味するだけでなく、子どもや若者がこのコミュニケーションの間に自分の経験や感情を処理するための時間を与えることでもあることが示唆されました。

そうね、親は、これから何が起こるのかという決定事項をいきなり話題にする前に、子どもがこのことは何を意味しているのかを理解し、実感できるようにするために、両親に何が起こったかを把握する時間を子どもに与えるべきですね。(リリー、女性、12~14歳)

そう。子どもたちを参加させるの。わざわざ隠そうとしたり、オブラートに包んだり、柔らかい言い回しをしたところで、子どもたちはいずれわかるようになるんだから。子どもたちはバカじゃないから、何が起こっているのかわかっているし、そのことを隠そうとしても、子どもたちとの関係を悪化させるだけよ。(フィービー、女性、15歳以上)

子どもたちの話を聴いて、子どもたちが言っていることを否定せずに、えっと、子どもたちと繋がろうとすること。(フィービー、女性、15歳以上)

 このような重要な見解は、若者が別離後の子育ての取り決めや、より一般的な別離プロセスについての話し合いで「蚊帳の外に置かれている」(オスカー、男性、15歳以上)感覚を表明したように、この調査を通して木霊していました。殆どの若い参加者は、両親や別離プロセスに関与する他の人々とのより高いレベルのコミュニケーションを望んでいることを示唆しました。研究に参加した子どもと若者の半数以上(55%)は、両親のどちらかまたは両方が自分たちの言うことを聞いていないと報告しました(参加者の3分の1が、「言うことができなかった」「答えたくなかった」と回答しました)。両親の一方または両方が自分の意見を聞いてくれなかったと表明した子どもの中には、混乱、不安、孤立の感情と相俟って、次のように述べていました。

うーん、ただ本当に子どもたちとそのことをたくさん話し合ってほしい。そうそう、何も決めずにいるのはダメ。それじゃ、子どもたちに全て確認をとるようなものです。なぜって、物事を決めずにいたら、子どもたちは最悪の可能性を考えてしまうからね。(ウィリアム、男性、12~14歳)

二人(両親)は、何が起こっているのか知っていて、混乱してるんです、子どもはどんな風に感じるかしら?、みたいに。投げやりになって、何もわからなくなってるみたいな。実際に何かを知っているよりも更に混乱しています。(スカーレット、女性、15歳以上)

 特に、両親が潜在的に一方の親に対して憎しみや怒り、不満の強い感情を抱いていることに関しては、必ずしも「起こっていることを全て知りたいとは思わない」(スカーレット、女性、15歳以上;ローズ、女性、15歳以上)と答えた若者が大半を占めました。面接対象者のスカーレット(女性、15歳以上)はこの感情を更に詳しく説明しましたが、何も知らないことで、子どもや若者はそのギャップを埋めることを余儀なくされ、その過程に関与できず、過程が分からないことに憤りを感じたと述べました。

父は私にこう言ったんです。「あぁ、こんなことに加わるのには、お前はまだ若すぎるよ。お前はまだ16、17歳なんだから。うん、若すぎるんだ。分ったかい。いいかい」みたいに。で、「もっと大きくなってから心配すればいい」って・・・。ええ、そう、それが私が持っていた唯一の情報の一部だったんです。(面接者:なるほど。その関与のレベルについて、あなたはどう感じましたか?)嫌でした。私はその時点でかなり自立してましたから・・・。えぇ、既に自分なりのものの見方がありましたから、もっと意見を聞いて欲しかったんです。(スカーレット、女性、15歳以上)

 子育ての取決めに関して自分の意見を述べたり、親と率直に話し合ったりできるようになったと回答した子どもや若者の年齢は様々でした。自分には発言権がなかったと感じた子どもや若者のなかには、自分たちは意見を言うには若すぎると思われていたとの意見もありました。

う~ん、実は裁判所が僕の意見表明について、両親にそう言っています。いや~、意見を言うにはまだ若すぎるって本当に言われたんです。(ノア、男性、15歳以上)

う~ん、僕は、10歳か11歳だったから。(面接者:そう感じていたんですね)。僕が小さかったからという気がする。(そうですか)だって、本当に・・・僕が小さかったというわけではないだけど、自分が何について話しているのかよくわからないというか。そういう感じがしたんだ。(ハリー、男性、12~14歳)

 しかし、子どもや若者に自分の意見を表明する準備ができたと感じたのはいつかと尋ねたとき、このような反省と、自分自身の別離後の子育ての取決めがなされたときに話を聞いてもらったと感じたときとの間には、食い違いがありました。例えば、

(面接者:何歳くらいから・・・ご両親はあなたの話を聞いてくれるようになりましたか?)たぶん僕が14歳の時かな。うん、14歳くらいでだと思うよ。(その年齢より前に、自分が何をしたいのか分かっていたように思いますか?)うん、最初から、均等にしたかったからね、きっちりとママとの時間が半分、パパとの時間が半分で。(オスカー、男性、15歳以上)

えっと、間違ってるかもしれないけど、14歳くらいからかな(ママとパパが聞き役になるのは)。その年齢より若い子も、聞いたり、聴かれたりするべきだと思う。(ステファニー、女性、15歳以上)

 実際、多くの若い参加者は、子育ての取決めについて自分の意見を表明する準備が整ったと感じた時期について、かなり明確な考えを持っていた。

えっと、うん、8歳か9歳くらいになると、全てのことがよりはっきりわかり始めるようになるのよ。(アラナ、女性、12~14歳)

(面接者:何歳のときですか?)あ、10歳になる前ですね。ええそうです。(ノア、男性、15歳以上)

(面接者:一方の親、あるいは、もう一方の親と過ごす時間をもっと増やしたいと思うようになっている、その自分の願望を本当に分かったように感じたのは、何歳頃だと思いますか?)11歳頃じゃなかったかな。(マックス、男性、12~14歳)

 また、特定の年齢より寧ろ、時間や支援によって、子育ての取決めに対する考えを持つようになった子どもや若者もいました。

(面接者:では、「これはもうわかった、もうこれは必要ない」というような経験に基づいた考えを抱くようになったと感じたのは何歳の時ですか?)時々、そんな感覚、そうです、今、私は経験に基づいた見方をしているなって感じで、そして、暫くして、私は更に経験に基づいた見方をしている、ってなるんです。(ハミッシュ、男性、15歳以上)

 実際、多くの子どもや若者にとって、自分の意見や自分の意見を親に伝えるために必要な自信を育むためのサポートが必要であることが表明されています。研究に参加した子どもや若者の3分の2近く(62%)が、メンタルヘルスサービス(多くは民間のカウンセリングや心理学者)を利用したと回答し、その多くが、このプロセスで別離に取組むための対処法を身につけていました。例えば、

そして、彼女は僕に、これに集中しなさい、これをしてはいけない、・・・というような方法を教えてくれました。そう、戦略、そう、そうやって、別離に対処するのを助けてくれたんだ。(ダニエル、男性、12~14歳)

 面接を受けた別の子どもは、親や他の人たちに対してより自由に自己表現できるようにするために、カウンセラーや心理学者が不可欠であると述べています。

そうですね、私は一度・・・母が私をここに、ここの本当に素敵な女性のところに行かせてくれて、その女性が、私が自分の意見を言うのを手伝ってくれたことがあって、それが役立ちました。(エマ、女性、12~14歳)

ええ、それは・・・本当に助かったと思います。だって、たとえ全ての問題を解決できていなかったとしても、少なくともその問題を外に出すことができたんですから・・・そうすれば、みんなが何を感じているのかがわかるわけで、私たちはそれをきちんとできていなかったんですから。私たちは直ぐに、父と感情について適切な会話をすることができました。(フィービー、女性、15歳以上)

彼ら(カウンセラーは)は、僕が何か恥ずかしくて母や父に伝えられないようなことがあれば、伝えるのを助けてくれます。何か新しいことが起きたとき、彼らに相談すれば、その問題について新鮮な考えを与えてくれるんです。離婚の問題も相談しました。(ポール、男性、10~11歳)

 自分を表現できるようになり、親が自分の意見に耳を傾け、尊重してくれていることがわかると、よりウェルビーイングを感じ、生活状況に満足するようになったという子どもや若者もいた。カウンセラーや心理士が子どもや若者の支援に果たした重要な役割については、第4章と第5章で後述します。

3.2 別離前、別離中、別離後の体験と、それが子育ての取決めに与える影響

 研究に参加した子どもや若者は、両親の別離の理由、自分たちが両親の別離を知った方法、その時期に両親が自分たちとコミュニケーションをとった方法が、意思決定プロセスに対する自分たちの反応や、このような子育ての取決めに対する自分たちの見解に影響を与える重要な要因であると認識していました。
 この研究に参加した子どもや若者の中には、両親の別離がある程度予想されたことだったという者もいました。

ああ、だから、基本的に、僕たちは皆、そうなることが分かっていたんだ、だって、両親はずっと言い合いをしていて、別れるんだもの、本当にひどい言い合いをしていて、僕と兄弟は、そうなることが分かっていたよ。(ライアン、男性、12~14歳)

両親は、もっと頻繁に、言い争っていたの・・・要するに、両親は喧嘩を続けて、そして、2人とも狂ってしまい、お父さんは出て行き、お母さんは思いっきりお父さんを追い払ってしまったのよ。(クレア、女性、12~14歳)

母と父はいつも言い争ってたから、うん、そうなったんだよ。(チャーリー、男性、12~14歳)

 このような経験は様々ですが、どこで誰と暮らしたいかは勿論のこと、別離の過程における、ひいては別離後における子どもや若者の想いに影響を与えるようでした。両親が比較的穏便に分かれた(例えば、親同士の「愛情が冷めた」場合)ことを報告した子どもや若者には、その状況や両親の別離に対する感情を処理する時間が必要であると提言されました。

私は何も経験していなかったから。一部の子どもたちは、自分が何を望んでいるのかが直ぐ正確にわかるんですが、私は、父が去ってから直ぐに両親が別離したので、何が起こっているのか、自分が何を望んでいるのかを区別し、両親の別離について本当に考える時間がなかったんです。だから、私はそんな状況に置かれ、ああ、これは嫌だなあと思いました・・・ただ、両親の間で何かを決めたりする前に、よくわかりませんが、休憩が必要だと思います・・・そうすると、子どもは両親の別離について考える前に、あるいは、まだ分からない場合は、大きな決定や要求がなされる前に、何かを思いつき、それを試してみることができますよね。(リリー、女性、12~14歳)

 研究参加者は、目の前の問題から考えをそらすためは勿論、「心の闇を吐き出す」ため、感情的な状態を処理するため、対処戦略を開発するため、親以外の人と話し合うことができねばならないと述べました。このような支援は、学校の教師、友人、大家族、そして特にカウンセラーや心理士といったメンタルヘルスの専門家といった形で得られると一般的に認識されています。これについては、第4章と第5章で詳しく説明します。
 両親が険悪な状況で別離している場合、または別離がファミリーバイオレンス(即ち、激しいレベルの身体的、精神的、言語的、その他の虐待)で特徴付けられる場合、子どもや若者は頻繁に、身体的、感情的、その他の必要性を一方の親に大きく依存します。精神的、言語的、身体的、性的虐待が報告されている状況では、面接した子どもや若者は、もう一方の親(即ち、子どもや若者が一緒に暮らしていない親)に対して肯定的な見方をしている可能性が低いことを私たちの研究データは示していました。一方の親と過ごす時間がない(または非常に制限されている)と答えた若者(n=25)のうち、半数強(n=13)が、もう一方の親が在居していたときに虐待を受けたり、著しく危険を感じたりした経験があると回答しました。もう一方の親と過ごす時間が制限されていることを含む子育ての取決めに、その状況がどのように影響したかを説明した者もいました。例えば、

えぇと、ある事件で父がほぼ皆に少し攻撃的になったんです。それで、父はこっちにやって来ました。えぇと、うん、私たちが父に会わなくなった理由は、大体そんなところですね。(イライザ、女性、15歳以上)

父が[場所名]に戻って私にしたことのせいです。父は私を虐待しました・・・殴るようにして・・・。そして、父は性的な方法で私を虐待しました・・・それで、父とは何もしたくないんです。(タリア、女性、12~14歳)

だって、私たちは、しばらく離れようとしていたことを、また始めてしまうのが怖いんですもの。そして、ただ、-それが主な理由なんです。それに、前回-私と弟に、面と向かって、もう私たちとは関わりたくないって言った前回依頼、母からは何も聞いてないんです。(ケイトリン、女性、15歳以上)

 しかし、このような経験がいつも、子どもや若者が一定期間、(単独監護または共同監護の)もう一方の親の世話を受ける障壁になるとは限りません(事例研究1が示すとおり)。

事例研究1:ダニエル
ファミリーバイオレンスにおける子どもや若者の声に耳を傾けること
 ダニエル(男性12~14歳)は、父親から受けた身体的、言語的虐待について説明しました。虐待は、幼少期の早い時期から続いていました。その結果、高いレベルの不安と疲労を抱え続け、心的外傷後ストレス障害と診断されたことをダニエルは簡単に述べました。ダニエルの両親は彼の幼少期に共同養育の取決めをして別離しましたが、ダニエルの子育ての取決めに関して複数の法的手続きが行われ、直近では母親がダニエルと父親の間の養育時間をなくすよう求めていました。ダニエルはその経緯を次のように語っています。
 「ええと、僕は[生活の取決めについて]選択肢がなかったと思うんだ・・・。僕にはあまり発言権がなかったんです。ママの家は好きだけど、もう一方の親の家は嫌だったんです。(面接者:なるほど、なぜあまり発言権がなかった思うのですか?)うーん、正直わからないんです。僕が思うに、奇妙に聞こえるかもしれないけど、家庭裁判所は腐ってると思うんだ。(そうなの?)公平を期すために言うと、僕は・・・だって、裁判所に行って、裁判官がその夜、パパと一緒に帰れって言ったんだもの」
 そしてダニエルは、この命令が下された直後に起こった出来事について詳しく説明しました。
 「えぇと、6年生のときに放課後キャンプに行ったんだ。それでね、パパが迎えに来てくれるのを忘れていたから、ママに話したんだ。で、僕はママに「迎えに来てくれなかった」と言ったんです。そしたらパパはすごく怒って、うん、そのせいで・・・その夜、パパは僕の首を1分間も絞めて、僕はもう耐えられなかったから、二度と行かなくなったんです」
 この後、ダニエルと母親は警察に行きましたが、警察は彼の訴えを聞いて、「もう行く必要はない」と言いました。ダニエルは、裁判での経験を振り返り、自分は幼いながらも、自分の子育てに関する取決めについて発言する能力を明確に持っていると感じたと述べました。
 ダニエルは、母親の弁護士は「できることは全て」やったが、父親との接触を止めるよう裁判所に主張することができなかったと示唆しました。ダニエルは、その弁護士にこう述べました。
 「私のためにドメスティックバイオレンスを止めてください、そして、もう一方の親がしたことに正義の鉄槌を下してください、と裁判官に申立て、懇願すべきだったのです」

 ダニエルのように暴力や虐待を経験した若者は、自分たちの経験の正当性と厳しさを強調し、このような状況下で別離後の子育ての取決めについて決定する際には、若者の意見と経験に耳を傾けることの重要性を断固として主張しました(例えば、タリア、女性、12~14歳)。これまでのオーストラリア(例えば、ベル 2016, 2017;ヘンリー&ハミルトン 2012;カスピウら 2014;カスピウら 2017;パーキンソン&キャッシュモア 2008)および国際的(マクドナルド 2017;ニール 2002;ティスドール 2016)先行研究と一致して、この研究に参加した子どもや若者は自分たちの暴力や虐待の経験が、別離後の子育ての取決めに適切に反映されなかった場合の苦痛を感じたと報告していました。

ああ、そうだ、父のことでたくさんの証拠があったんだ・・・私たちは二度とそこに行かなくても良いようにハッキリとさせるべきだったのに、そこに行ってしまい、そこに行き続けなければならなくなったんだ。(イライザ、女性、12~14歳)

 親や司法、法律サービスや法律以外のサービス提供者は、ファミリーバイオレンス、かつ/または虐待を特徴とする状況に置かれていることから生じるかもしれない被害に子どもや若者をさらすことなく、彼らの主体性や参加権を保護し支援するという課題に直面しています。このような懸念の中で重要なのは、子どもや若者が参加することによって、例えば、親同士の葛藤に晒され続けた結果(例えば、スマートら 2001)、多重面接効果²⁶によって、あるいは親が法的手続きの悪用に子どもを巻き込むことを可能にすることによって、再トラウマを受けないようにすることです(ベル 2016a;ヘンリー&ハミルトン 2012;カスピウら 2017;マクドナルド 2017;ファミリーバイオレンスへの王立委員会 2016;ティスドール 2016)。
 親同士の葛藤に子どもが関与することへの懸念は認めるものの、こうした懸念は、このような子どもが親同士の葛藤、あるいは暴力や虐待行為に現在晒されている、あるいは以前から晒されている状況に照らして検討されなければなりません。そのため、子どもたちが将来の子育ての取決めに関する意思決定プロセスに参加する機会を与えることが、極めて重要になります。子どもや若者の声を聴くことは、このような状況において特に重要であると認識されてきました。それは、この参加がUNCRCに基づく義務を果たす上で中心的なものであるだけでなく、証拠としての観点から重要であり、ファミリーバイオレンスや葛藤を特徴とする事件において関連する子どもや若者の表明した意見と一致するからです(例えば、ベル 2015;2016a;2016b;パーキンソン&キャッシュモア 2008;フェルナンド 2013a;2013b;2014a;2014b;フェルナンド&ロス 2018;カスピウら 2013;2014;クゥ&ウェストン 2015;シーハン&カーソン 2006参照)。
 国際的な観点からの関連する洞察には、ファミリーバイオレンスにより特徴付けられる問題に関してイギリス家庭裁判所向けに作成されたカフカス²⁷のレポートにあるマクドナルド(2017)の最近の分析が含まれます。この調査は、「大人の門番」と子育て時間の促進を支持する推定の結果として、ファミリーバイオレンスによる被害を表明する子どもの声が故意に過小評価されていることを説明していました。このことは、ひいては、子育ての取り決めに関する報告書の勧告に影響を与えるものとして認識されました(マクドナルド 2017参照。より一般的にはサイニ、バーンバウム、バラ、マクラーティ 2016を参照)。このような性質の懸念に対処する手段として、ティスドール(2016)は、子どもの操作や苦痛に関する懸念によって子どもの意見が損なわれることに対抗するために、子どもを包括するアプローチをより広く採用するよう求めました。その際、ティスドールは、ファミリーバイオレンスを特徴とする状況において子どもが経験する「薄っぺらな」主体性が、「子どもの意見を展開し、耳を傾け、理解するための支援によって厚みを増す」ことができることを特定する手段として、「厚みのある」主体性と「薄っぺらな」主体性の区別を利用しています(p.374)。
 子どもや若者が安全かつ効果的に参加できる適切な手段を特定することは、障害のある子どもや多様な文化的背景や言語能力を持つ子どもの文脈でも、これらの子どもや若者の声が故意に過小評価されないようにする観点から特定されています(例えば、ドビンソン&グレイ 2017;家族法評議会 2012;ハリス 2012;カスピウら 2013;テイラーら 2015参照)。
 第4章での議論は、家族法制度サービスにおける子どもや若者の経験に焦点を当てているため、裁判所やFDRといったサービス経路を通じて子どもや若者を意思決定に関与させるメカニズムについては、同章でより具体的に検討します。

3.3 別離中のコミュニケーション

 これまで述べてきたように、若い参加者は概して、親とのコミュニケーションをより深めたいと強く望んでいました。コミュニケーションは、新しい生活環境を受け入れ、親との新しい関係を構築し(下記3.4参照)、別離のプロセスや子育ての取決めの作成が何を含むのかをよりよく理解するために重要でした。しかし、本研究に参加した何人かの子どもや若者は、両親のコミュニケーションに苦痛を感じる面があると述べました。面接を受けたある子どもは、自分や兄弟姉妹が両親の葛藤の渦中に巻き込まれ、「お互いに使われる道具になってしまった」(ハミッシュ、男性、15歳以上)と述べ、別の子どもは「どちらかの味方をする」ように圧力を感じたと報告しました(パーキンソン&キャッシュモア 2008も参照)。

時々、両親が、私を一方的に味方につけているように感じることがあります・・・ちょっと気まずいです。(エマ、女性、12~14歳)

イライラします。パパとママのどちらかが私に腹を立てているからなんです。理由は一方の親のもう一方の親への話し方にあるんです。例えば、パパはママに腹を立てて、「あぁ、不公平だ。僕は子どもと十分な時間を過ごしていないのに」っていうメッセージをたくさんママに送るんです。でも実際には、パパはその件を私と話し合ったり、私に会う時間を作ったりはしてません。そんなことがあるから、私はママとパパから全てのことを聞き出してるんですよ。パパとママは溜め込んだ全ての怒りを私に話す代わりに・・・そして、「わかった、こことこことここでパパ(ママ)と会うよ」って感じで、私に決めさせるんです。でも、「来週はどこか空いてる?」って言ってくれるかもしれない。なのに、パパとママの両方からそう言われるのは、すごくイライラするんです。(フィービー、女性、15歳以上)

わかりません。特に、最初の頃は、ママは明らかにパパを憎んでいたし、えぇ、パパはこんなで、あんなでって感じの話をしたけど、そのことでママを非難するつもりはありません。そして、ええ、パパもまた、ママはこんなで、あんなでって感じの話をしました。パパとママに、それは間違っている、必要なことを理解するまで、家で大人として行動する必要がある、と言ってくれる人がいたならと思います。(ローズ、女性、15歳以上)

 このような苦境にある子どもや若者には、大きな苦痛と戸惑いがありました。それぞれの親がもう一方の親に対して発した言葉に、多くの者が対処していたからです。実際、多くの若者がこの経験によって、まるで自分が問題であるかのように感じたと強調し、他の子どもたちにアドバイスする際、研究参加者は、親の行動の結果、他の人がこのように感じることがないように注意を促しました。

なぜなら、それは子どものせいではないからです。たとえ親が、ある時点で子どもを責めたとしても・・・それは違います・・・子どものせいではないんです。なぜなら、それで親子関係は終わらないからです。(クレア、女性、12~14歳)

両親が別れたのは自分のせいだと思うことがあっても、そんなことはありません。本当にあなたのせいなんかではありません。(ゾーイ、女性、12~14歳)

子どものせいではありません。そこが一番の問題のような気がします。(アメリア、女性、15歳以上)

 多くの子どもや若者は、支援によって、両親の問題をお互いに受け入れることができ、両親の別離は自分たちの手に負えないことですと気付きました。面接を受けたサバンナ(女性、15歳以上)は、このような認識に至った経験を詳しく述べました。

そして今、私は常にそうしているので、親がどう思うかを常に気にしていました。私は両親を喜ばせたいと思っていました・・・彼女[心理学者]は、私が自分自身の心を持つのを助けてくれました。それで、そう、自分に関係ない問題を心配しないようになったんです。それは両親の問題であって、問題に対処する必要があるのは両親なんです。私は大人ではなく、子どもです。私はより良い視点を得ることができ、声を出すことにもっと自信を持つことができました。(サバンナ、女性、15歳以上)

 幾つかの例では、子どもや若者は、別離が両親にもたらしたストレスを十分に認識していました。

父が多くの問題やストレスを抱えていることは知っているはずだからです・・・あるいは、そう、また父は僕と同じように・・・父がテーブルの上に置いていた、心理学者が書いた父の報告書を読んだだけなんだけど、そこには父が色んなことでPTSDになっていると書いてあったよ。(ハミッシュ、男性、15歳以上)

ええと、お母さんは何度もそこに行ってました。僕たちは他の人の家にも行かねばなりませんでした。迷惑でした。裁判所に行かねばならないときは、お母さんは本当にストレスを感じているようでした。(リアム、男性、12~14歳)

 また、このストレスが、親が自分たち前で見せる行動に影響を与えていることを認識している子どもや若者もいました。

ああ。そうだね、両親は必ずしも悪い人間ではないよ・・・とても辛かったんじゃないかな、お父さんは僕たちのために最善を尽くそうとし、酒もタバコもやめて、僕たちの世話をしてくれたから、うん・・・そう、だってお母さんも悪くない、かなりいい人だよ、お父さんもいい人だ・・・うん。お母さんはただプレッシャーに負けてしまったんだと思う、お父さんも同じことになっていたと思うよ。(ボー、男性、12~14歳)

あぁ、前にも言ったけど、うん、両親はどちらも[裁判所に]行くみたいのが本当に好きじゃなかったんだ。だから、事後はちょっと苦しんでたよ。うん、母は、その後2日間ほど、あまり友好的ではなかったように思います。特に僕に対してというのではなく、そう、誰に対しても、本当に。そうだね、サンドイッチか何かに誰かが唾を吐きかけてるのを見つけたような、そんな感じです。何か些細なことで、最大の反応を引き起こすような・・・。そんなわけで、話す内容に気をつけなければと思いました。(ノア、男性、15歳以上)

 二人の若者が、両親が別離中にメンタルヘルスのサービスを利用していたら役に立っただろうと表明しました。

また、え~と、親が誰かに相談するのもいいと思う。親が自分のストレスに対処できるように。(ルーシー、女性、12~14歳)

子どもがどちらの親の側にいるかに拘らず、親は、この場合は父になりますが、子どもの声を聞いて実際に話し合うことで多くの時間の節約、時間の節約による物事の救済ができたはずです。ですから、最も重要なことは、子どもの声に耳を傾け、試し、理解し、カウンセラーのようなものや両親のヘルプラインのようなもの(私の母も使用していたと思う)を使用することです。(マイケル、男性、15歳以上)

 家族のコミュニケーションについての肯定的な振返りでは、両親が友好的に振る舞い、お互いを中傷せず、親が子どもとオープンで協力的な関係を構築している事例が強調されました。

一方の親を悪く言わないこと。そうね、もしあなたが一方の親なら、自分は母親だと言うのは止めて下さい、「あぁ、パパはこうなのよ」みたいなことは言わない、そんな風なことを言い続けないことです。それは、それは、子どもを傷つけるだけだからです。子どもが経験する感情的な混乱は、最終的にそれほど価値がありません。(アラナ、女性、12~14歳)

母は友人である以前に親だけど、母は友人でもあり、それは良いことだと思う。(クレア、女性、12~14歳)

そして、父はとてもリラックスした態度とかで接してくれます。だから、一般的なことを父に気軽に話すことができるんです。そうね、他の友人はみんな、父親とそういう話をするのは気が引けるって言うんだけど、私はすごく気楽に話せます。(ケイトリン、女性、15歳以上)

3.4 別離後の関係構築

 別離後の子育ての取決めについての子どもや若者の経験に関するオーストラリアや海外の先行研究では、別居後の状況において、量や「時間」に焦点を当てるのではなく、質の高い養育時間を促進することの重要性が指摘されています(更に、フェルベルクら 2018;バトラー、スキャンラン、ロビンソン、ダグラス、マーチ 2003;スミス 2005;トリンダー 2009を参照)。子どもと親との関係の親密さを振り返ると、研究に参加した子どもや若者の多くにとって、親と質の高い時間を過ごすことが不可欠であることが浮かび上がりました。

何故かというと、うん、僕は父と会うこと、父とおしゃべりすることが兎に角楽しいし、それが一番落ち着くんだ。(オスカー、男性、15歳以上)

ええと、私は母と一緒にいると本当に落ち着くんです・・・そして、私たちは本当に良い関係を築いているんです、ええ。(ルーシー、女性、12~14歳)

えぇ、何故なら母は、私が何か話すことがあると、私に話しかけてくれるからです。学校のことを尋ねるんです、何が起こっているのか知っているかのように。(イヴィー、女性、12~14歳)

母は、僕と多くの時間を過ごしています。いやその、良い意味でね。(ヘイデン、男性、15歳以上)

 表2.10に示したデータ(表2.10に付随するテキストも参照)から、本研究の対象となった子どもや若者のかなり大多数は、母親を「とても親密」「かなり親密」に感じている(それぞれ80%、15%)ことがわかります。一方、父親への親密さに関する報告は、母親に関する報告よりもややばらつきがあるものの、大多数の子どもや若者が父親を「とても親密」「かなり親密」に感じていると報告しました(それぞれ22%、35%)。表2.11、表2.12に付随するテキストによると、一緒の時間を過ごすことの障害となるものには、親子関係の質、子どもや若者のスケジュールや約束事、また一緒に過ごす時間を促進するために柔軟に対応しようとする親の意志に関連する問題が含まれています。親と十分な時間がとれていないと感じたと報告した子どもや若者の面接には、欲求不満や失望感が見受けられました。

[十分な時間]には程遠いですね。(面接者:わかりました。それでは、なぜ十分とは程遠いと感じたのか理由を教えてくれますか?僕と母との関係と僕と父との関係の成り立ちに関わってくるんだけど、母は私にとって父親のようなものです。ママは父親的なこととか、思春期のこととか、そういうことを全部やってくれる。パパは全く何にもしないだ。(わかったけど、パパがあなたと一緒に過ごす時間に関してはちゃんとしてるんじゃないの?)いいえ。何故って、質の高い時間じゃないからです。僕たちが一緒に過ごすときはいつも、父がやりたいようにやって、必ずしも好きなことではないことをやっている感じです。(ニコラス、男性、15歳以上)

まあ、お父さんと1対1は、個人的には恐らく十分ではありません。何故かというと、お父さんは他のことに気を取られていて、十分な時間を過ごしていないように感じるからです。だいたい僕はいつもお父さんの傍にいますが、1対1のような[時間]では恐らく物足りないと思います。(サバンナ、男性、15歳以上)

(面接者:えぇ、わかりました。そうですか、ではその質問ですが、お父さんがあなたと過ごす時間について、全く足りないと感じますか、どうですか?)えぇ、かなり足りません。(そうですか、わかりました。では何故そう思うんですか?)お父さんは仕事が忙しくて・・・婚約者の面倒もみなきゃいけないし、犬の散歩とか、普通の父親としての仕事もしなきゃいけない。だから、私と一緒にいる時間は本当にあまりないんです。(それについてどう感じていますか?)ええと、最高ではないですね。お父さんと一緒にもっと多くの時間を過ごせたらいいのにと思います。(アリス、女性、10~11歳)

 多くの子どもや若者は、親と過ごす自分たちの時間がステップファミリーのメンバーによって希釈されていることを認識していました(以下を参照)。一方、親と短い時間しか一緒にいられないことが、状況によっては有益であることを述べている参加者もいました。

父とほぼ一日中一緒にいて、僕たちは一日中何かしなければならないので、最高ではないですね。もっと細かく分けるとかすればいいんでしょうけど、たぶんこのくらいで丁度良いんだろうな・・・と思う。(ロビー、男性、15歳以上)

私は本当に丁度良いと思います。だって、しばらくすると、父と一緒にいることに感情的に疲れてしまうことがあるんですもの。(アメリア、女性、15歳以上)

 また、親が自分たちに関係を強要しているように感じたり、養育時間に対する親の行動が、関係の期待について複雑なメッセージを自分たちに送っていると憤慨している者もいました。

わからない。圧力をかけ続けることが、それを示していたのかもしれない。(面接者:では、お父さんはあなたにどんな圧力をかけていましたか、差し支えなければ、私の質問に回答しください?)もっと時間が欲しい、僕たちがそのことについて考えているかどうかを確認したい、という話だけをしていました。僕たちにそのことを考えてさせて、一晩余分に過ごさねばならないようにするためです。(ニコラス、男性、15歳以上)

でも問題は、父は、えっと、何度も-どのくらいの期間かわからないけど-監視付き交流に現れるはずだったんだけど、現れませんでした、だからその最初の部分は完了してないんです-でも監視付き交流が終わると父は考えたんです。「おい、娘を渡せ、今すぐに監視なしで交流したい」って。わけがわからない。(イザベル、女性、12~14歳)

 実際、多くの若い参加者にとって、別離後に親子関係を再構築したり復活させたりするのは何かと時間がかかるものでした。上述したケースでは、このような親は、子どもの話に耳を傾け、時間をかけて親子関係を発展させていない場合、彼らの行為が子どもとの距離と子どもの憤りを生むことが確認されました。初歩的なレベルでは、子どもや若者が親との関係において何を求め、何を必要としているのか、子どもの生活にただ関心を持つことが重要であることが確認された。ただ子どもの生活に関心を持つことは、子どもや若者が親との関係に何を求めているのか、何を必要としているのかという点で、非常に重要であると認識されました。

なぜって、ええ、私が何か言っているときに、母はただ・・・。母は自分のことをやり続けながら、「まぁ、素敵ね」なんて言うようなことはないんです。どっしりと座ったまま、「いいわよ、さあ話してみて」みたいな感じです。そして、後でそのことを思い出すんです。(面接者: そうなんですね、うん、それは素晴らしい。それから、お父さんはどうですか?お父さんはあなたの話をどれくらい聞いてくれていると感じますか?)父は私の話をあまり聞いていないように感じます。私が何千回話しても、父は気づかないでしょうから。えっと、そうですね、私がテコンドーをやっていた時も、私がやっていたことを覚えるのに3年かかりましたし。木曜日のほぼ毎週、父から電話がかかってきて、「今テコンドーに行ってるんだ」って感じで言うと、「えっ、テコンドーやってるの?」みたいな。そう、自分に都合のいいこと以外、何も覚えていないみたいなんです。(アラナ、女性、12~14歳)

 この場合、若者は、もう一方の親が自分に関心を持たず、自分の世話をせず、自分に注意を払ってくれないと感じ、親との距離を感じるようになったようです。重要なのは、このことが将来の子育ての取決めをする意思決定において、重要な要因として浮上し、この面接を受けた若者が父親と過ごす時間を減らすことに繋がったことです。別離のプロセスが進行している最中でさえ、親が養育者としての役割に専念する、または継続する必要があることを明確に表明する子どもや若者もいました。
 先に述べたように、研究に参加した何人かの子どもや若者が、両親の別離後に両親と前向きで有意義な関係を築こうとする努力と関連し、複雑な問題であると指摘したのは、新しいパートナーの存在でした。一部の子どもや若者にとっては、親に再びパートナーができることはポジティブな経験でした。

母親のところで過ごさなければならなくなったことで、唯一有益だったのは、義理の父に会ったことで、彼と一緒に過ごしたいと思うようになり、今でも彼との関係が続いていることだと思う。(ハミッシュ、男性、15歳以上)

義理の母との関係は、以前はちょっと微妙だったけど、今はだいぶ良くなったの。(クレア、女性、12~14歳)

 しかし、他の参加者にとっては、親に新しいパートナーができることは、子育ての取決めに関連した難しさに繋がっていました。

そうですね、父が義理の母と結婚する前のことを思い出します・・・それまでは、父に会いたいときはいつ会うか自分で決めることができました・・・父の所に行くだけのことですから。そして、義理の母ができると、物事がキッチリとし始めました・・・ええ、本当に柔軟でした・・・そして今は、以前は本当に厳格だったみたいで、えぇ、父は、本当に柔軟だよと言っていますが、今も柔軟じゃありません。(ルーシー、女性、12~14歳)

えぇ、平日は問題ありません、ちょうど良いくらいです。でも週末は、母には会いません。母の新しいボーイフレンドがふらっと、ほんと毎週末やってきて、たいてい二人で出かけたり、週末はずっと母親と話をすることが本当にできないからです。だから、週末は物足りないですね。(リリー、女性、12~14歳)

父との接触は少なくなりました・・・時間の経過とともに。ええと、父が父の、えぇ、父が父の、うん、奥さんと2人の子どもを持って以来ずっと。(ハリー、男性、12~14歳)

 ルーシー(女性、14歳)の場合、継母との間に特に分裂した関係が生じたのに、父が自分をサポートしてくれなかったと感じていました。

私は裁判所の命令やいろいろなことで非難され、継母からたくさん非難されました・・・父はただ座って聞いているだけ・・・でも、私のために立ち上がることはありませんでした。(ルーシー、女性、14歳)

 ルーシー(女性、12~14歳)は、子育ての取決めをする過程で、親の新しいパートナーの関与を最小限にする必要があることを示唆しました。

うーん、ええ、ええと、もし継親が本当におせっかいな人だったら、出て行くように言ってください・・・真面目な話、えぇっと、何度も[継母が]現れるんですよ、私が心理学者と打合せをしているときにね・・・えぇっと、お父さんと-私たちがカウンセリングを受けているときにね、いつも現れて、いつも操作するようなことをするんですよ。(面接者:では、実際にセッションに参加するんですね?)ええ。両親に話をさせて、義母や継父親を関与させないでください。

 この研究に参加した子どもや若者にとって、親が新しい交際をしながらも、親であるという役割を維持することが重要でした。その目的を達成するためには、両親との関係を強化し、別離のプロセスを乗り越える上で、子どもや若者にとって質の高い時間が重要でした。重要なことは、そのような問題が存在する場合、関係を継続するためには、これらの問題を解決することが不可欠であることが明らかになりました。

はい、はい。基本的に、私が今言ったことは、物事をより強固にすること、私たちのいずれにも、そのことについて話すかどうかという選択肢を与えないということです。必要なことだとわかっていても、そこから逃げるという選択肢を与えてしまうと、そうなってしまうからです。そして、特に父には、私たちがどこから来たのかを理解してもらう必要があったため、それを継続することが非常に重要でした。でも父は、何か難しいことを見つけても、ただ無視して二度と戻らない人なんです。(フィービー、女性、15歳以上)

3.5 柔軟な子育ての取決めと変更能力

 オーストラリアや海外の先行研究では、最初の子育ての取決めに関する意思決定への参加に加えて、子どもや若者の柔軟な取決めへの満足度と、このような取決めを時間の経過とともに変更する際に発言権を持つ能力との関連も指摘されています(例えば、カシュモア、パーキンソン、ウェストン 2010;カンポら 2012;フォーティンら 2012;ロッジ&アレクサンダー 2010;シーハンら 2005;トリンダー 2009)。この研究で面接をした子どもや若者の多くは、時間の経過とともに、子育ての取決めに何らかの変更、特にそれぞれの親と過ごす時間に関連する変更を経験していました。3分の2近く(59%)の参加者が、面接時にそれぞれの親の家で過ごす時間に満足していると回答しましたが、3分の1近く(30%)はこの点に関して変更を望んでいると表明しました。変更が必要だと考えるに至った多くの理由が挙げられました。関わっている親との関係が悪い(または、もう一方の親との関係が強固)、質の高い子育ての時間が不足している、もう一方の親の家庭での仕事が増えた、生活環境が整わない、子育てスタイルに不満があるなどです。

ご存知のように、父は、子育てなどについて様々な意見を持っています。父は、どちらかと言うと、親は親であるべきで、決して親を親友のように考えるべきではないという感じです。親は親であるべきだって。でも、母と私は、ええ、母は私の友人である以前に私の親ですが、母は私の友人でもあり、私の考えではそれは良いことなんです。けど、父はそれとは違う考えです。父は、もし友人として親を見るなら、ある種の権威やそのようなものを取り除かれ得ると考えているんです。(クレア、女性、12~14歳)

ええと、父との時間は十分ではありませんが、父は-父はもっと時間を欲しいと思っていますが、時々彼は時間を見つけるのに苦労しているみたいです。(イヴィー、女性、12~14歳)

えぇ。それでも絆を深める時間はあまりありませんでした、父は友人と一緒に住んでいたので・・・とにかく私たちは父と一緒に過ごすことはありませんでした。私たちはその時間を他の人とただ過ごしていました。(スカーレット、女性、15歳以上)

 別のケースでは、子どもや若者が、2つの家を行き来しながら、社会的な約束や別の約束を守ることの難しさに、単に不満を感じている報告していました。

なぜなら、もし、えっと、ここで友人たちが誕生日パーティーみたいなのを予定していて、そこに行きたくても、その日が父と過ごす週末と重なったら、本当のことを言えません・・・「あのね、家には行けません」って・・・そして、別の時間を作ろうにも、それも難しい・・・いつも忙しいからです。(エリー、女性、10~11歳)

うん。 まあ、さっき言ったように、父が遠く離れて暮しているので、私が父のところにいると、そういった約束とかを全て守るのは本当に難しいです。(エマ、女性、12~14歳)

 面接を受けたゾーイ(女性、12~14歳)やアイザック(男性、12~14歳)は(とりわけ)、各家庭での時間の柔軟性と、両親が必要に応じて調整し、変更を加えられる能力に感謝の意を表しました。一方の親にもっと会えるか、一緒に過ごす週末の計画を変更できるかどうかに拘らず、子どもと若者は、親と一緒に時間を過ごすことになったとき、両親が自分たちの声に耳を傾ける必要性を継続的に表明しました。

えっと、そうね、「そう、うん、今週末しか来れないわ」とだけ言えたら最高なんだけどね。あるいは、「そう、私と女友達とで。私たちは映画に出かけるの。うん、私たちは、うん、どこそこに行ってお泊りするんだ」・・・みたいに、言えるようになりたいの。柔軟性を持たせて、「そうね、友達と一緒にこうしよう」と言いたいです。友達と一緒にそうするんだ。(ゾーイ、女性、12~14歳)

ええ、僕の母さんは、「もしあなたが、私たちが出来ることを変えたいなら・・・もしあなたがそう感じないなら、たとえ私と過ごすことになっていた週末であっても、お父さんに会いに行きたいなら、そうさせてあげるわ」とか・・・例えば、僕がある週末に父さんのところに行きたいと思ったら、「ねぇ、お母さん、ちょっとだけ話に行っていい?お父さんの家に一日だけ行って話してきてもいいかな?」と言ってみるんだ。そうしたら、母さんは「ええ、いいわよ」って言うと思うよ。(アイザック、男性、12~14歳)

 取決めを変更したいという希望を表明した後、ある面接者は次のように述べました。

僕たちはただ、「どうしたらいいんだろう」と思って、[可能性のある養育時間の取決めについて]「2、2、5、5でどうですか」って言ったんです。ただ試してみたら、ホントにうまくいって、良い感じだったので、そのまま続けていたら、今ではいつものことになりました。それで、母が父に話したんです。そしたら父も「それなら全く問題ないよ」だって。(ライリー、男性、12~14歳)

 しかし、研究に参加した子どもや若者が自分の意見が取り入れられていないと感じていると報告した多くの場合、明らかに不満が滲み出ていました。

えぇ、お父さんに会えばわかると思うんだけど、なんていうのかな。父はすごく、どういったら言いんだろう、こう、なんというか、父なりのやり方というか、やり方があるというか。(ハリー、男性、12~14歳)

 重要なことに、研究に参加した子どもや若者は、両親や他の大人に自分の意見を聞いてもらうための別の方法を開発したと報告しました。一部の子どもは、コミュニケーションの手段として手紙を使用しました。

私は父と一緒に暮らしたくないと言って、父と何度も話し合いました。一緒に住んでいる間、何度か手紙に書いて、あそこに住みたくないと言ったら、父がやっとのことで折れてくれたみたいなのの。(ステファニー、女性、15歳以上)

えぇ、それで僕は母宛てに手書きの手紙を書き、ポストに投函しました。写真とその手紙を持っています。母に対する僕の気持ち、母がしているありとあらゆること、もし母が今までの自分を変えないなら、そして振る舞いを変えないなら、多くのことを失うことになるでしょうって、殆ど全て書きました。(ハミッシュ、男性、15歳以上)

 別のケースでは、安全でない子育ての取決めや、話を聞いてもらえないことへの子どもと若者の不満が、家出(リリー、女性、12~14歳)や親の所有物を破壊する行為にことにつながりました。

それで父は私たちを出迎えてくれました。その後、父の家とテレビを壊してしまったんです。だって、私たちは、父が私たちの言うことを聞くつもりがないのなら、別の方法で私たちの言うことを聞かせなければならないんだもの。(タリア、女性、12~14歳)

 前述のように、研究に参加した子どもや若者のほぼ3分の2(62%)が、両親の別離に関連してメンタルヘルスサービスを利用したと報告しており、両親とのコミュニケーションや子育ての取決めがそのきっかけになったと示唆する参加者もいました。また、共同養育の取決めで暮らす子ども8人が、一方の親の家に行くことに不安を感じていると面接時に報告し、自分の症状と関連する親との関わり方の両方を管理するためにメンタルヘルスの専門家と連携していました。後述の考察や本報告書の後の章で示すように、今回対象とした子どもや若者が経験したとされるトラウマや苦痛のレベルは、子どもや若者の意見、経験、ニーズに耳を傾け、子育てに関する取決めを行う際にそれらを認め、相応の重みを持たせることに、より大きな注意を払う必要があることを示唆しています。多くの子どもや若者にとって、親から精神的なサポートを受け、話を聞いてもらうことは、別離後に良好な関係を築くための鍵となりますが、一方で、単に生活環境の中で安全で保護されているという願望を語る子どももいました。このような状況の中で変化を求める能力は、このような苦境にある子どもや若者にとって非常に重要であることが浮かび上がりました。この安全性の問題は、子どもや若者との全ての面接データ中で参加者から53回提起され、研究参加者の3分の1近く(n=18)が、異なる時期にどちらかの親の家庭で「安全だと感じなかった」ことを示唆し、影響を受ける参加者の側に大きな不安を生じさせていました。

私は今でも-私の子ども時代がそうだったから、今でも、何て言うんだっけ。使いかけの言葉なんだけど、ええと-私はまだ、薄氷を踏む思いで父のまわりを歩いているようなものです。(アラナ、女性、12~14歳)

ちょっと変な感じです。なんか、ホントにそこが安全な場所とは思えませんでした。(面接者:えっ、なぜそんなことを言うんですか?)父から嫌な雰囲気、空気を感じるんです。なんか、父はホント、とても・・・父はとても虐待的なんです。ただ、僕には違う、虐待的ではありません。父は僕を虐待したりはしません、神に感謝します。でも、父はホントにひどく-ちょっとでも気に障ると、すぐカッとなってしまうような人でしたね。そうなんです。(安全だと感じなかった?)はい。(ハリー、男性、12~14歳)

 別離後の引っ越しで、より大きな安心感を得た参加者もいました。例えば、

そうだね、この家にいると安全だと感じる・・・うん。でも、時々外出するときは用心してます。また、外にでるようなときは、毎晩、ドアや門に鍵をかけて出かけるんだ。(ヘイデン、男性、15歳以上)

いや、だから、基本的には、うん、[別離後]ずっと、お父さんの家でもっと過ごしたいといつも思っていたんだ。家庭がいつも平和だったから、ああ、全体的に安全だと感じたんだ。(ハミッシュ、男性、15歳以上)

 研究に参加した子どもや若者は、「安全」と感じるのは、身体的、言語的、精神的、その他の虐待がない、かつ/または身体的、言語的、精神的、その他の虐待への恐怖がない家庭環境であると説明していました。研究参加者の中には、子育ての取決めをしたときの当初置かれていた状況が、既に安全でないと感じている若者もいた。面接を受けたヘイデン(男性、15歳以上)は、父親との共同養育になった直後の体験をこう語っている。

父は酔っ払っていて、私たちを迎えに来たんです。(なるほど)だって、いつもはお母さんが運転してくれるのに。以前は、毎週のように、いや、毎週、本当にいつでも、でも最低でも隔週でした。(なるほど)僕らは時々、毎週末に会うみたいなこともあったりし。(ふんふん)ほんと普通に。(そうなんだ)でね、うん、その夜は少し遅くなったようで、母は何かしていたました。僕は間違いなく仕事のことだと思ってたし、僕たちはそれで良かったんだけど、父は壊れてたんです。えぇ、壊れてました。(う~ん)それで、とにかく、父は車から降りてきて、それから本当にすごく乱暴になったんです。母をひっつかんでました(そうなんだ)それで、母から引き離すために父を殴らねばならなかったんです。(なるほど)それで、取っ組み合いはかなり急速にエスカレートしました。(そうですか、それはお気の毒でした。それで、あなたの知る限り、警察か当局に報告されましたか?)ええ、直ぐに。(なるほど)弟が警察に電話したんです。(正解だね)取っ組み合いしてる間に。(わかりました)警察はかなり早く来ました

 ヘイデン(男性、15歳以上)は、この父親とはもうコンタクトを取っておらず、母親や他の家族と一緒にいる今の家で「安心を感じている」と述べました。しかし、彼は次のように述べた。
 「でも、ときどき外出するようなときは、用心しています。(そうだね)外出するようなとき、毎晩、僕はいつもドアや門に鍵をかけてもいるんです。(なるほど)ただ、安全であることを確認します」
 面接を受けた若者の中には、子どもコンタクトサービスが提供するものを含め、子育ての取決めをより安全に感じるのに役立つ支援サービスの肯定的な経験を指摘した者もいました。

私はより安全だと感じました・・・監視付きコンタクトを実施したときに。(イザベル、女性、12~14歳)

 しかし、警察や関連する児童保護当局の対応によって安全だと感じたのか(例えば、ボー、男性、12~14歳)、または暴力、虐待、またはその他の安全上の懸念について報告したかどうかについて、より曖昧な記憶を持っている者もいました。

彼[警察官]は[暴力の訴えについて]私を信じてくれたような気がしていたけど、そうではないと思う。そう、えっと、そう、わからないけど。-彼は僕に出直すように言ったんだ。そして、録音をし、警察医に父がしたことについて質問をさせた。僕はそれに答えて-でも、ホント、未だに何も起きてないよ。(ダニエル、男性、12~14歳)

 別の参加者は、暴力や虐待の訴えに対して信じてもらえなかったことへの苦痛や失望を、子育ての取決めを特徴付けるこのような応答とともに述べました。この参加者は、サービスに対して何を望んでいるかという質問に対して次のように答えています。

私が警察に話したとき、警察に聞いて欲しかった・・・ただ、まあ、あなたのお父さんだから、でも、あなたの血筋だから・・・と言うのではなく・・・。だって、警察は言い続けてたんです、ああ、そうだった、そうだったって。私の覚えている限りでは、警察は、身体的暴力の報告とかがない、だから、虐待があったというあなたの言うことを信じられない、と言ったんですから。(アシュリー、女性、12~14歳)

うーん、彼ら[警察]は妹を保護しませんでした。彼ら、父の家でいろいろなことが起こっているのを知っているのに、妹を一人ぼっちで父の監護下に置いても大丈夫だと思ったのです・・・えぇ、母は全部報告したんだけど、全部却下されたんです。(面接者:警察や児童保護に通報したのですか?)全て伝えました。(イザベル、女性、12~14歳)

3.6 継続的なコミュニケーションと子育ての取決めに関する有意義な発言権

 オープンエンド型面接質問において、参加した子どもや若者のかなりの割合(38%)が、別離後の状況で何が起こっているのかをより深く理解するために、継続的なコミュニケーションをどのように望んでいるか述べました。第4章で検討するように、研究に参加した子どもや若者のほぼ3分の2は、家族法制度の専門家が、子育ての取決めに関連する意思決定において、コミュニケーションを改善する必要があると指摘しました。加えて、若い参加者は、質の高い時間とサポートの機会を最大化することを求め、親がもう一方の親の感じ取った動機について解説することに注意を促していました。子どもや若者は、より多くの情報を求めている事項には次のようなものがあることを示しました。
  ・自分たちに、いつ、どのように発言する機会があるのか?
  ・自分たちの発言は、手続きにどの程度影響を与えるのか?
  ・自分たちの考えを代表してくれる専門家がいるか?
  ・親に自分たちの望む生活の取決めを伝えるために、どのような支援策が考えられるか?
  ・法的手続きのスケジュールと性質、このような状況での意思決定者、あるいは子育ての取決めの交渉に関連する手順はどのようなものだったか?
  ・利用可能な支援サービス(例えば、メンタルヘルス専門家、支援団体、ヘルプライン、法律相談)とはどのようなものか。
  ・自分たちの生活の取決めに、どのような結果が予想されるか、またどのような選択肢があるのか?
 情報を入手し続けることで、子どもや若者は、別離に伴う不確実と激動の中で、前途に対しある程度の慰めと確信を得ることができました。何人かの子どもや若者は、両親の別離で何が起こっているのか、最終的な取決めのプロセスに関して「隙間を埋める」必要がないようにしたいと述べました。

私が助かったのは、父が私と兄弟に影響を与えるようなこと、あるいは私たちが知りたいだろうと父が考えたことを私に知らせ続けてくれたことです。そのようなことは、たとえ小さなことであっても、とても役に立ちます。つまり、何が起こっているのかを知り、それについて何を感じ、何を感じるべきかを知り、万が一に備えることができるのです。(ケイトリン、女性、15歳以上)

 前セクションでの議論に基づいて、家族の状況が暴力、虐待、またはその他の子どもの安全懸念事項によって特徴付けられる子どもや若者にとって、有意義な発言権を持つことが非常に重要であることが浮かみあがりました。自分に影響を与える子育ての取決めについて有意義な発言ができることは、殆どの子どもや若者にとって重要であることが明らかになり、自分たちの意見が意思決定プロセスに不可欠で尊重されるものとして扱われるよう求める声もありました。

他の大人と同じように彼らを扱ってください。なぜなら、子どもは両親の離婚を通して、多くの場合、大人はとても未熟になるので、子どもはかなり早く成長するからです・・・まるで私が、そうね、何が起こっているのか全く知らない、どんな状況か全く知らない人であるかのように私に話しかけるより、寧ろ対等に話しかけられる方が好きでした。(フィービー、女性、15歳以上)

 このような状況において、意思決定過程への参加はより困難であると認識されているかもしれませんが(例えば、パーキンソン、キャッシュモア&シングル 2010;パーキンソン&キャッシュモア 2008;ニール、フラワーデュー、スマート 2003)、研究に参加した子どもや若者のほぼ半数(46%)は、こうしたリスクの高い状況に関連する彼らの見解や経験に更に配慮するよう家族法制度サービス専門家に求めており、より多くの研究参加者がこの目標に支持を示しています。先述したように、子どもや若者は、法的な意思決定や非法的な意思決定の過程から切り離されるより、寧ろ、こうしたハイリスクな状況でさえも(であるから特に)、話を聴いてもらい、真剣に受け止めてもらうことを求めていました。家族が家族法制度サービスを利用した、この研究に参加した子どもと若者の経験は、次の本質に迫る章の焦点になっています。

3.7 まとめ

 この章では、子どもと若者の視点から、別離後の子育てに関する取決めに関連する重要な問題に焦点を当てました。殆どの子どもや若者は、両親の別離居が自分たちの生活に大きな影響を与え、この変化の中でどう適応し対処していくか、支援と指導が必要だと述べました。私たちの研究参加者の両親の別離にまつわる状況は多岐にわたりますが、研究に参加した子どもや若者の大多数(76%)は、親がもっと頻繁に、もっと注意を払って自分たちの意見を聞くべきであると表明しました。
 また、研究に参加した子どもや若者のコメントには、親は新しいパートナーとの関係は勿論のこと、別離のトラウマや動揺を抱えていようと、できる限り養育者や後見人としての役割を果たすことを求める声が反映されていました。本章の冒頭で述べたように、子どもや若者は、別離中もその後も親から話を聴いてもらっていると感じている場合、その親に対しより親密さを感じていると報告する傾向がありました。逆に、険悪な別離や子どもや若者の意見や経験に耳を貸さない場合、その親との接触がない、あるいは限定的である、あるいはそのような子育ての取決めを望む傾向が見られました。
 その他、子どもや若者にとって重要であることが明らかになった因子には、親との感情的な支えとなる関係の発展や再開、親が子育ての取決めに柔軟性を持たせ、将来の変化に対して寛容であることが含まれていました。また、意思決定において有意義な発言権を有するための継続的なコミュニケーション手段と機会は勿論のこと、安全と安心を感じることができる生活環境も、研究に参加した子どもや若者が重要視している因子でした。網羅的ではありませんが、これらの指名された因子は、子育ての取決めに関する若い参加者の見解と経験の報告する上で重要でした。

[訳者註]多重面接効果 multiple interviews effect
多重面接効果は、子どもが複数回質問を受けたり、複数のサービスと接触した場合に発生する可能性がある(脚注26より)。この用語自体はネット検索してもヒットしないため、想像で補うしかないが、思い出したくないことを何度も思い出すことにより精神的負担が増加することを指すものと思われる。

[訳者註]子どもの操作 child manipulation
一方の親による以下の行為が該当します。
・自分の願いを聞き入れ、自分の味方になることでしか、自分は愛されないと子どもに思い込ませる。
・疎外された親が子どもと過ごす時間を邪魔する。特に、子どもがその親を訪ねる以外のことをするように誘惑するような、競合する選択肢を提示する。
・子どもがもう一方の親と一緒に過ごしていることを取り乱す。
・常に子どもをもう一方の親と対立させようとする。
・もう一方の親について、特に離婚に関連した事実をでっち上げたり、歪曲したり、不適切に大人びた事柄を子どもと共有する。
・子どもをスパイとして利用する。
・子どもをメッセンジャーとして利用する。
・もう一方の親や子どもが要求をのまなければ、自殺すると脅す。
子どもを操る親が子どもをもう一方の親から引き離そうとする場合、その行為はよく「片親疎外」と呼ばれます。

[訳者註]オープンエンド型質問 open-ended question
オープンエンド型質問とは、質問に対して回答者が自由に文章や単語で記入する質問形式。選択式質問(クローズドエンド型質問)のように回答内容が限定されていないため、調査票作成側の想定していない回答を引き出すことが出来る。
クローズドエンド型質問とは、質問に対して回答者が選択肢の中から選んで回答する質問形式のこと。質問の回答としてあらかじめ選択肢が提示されているため、オープンエンド型質問と比べて回答者にとっては答えやすくなっている。また選択された回答数を簡単にカウントすることができるため、結果を定量化しやすい。

アンケートQのホームページより抜粋

(了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?