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第2章:子どもが感じているかもしれないこと 養育計画の作成~別離後の子育ての取決めガイド~

カナダ司法省のウエブサイトに掲載されている
Making Plans
A guide to parenting arrangements after separation or divorce
How to put your children first
という冊子の「第2章」を翻訳・紹介します。

 別居や離婚をする際に気になるのが、子どもことです。「子どもは大丈夫だろうか」と不安になることもあるでしょう。
 本章では、別居や離婚に対する子どもの反応について説明します。子どもの気持ちを理解することは、子どもの質問や反応を理解するのに役立ちます。また、子どもをサポートするのにも役立ちます。
 誰にでも間違いはあります。このガイドに書かれていることを読んで、「あんなことをするべきではなかった」とか、「あの状況には別の方法で対処すべきだった」と思うことがあるかもしれません。完璧な人間はいません。子どもと一緒に、いつでも問題を見直すことができます。このガイドは、将来的に使用するさまざまな戦略を考えるのに役立つでしょう。

子どもも悲しんでいるかもしれません

 あなたと同じように、あなたの子どもも、これまでの家族を失ったことを悲しんでいるかもしれません。両親の離別や離婚は、子どもにも喪失感を与えます。幼い子どもは、自分が感じていることを説明するだけの言語能力や経験がないため、行動で悲しみを表現することが多いのです。
別居や離婚に対する子どもの反応は、一般的に子どもの年齢によって異なります。年齢層別の情報は、カナダ司法省の「様々な年齢と発達ステージにおける子どもの反応方法」に掲載されています。

 悲しみのステージ
 ここでは、子どもが悲しむときに感じていることの例をいくつか挙げています。これらのステージの全てを経験する場合もあれば、一部のステージのみを経験する場合もあります。また、ここに記載されている順序とは異なる順序で経験することもあります。

 否定
 「こんなこと信じられない」
 「両親はまた一緒になるだろう」

 怒り

 「どうしてこんな風に私の人生を台無しにするの?」
 「自分のことしか考えていないのか!」
 「どうして私の両親は離婚してしまうの?なぜ私がこんな目に遭わなければならないの?」
 「なぜ私たちは一つの幸せな家族になれないの?」

 交渉
 「私がもっとうまく振る舞えば、両親は復縁するかもしれない」
 「もしかしたら、私は両親が一緒にいるのを助けられるかもしれない」

 抑うつ
 「私はとても悲しくて一人でいるように感じる」
 「私のせいで両親が離婚してしまう」
 「私の家族は私がいないほうがいいだ」
 「このことを誰にも話したくない。ただ一人になりたい」
 「自分の気持ちを話せる人がいない」
 場合によっては、子どもが悲しみの感情から攻撃的な行動をとることもあります。薬物使用や飲酒など、自傷行為にも注意してください。キッズ・ヘルプ・フォン(1-800-668-6868)など、24時間3655日サポートしてくれる機関があります。

 受容
 「喜んではいないけど、両親が復縁しないことを理解している」
 「両親がもう一緒に住んでいない方が、家族にとっては良いことなんだ」
 「両親はもう一緒に住んでいないけど、二人とも私のことを愛してくれている」
 あなたが別居や離婚に適応するのに時間がかかるように、子どもが適応するのにも時間がかかります。子どもが受け入れる前に、あなたが受け入れなければなりません。子どもは、あなたからヒントを得て行動します。

子どもが聞いておかねばいけないこと

 両親の離婚や別居を知った子どもは、心の準備ができていないことが多いものです。子どもは、悲しみ、寂しさ、混乱を感じます。一方の親が他方の親を残して出ていくことで、残った親も自分を捨ててしまうのではないかと心配するかもしれません。
 あなたは、別居や離婚が子どもにどのような影響を与えるかを話してあげねばなりません。あなたは子どもに以下の対応をする必要があります。
  ・何が変わるのかを話す
  ・子どもの気持ちや心配事を聞いてあげる
  ・自分の気持ちを正直に話していいことを伝える
  ・何があっても自分を愛していることを伝える
 子どもの問題を全て解決したり、すぐに子どもの気分を良くしたりすることはできないかもしれませんが、あなたが話を聞き、子ども気持ちを理解していることを知ることは、子どもにとって助けになります。

覚えておいてください
子どもには、あなたの気持ちが変わらないことを知ってもらう必要があります。


子どもに伝えるべき大切なこと
 以下に紹介するのは、子どもが話し合いに参加し、離婚や別居に対処できるようにするための幾つかの声かけの例です。
  「ママ(パパ)への気持ちは変わったかもしれないけど、私は今でもあなたを愛しているし、あなたがママ(パパ)と関係を持つことは大切だと思っている」
  「別居や離婚の原因になるようなことはしてないよ。誰もあなたが何か悪いことをしたとは思っていないよ」
  「あなたがそういった気持ちを持つのは当たり前で、私はあなたの気持ちを知りたいと思っている」
  「あなたがパパとママの面倒を見る必要はないのよ。パパとママは大人だから、あなたの面倒を見るのは私たちの仕事よ」。
  「パパとママのどちらかを選ぶ必要はないんだ。パパとママの両方を愛しても良いんだよ」
  「あなたはパパとママが復縁することを望んでいるかもしれない。復縁は子どもがよく望むことなんだ。パパとママは別居(離婚)について本当に慎重に考えてきたし、この考えを変えるつもりはないよ。私たちの人生における全ての物事は変化していくものだ。私はあなたのママ(パパ)と協力して、あなたができるだけ楽になるようにするつもりだよ」
 このリストの発言があなたのケースに当てはまらない場合は、その発言はしないでください。子どもには正直に話しましょう。あなたの安全や子どもの安全を心配している場合、ここに挙げた発言の中には、あなたのケースでは適切でないものもあります。
 自分自身の感情や課題を抱えているときは特に、子どものニーズに焦点を当てることは時に難しいことです。医師、カウンセラー、メディエーター、年長者、宗教的アドバイザーなどのサポートを受けることで、子どものニーズに焦点を当てることができます。

別居や離婚について子どもに伝えること

 可能であれば、あなたともう一方の親がまだ子育ての「チーム」であることを示し、一緒に子どもに伝えるのが良いでしょう。二人からの一貫したメッセージを子どもに伝えることが大切です。
 一緒に伝えられるのが一番ですが、以下のような場合は、それぞれが別々に伝えた方が良いかもしれません。
  ・あなたと一方の親との間に、子どもの前でも脇に置いておくことができない激しい対立や怒りがある
  ・安全上の問題や懸念がある
 どんなアプローチが最善であるか決めたとしても、あなたが話そうとしていることを注意深く考え、子どもの質問を予想するように努める必要があります。
 別居や離婚についての基本的な情報を子どもに伝えることは重要です。子どもの年齢によって、与える情報量や説明の仕方が異なります。しかし、子どもが何歳であっても、パートナー関係が終わった理由を詳しく知る必要はありません。
 未就学児は、別居や離婚といった言葉を理解していないので、もっと基本的な言葉で説明する必要があります。例えば、自分と相手の親がもう一緒に住まないで、別々の家に住むことになったことを伝えるといいでしょう。
年長の子どもは、分離や離婚のより抽象的な概念を理解します。年長の子どもには、次のように言ってみましょう。
 「パパとママはこのことについてよく考え、話し合ってきたんだ。問題があって、それを解決しようとしてきた。でも、もう一緒に暮らさないほうがいいと思うんだ」。
以下のような、子どもに影響を与える現実的な問題について話し合う準備をしておきましょう。
  ・生活の取決め
  ・友人や、兄弟姉妹、祖父母などの家族との関係
  ・子どもの学校や活動、おもちゃや服などの持ち物に与える影響
 守れないような約束はしないこと。子どもと約束する前に、一方の親とよく話し合うことが大切です。例えば、旅行やサマーキャンプなどの夏の計画については、一方の親と話し合う前に子どもと約束しないようにしましょう。
 別居の初期段階では、実際にどのような取決めがなされるのか分からないかもしれません。子どもに話すときには、あなたが知っていることを伝えてください。また、他の取決めが整い次第、さらに情報を提供することを伝えてください。子どもは質問することを恐れているかもしれません。できる限り多くの情報を与え、質問しても大丈夫だということを伝えておくとよいでしょう。子どもが質問したときには、話をよく聞いて、できるだけ正直に答えるように努力することが大切です。ただし、一方の親を批判してはいけません。また、何が悪かったのかを詳しく教えないようにしましょう。簡潔に、安心感を与えるようにしましょう。
 例えば、子どもに「この先どうするつもりなの?」と聞かれたら、「全て順調よ」と答えるのではなく、「大丈夫よ」と言って、次のように答えるのが良いでしょう。
 「今は悲しいけど、当たり前のことだし、乗り越えられるわ。心配しなくてもいいわよ」
 これは一度だけの会話ではありません。あなたは以前から別居を考えていたかもしれませんが、子どもにとっては驚きの出来事かもしれません。子どもは、あなたの話を理解するのに時間が必要かもしれません。また、時間が経つにつれて質問が増えてくるかもしれません。子どもには、今起きていることについて自分の考えや感情を表現する機会を与えるようにしてください。

 カナダ司法省には、「次に何が起こるの?別居や離婚後の子どものための情報」という子ども向けの冊子があります。子どもと一緒にこの冊子を読んで、何が起こっているのかを理解してもらうことができます。子どもが十分な年齢に達していれば、自分で読むように勧めて、その後、読んだことについてオープンに話し合うこともできます。
 この冊子は、子どもが家族法の基本的な事実を身につけ、両親が別れるときにどのような過程を経るのかを子どもに知ってもらうことを目的としています。
 また、子どもに、両親の離婚に対して感情的になるのは当たり前だということを理解してもらい、信頼できる人に懸念を表明することを促すことも目的としています。

自分の胸にしまっておくべきこと

 子どもに次の事項を聞かせてはなりません。
  ・お金の問題、浮気、自分と一方の親との対立などの大人の問題
  ・別居や離婚の責任が一方の親にあると考えている理由
  ・一方の親についての否定的なこと

子どもはどのように対処していますか

 別居や離婚に対して、子どもが反応するのは正常なことです。子どもの年齢によっても反応は異なります。以下の質問は、子どもの様子を知るのに役立つでしょう。もし、一方の親とうまくコミュニケーションが取れるようであれば、子どもの様子の全体像を把握するために、これらの質問を一方の親と話し合うのもよいでしょう。
1.子どもが悲しみに関連するどのような感情を経験していると思いますか?否定ですか?怒りですか?交渉ですか?抑うつですか?受容ですか?
2.子どもの年齢から見て、別居や離婚の問題にどの程度対処していると思いますか?資料「年齢やステージに応じた子どもの反応」を参考にするとよいでしょう。
3.別居や離婚に関連して懸念される問題はありますか?
4.その問題について、あなたは子どもをどのように支援していますか?もう一方の親はどのように子どもを支援していますか?
5.誰が子どもをサポートしていますか?あなたとあなたの子どもは、これらのサポート源を利用していますか?

(了)

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