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2 サンプルと人口統計学的プロファイル 別離家庭の子どもと若者

離別家庭の子どもと若者:家族法制度の経験とニーズ
最終レポート 2018年
レイチェル・カーソン、エドワード・ダンスタン、
ジェシー・ダンスタン、ディニカ・ルーパニ
オーストラリア家族研究所

 この章では、研究に参加した61人の子どもや若者の人口統計学的情報、ウェルビーイングに関する情報、別離の詳細、現在の生活の取決めなど、研究に参加した子どもや若者に関する背景的情報を提供することを目的としています。特筆すべきは、2人の子どもや若者が参加した家族が14件あったことです。この章で示しているデータは、最も一般的には子どもや若者に視線を合わせて報告していますが、親の情報を二重にカウントしないように、主要な親の人口統計学的属性の一部は「家族に視線を合わせ」示してもいます。

2.1  家族の人口統計学的プロファイル

 前章で概説したように、本調査では47家族61人の子どもとの面接を実現しました。募集は全ての州と準州を対象に行いましたが、最終的なサンプルに含まれた、研究に参加した家族の居住地は、ビクトリア州(36%)、ニューサウスウェールズ州(34%)、クイーンズランド州(19%)、南オーストラリア州(11%)の4州でした(表2.1参照)。
 研究に参加した子どもや若者は、子どもが2人いる家庭の子が最も多く(51%)、更に子どもが1人(17%)または3人(17%)いる家庭の子が34%、4人または5人いる家庭の子が15%でした。

 表2.2は、研究に参加した親の主な人口統計学的属性を示しています(子どもより、寧ろ家族の視線で見ています)。研究に参加した親の大半(85%)は女性でした。方法論のセクションで強調したように、多数の父親から登録を受けましたが、その多くが更なる詳細情報を取得するのに悪戦苦闘したためです。研究に参加した親の年齢は34歳から53歳まで、平均年齢は44歳でした。親の大半が非先住民のオーストラリア生まれ(83%)であると特定された一方で、9%はアボリジニおよび/またはトレス海峡諸島民として特定され、更に9%は海外生まれでした。
 親の大多数は中等教育後の資格を持ち(68%が大学修了資格、23%が職業資格またはその他の資格)、研究に参加した親の3分の2以上が就業していました(72%)。40%が専業主婦(夫)/子育てであることがわかりました。
 現在の交際状況について尋ねたところ、13%が既婚または事実上の婚姻関係にあると特定され、更に23%が交際中(同居していない)、34%が別居中か離婚中、30%が独身と特定されました

 面接した61人の子どもや若者のうち、56%が男性、44%が女性でした(表2.3)。研究参加者の年齢は、フィールドワーク期間中、10歳から17歳21であり、面接時の平均年齢は13歳でした。子どもや若者の92%が非先住民であるオーストラリア人であり、更に7%がアボリジニおよび/またはトレス海峡諸島民の血を引き、1名が海外出身でした。研究に参加した若者の約半数は中学・高校の7年生から9年生で(53%)、27%が小学校の4年生から6年生、20%が高校に在籍していました。研究に参加した若者の大多数(92%)には少なくとも1人の兄弟姉妹がおり、参加者1人当たりの平均人数は2人でした。

 研究に参加した家庭のうち、ほぼ3分の2の親が子どもに関して親責任を共有していました(63%)(表2.4参照)。約3分の1(32%)の家庭は2017年に別離が確定し、更に30%は2016年に別離が確定し、38%の家庭は2016年より前に問題が決着していました。平均して、親は面接時に7年間別離していました(1年未満から16年まで幅があります)。

2.2  子どもや若者とその家族の特徴

 研究参加者に、彼らの生活、家族、現在のウェルビーイングについて一連の質問をしました。ここでは、その分析結果を紹介します。

 子どものウェルビーイング
 全体的な健康状態について尋ねたところ、大多数の子どもや若者は、自分の健康状態は「優れている」(27%)または「非常に良い」(28%)と答え、さらに32%が「良い」と答えました(表2.5)。
 一部の若者は、全体的な健康評価の低下の背後にある追加情報を提供せざるを得ないと感じました。

良いです・・・とても良いんでしょうけど、全然運動していないんです。(リリー、女性、12~14歳)

身体的には申し分ないと思いますが、精神的には、メンタルヘルスは本当にひどい状態です。昔からずっと悪いので、それを治すためにできることはあまりないんです。まあ、身体的な健康の方では、あまり運動をしないし、たぶん水も必要以上には飲んでません。でも、健康的な食事はしていますよ。(クレア、女性、12-14歳)

メンタルヘルスは・・・最近、かなり悪いです。身体の健康は、いつもとても良い・・・うん、たぶん、最近からのメンタルヘルスの要素を加味して、良いと言えると思う。(ニコラス、男性、15歳以上)

 また、子どもや若者に、過去6か月間のウェルビーイングについて他の4つの側面を評価するよう求めました。
  ・同年代の若者と仲良くする
  ・自信を感じる
  ・短気になる
  ・人生全般に対する幸福感
 大多数の子どもや若者は、自分の社会的ウェルビーイングを非常に高く評価しており、60%が過去6ヶ月間に「ほぼいつも」仲間とうまくやっていたと答え、更に27%が「いつも」他の人とうまくやっていたと報告しました(表2.6)。

 過去6か月間の自信について質問したところ、5人に1人の子どもや若者が「いつも」自信を持っていると答え、更に53%が「ほぼいつも」と答え、26%が「時々」と答えました(表2.7)。

 過去6ヶ月間の自分の短気については、大多数の子どもや若者は「時々」またはそれ以下の頻度でしか短気を起こさないと感じていましたが、「ほぼいつも」短気を起こしていると回答した人が少数ですが5%いました(表2.8)。

 大多数の子どもや若者は、「ほぼいつも」、あるいは「いつも」人生に満足していると答え(それぞれ67%と16%)、更に15%が自分の人生に「時々」満足していると答えました(表2.9)。ある子どもは、人生全般に「めったに」満足していないと答えましたが、次のように付け加えました。

私がその中間と言ったのは、友達がたくさんいることに私が満足しているからです。それは素晴らしいことだし、それを支えてくれる友達もたくさんいるからです。でも、勿論、私生活ではいろいろなことがあるので、その上に他のことを考えるのは難しいと思っています。(ポール、男性、10~11歳)

 親子関係のダイナミクス
 子どもや若者に、それぞれの親との関係について、それぞれの親にどれだけ親しみを感じているか、それぞれの親に会うのがどれだけ簡単に感じているかについても尋ねました。研究に参加した子どもや若者の大多数は、母親に対して「とても親密」「かなり親密」と感じていており(それぞれ80%、15%)、「あまり親密ではない」と答えた若者が2名、「全く親密ではない」と答えた若者が1名いました(表2.10)。父親との親密さについては、母親との親密さに比べて、研究に参加した子どもや若者の報告には幾分ばらつきがありました。子どもや若者の大部分が、父親と「とても親密」に、または「かなり親密」に感じていると報告していました(それぞれ22%と35%)が、19%は父親と「あまり親密ではない」、24%は「全く親密ではない」と報告しました。回答後に補足説明をする若い研究参加者は殆どいませんでしたが、中にはさらに深い洞察を与えてくれる子もいました。

私たちはとても親密とかなり親密の間のどこかにいると思います。父は私にとってどちらかというと両方の親のような存在です。父はとてもリラックスした態度で接してくれるので、一般的なことについて安心して話すことができます。私の他の友達はみな、父親とそういった話をするのは気が引けるといってるけど。私にはとても快適です。(ケイトリン、女性、15歳以上)

父と私は、両方とも非常に議論する方なので、時々衝突します。よく口論になったり、父が私を本当に怒らせるようなことをしたりします。私は不安障害を抱えていて、自分では対処できないので、そんな時は母のところに行きます。だから、そういうことに対処するのは本当にストレスなんです。そんなことから、父とはあまり親密ではありません。私が話すことに対して、父は非常に批判的なので、私は父に物事を伝えることができないように感じています。(クレア、女性、12~14歳)

 最後に、子どもや若者に、学校やスポーツ、社会活動など他の約束の合間に、それぞれの親に会うことがどれほど容易であったかについて質問した。この質問では、なぜそれが「簡単」または「難しい」のかについて、さらに詳しい説明を求め、これらの質的回答は、浮かび上がった幅広いテーマにコード化されています。
 ほぼ全ての子どもや若者が、他の約束の合間に母親に会うのは簡単または非常に簡単だと報告し(93%)、約44%が父親に会うのは簡単または非常に簡単だと報告しました(表2.11)。子どもや若者の3人に1人弱が、父親に会うのがつらい、またはとてもつらいと感じていました(31%) (また、研究参加者の1人は母親に会うのがつらいと感じていました)。約5人に1人(19%)は、父親と接触したことがないため、父親については回答しないことを選択しました(更に2人の若い研究参加者は、母親に会ったことがないため、母親については回答しないことを選択しました)。

 また、「親に会いやすい」と感じる理由を聞いたところ、大多数(母親:58%、父親:46%)が、「同居している」「すぐ近くにいる」「だいたい一緒に行動している」といった利便性を挙げました(表 2.12)。

そうですね、母はいつも私が選んだ家の周りを出歩いてました。・・・いつも家の中で一緒にいるようなものでした。・・・だから、会いたいだけ会っていますね。(スカーレット、女性、15歳以上)

父はあちこち連れて行ってくれるし、一緒に住んでいるから、夜も一緒に過ごして、夕食をとったり、そういうことをしてるから。ただ、それだけのことだよ。(ハミッシュ、男性、15歳以上)

母は家で仕事をしているので、母の家の近くに出掛けた際に、お母さんと声を掛けて、お茶を飲んだり、何かをしたりします。(コナー、男性、15歳以上)

たぶん・・・たぶん、父と会うのはまだ簡単なんだろうけど、やっぱり・・・会うのは簡単だけど、会うのと一緒に有意義なことをするのは別なんだ。(ニコラス、男性、15歳以上)

 多くの子どもや若者が、親が彼らのために特別に時間を割いてくれたり、課外活動に連れて行ってくれたり、移動時間を利用して近況報告をしあうことができたと答えました(母親:25%、父親:31%)。

っていうか、簡単に会えるから。母に会いたいときは普通に電話できるし、ええと、母の仕事中も会えるから。母が僕のとこに来るかもしれないし、ちょっと寄るだけかもしれないけど、そうだね、だいたいいつも、かなり簡単に母を会えるん簡単だよ。(ドミニク、男性、12~14)

母は交流日に融通を利かせてくれる。だから、もし僕に用事が出来たり、それに似たようなことがあったりすると、いろいろと調整できるんだ。いいことだよ。だから、学校と他のいろんなことの間で、ある種の仕事ができるのはいいことだよ。(オスカー、男性、15歳以上)

ええと、僕が活動やスポーツなどをしているとき、母はいつもそこにいるから。僕が活動をしているのを見てくれているから。(メイソン、男性、10~11歳)

ええと、簡単だと思うけど。というか、父は通常、ええと、父は現時点では常勤で、えっと、仕事の会議や仕事の集まり、そんなふうな事があるけど・・・父がそのような状況にあるとき、電話で連絡を取るのも本当に簡単です・・・ここに戻ってくるのは、そうね、とても簡単です。父は恐らく週末もここにいるだろうし、仕事がないときはいつでも家にいることが多いことも知ってるもの。(ケイトリン、女性、15歳以上)

 別の若者は、親との関係の質のおかげで、「気軽に」一緒に時間を過ごせるようになったと感じていました(母親:9%;父親:4%)。

私は母ととても多くの時間一緒に居ます・・・いつでも母に相談できると分ってるんです。そう、僅かでも気になることは何でも。「ママ、座って話がしたいんだけど」なんて母に話せばいいだけなのがわかっています。・・・母は私に選択肢を与え、私のために、また他の人のためにも、どうするのが最善かを教えてくれるんです。そういう意味で、母は素晴らしい人です。母は最高の人です。(ゾーイ、女性、12~14歳)

なんというか、居心地がいいんです。気まずいとか、そういうの全然感じない。将に、母は全てを話すのに適した人だと思うんです。(面接者:なら、スポーツや他のことをするのと、お母さんに会うのを両立させるのは、かなり簡単なことなんだね?)ええ。(ウィリアム、男性、12〜14歳)

 自分のスケジュールや、親と過ごす時間を考慮した取り組みについてコメントした若者もいました(母親:9%、父親:19%)。

うん、僕はとても良くできた時間割を持ってるから、学校から家に帰って、もし宿題があるなら宿題を片付けて、それから母と話をして、それから友達と話をするんだ。(レヴィ、男性、12~14歳)

 母親や父親に会うのが難しい、あるいはとても難しいと感じていた子どもや若者が、そう感じた理由は、近所に住んでいるか否かの問題から、人間関係やスケジュールの問題まで様々でした。父親と会うのが難しいと回答した33%の若い研究参加者、母親と会うのが難しいと回答した1人の研究参加者は、親が遠方に住んでいたり、会いに行くには移動が不便(例えば、学校のある日の前の晩に移動する)であることが主な要因でした。

父とは週末に会うだけです。というのは、父はもう遠くに住んでいませんが、そこに行くのが難しいんです。というのも、まあ、放課後に出発して、同じ日に家に帰ってくるのは、難しすぎるからね。(アンドリュー、男性、12~14歳)

 父親と会うのが難しいと感じている若い研究参加者の4分の1強(28%)は、子どもや若者の訪問スケジュールが障害となっており、課外活動の時間を確保するのに苦労しているようです。

父はあまりここに来ないから、通常私がスケジュールを変更せざるを得ないんです・・・父と話しをするために。(リーバイ、男性、12~14歳)

難しいけど、そうね、ちょっとでも時間を作るようにしてるの。例えば、友達の家に行くとき、「送って行ってくれる?」といって、20分くらい父と一緒にいられるようにします。(フィービー、女性、15歳以上)

 また、父親が忙しすぎる、あるいは、父親が時間に対し柔軟な対応をする気がないことを、父親に会うのが難しい理由として挙げた者もいました(17%)。

父に会おうとする気持ちが足りないので、凄く難しいんです。そうね、例えば、父と計画を立て始めるとするでしょ、そうすると父は「ああ、わかった」って言うんです。でも、そのうち、「ああ、やっぱり無理だ」とか「また今度にしようか」ってなるんですよ。[そうでなかったら]時間の都合がつかなくなるんです。(アラナ、女性、12~14歳)

 最後に、子どもや若者の22%が、父親に会うのが難しいと感じる背景には人間関係の問題があると述べています。

 子どもや若者に、それぞれの親と過ごす時間が適切であったかどうかを尋ねました。研究に参加した子どもや若者の4分の3(75%)が母親と過ごす時間は「ほぼ適切」であると感じ、彼らの46%が父親と過ごす時間は「ほぼ適切」であると感じていました(表2.13)。子どもや若者の3分の1強が、父親と過ごす時間が「十分ではない」または「全く足りない」と回答しました(各々21%と13%)。また、母親と過ごす時間が長すぎると感じている若い研究参加者は約15%、父親と過ごす時間が長すぎると感じている若者は約8%でした。

 子どもや若者に、自分たちに影響を与える事柄について、家族の中でどのように決定されてきたかについて質問しました。大多数の子どもや若者は、親と話し合い、意思決定のプロセスに参加させてもらっていると答えました(表2.14)。16%が、親が一緒に意思決定をしていると答えました。約5分の1が、両親のどちらかが殆どの決定をする傾向があると答え(18%が母親、3%が父親と報告しました)、更に8%の若い研究参加者が自分自身で殆どの決定をしていると答えました。

 研究に参加した親に、もう一方の親との接触を続けることで、自分自身や子どもに心配があるかどうかを尋ねたところ、心配ないが39%、子どものことだけ心配していると回答した親が26%、更に自分自身と子どもの両方が心配だと答えた親が20%いました(表2.15)。これらの懸念が何に関するものかを尋ねたところ、「精神的虐待や怒りの問題」が最も多く(64%)、次いで「一方の親のメンタルヘルス問題」(61%)、「暴力や危険行為」(32%)、「その他」(29%)、「アルコールや薬物依存問題」(21%)でした。

2.3  子育てと経済的な取決め

 このセクションでは、研究に参加した各子どもや若者の現在の子育ての取決めについて検討します。ここに示したデータは、研究に参加した子どもや若者による、現在の子育ての取決めやそれぞれの親との接触頻度に関する報告に基づいて算出したものです。表2.16は、この研究に参加した子どもや若者のうち、75%が主に母親と暮らしていると報告し、12%が主に父親と暮らしていると報告し、更に13%がそれぞれの親とほぼ同じ時間を過ごしたことを示しています。次に、子どもや若者に、2週間のうち、それぞれの親の家に何泊しているかを尋ねました²²。子どもや若者が一方の親の家に宿泊していなかった場合は、日中のみの接触として記録しました。この表から、両方の親と同程度の時間ともに暮らしていると答えた子どもや若者は13%に過ぎませんが、「共同養育」の取決めで暮らす(35~65%の夜をそれぞれの親と過ごす)割合は26%であることがわかります。研究に参加した子どもや若者の3分の2弱が「大部分が母親」の養育の取決めで暮らしており(64%)、「大部分が父親」の養育の取決めで生活している子どもや若者は10%でした。

 上記のように、子どもや若者に、それぞれの親と過ごす時間が「全然足りない」、「十分ではない」、「ちょうどよい」、「少し多い」、「かなり多い」のどれに該当するかを尋ねました。養育時間の取決めごとの回答を調べると、殆どまたは全ての夜を母親と一緒に暮らす子どもや若者の85%が、それが「ちょうどよい」と感じ、更に13%が「多すぎる」と報告し、1人の研究参加者が「十分ではない」と報告しました(表2.17)。また、「共同養育」をしている16人の子どもや若者のうち、半数強(n=9)が母親と過ごす時間を「ちょどよい」と感じており、父親と殆どまたは全ての時間を一緒に過ごしている5人の子どもや若者のうち4人が母親と過ごす時間を「ちょうどよい」と感じていました。研究参加者の1名は、母親との接触がないため無回答でした。

 父親と一緒に過ごす時間について考えると、「大部分が母親」の養育時間の取決めで暮らしている子どもや若者の半数弱は、それが「ちょうどよい」(46%、n=15)と感じており、更に45%が父親と過ごす時間がそれでは「足りない」、そして9%(n=3)が「多すぎる」と報告しました(表2.18)。「共同養育」の取決めで暮らしている子どもや若者の場合、47%(n=7)が父親と過ごす時間は「ちょうどよい」と感じ、40%(n=6)は「十分ではない」と感じ、13%(n=2)は「多すぎる」と感じていました。「大部分が父親」の養育時間の取決めで暮らしている子どもや若者は、6人全員が「ちょうどよい」と感じていました。7人の子どもが、父親との接触がないため、回答を避けました。

 研究に参加した子どもと若者には、それぞれの親と過ごした宿泊日数だけでなく、他の種類の両方の親との接触についても尋ねました。表2.19は、子どもや若者が、一緒に過ごす宿泊数数が少ない方の親(または、均等な養育時間の場合は、調査に参加していなかった方の親)と、日中だけの接触(日中は一緒に過ごすが宿泊はしない)の頻度を示したものです。このセクションでは、簡潔にするために、この親を「別居親」と呼ぶことにします。
 研究参加者の30%が、別居親とは宿泊のみで、日中だけ一緒に過ごすことはないとのことでした。次に多かった取決めは、週に1回以上、日中に別居親と会うこと(21%)で、更に21%は日中も夜間も別居親と会わないというものでした。

 次に、別居親と電話、SMS、電子メールなど、非対面での接触をどのくらいの頻度で行っているか、子どもや若者に尋ねました。研究に参加した子どもや若者の大半(63%)は、少なくとも週に1回、別居親と接触しており、3分の1(34%)は週に数回接触していると答えました(表2.20)。また、9%(n=5)が月に1回以上接触していましたが、研究参加者の残りの9%は6ヵ月に1回以下しか接触していないと回答しました。また、研究に参加した子どもや若者の5分の1は、別居親との接触がありませんでした。

 非対面での接触で最も多かったのは、電話、SMSやメッセージングアプリを使ったメッセージ送信の2つでした。表2.21によると、電話連絡を指定した研究参加者のうち、大多数が少なくとも週に1回は電話連絡をしており(81%)、半数以上が週に数回、更に28%が週に1回は別居親に連絡を取っていました。

 別居親との連絡方法として、SMSや携帯のメッセージングアプリを指定しているのは16人で、これらの子どもや若者のうち1人を除いては、少なくとも週に1回は連絡を取っていました(表2.22)。

 両方の親と接触した子どもや若者に、通常、両親の監護交代をどこで(またはどのように)行っているかを尋ねました。最も一般的なのは、親や他の親戚が子どもや若者を車に乗せ2つの家の間を車で送り迎えする(38%)か、学校(21%)または各々の家の間の別の場所(15%)で交代します(表2.23)。研究参加者の更に17%は、公共交通機関や、非常に少数の事例では自家用車で自宅間を移動するという独自の方法を見つけました。研究参加者の10%は、レストランや公園などの公共の場所で交代を行い、別の6%は子どもコンタクトサービスで行い、2人の研究参加者は、特に決まった場所で交代する取決めをしていませんでした。

2.4 家族法制度サービスとの関わり方

 この最後のセクションでは、別離中および別離後の研究に参加した家族の家族法制度サービスとの関わりを検証します。子どもや若者に、親が別離中や別離後に、自分たちを助けるために何らかのサービスを利用したかどうかを尋ねました。親がどのようなサービスを利用していたか、幾つか例を挙げてもらいましたが、この質問の目的は、若者たちがサービスの利用について、できるだけ無意識に覚えていることを測ることでした。子どもや若者が挙げた例は、次のようなものでした。助言を与えたりメディエーションを支援する弁護士、カウンセリングやメディエーションを行う家族関係サービス、家族報告書作成者、家庭裁判所でのヒアリング。
 表2.24は、親が特定のサービスを利用したことを記憶している子どもや若者の全サンプルの比率を示しています。当然のことながら、より一般的に言及されているサービスは事例集例に含まれているもので、研究に参加した子どもや若者の61%が、両親が弁護士と接触したことを思い出し、48%が裁判所の関与を思い出しました。更に34%の子どもや若者が家族コンサルタントや家族報告書作成者が関与したことを挙げ、23%がICL(子どもの独立弁護士)を挙げました。第4章で述べるように、子どもや若者は、自分たちが記憶している裁判関連の専門家が家族報告書作成者なのかICLなのか混乱することがありましたが、できる限り(慎重に探りを入れ、時には親との面接と照合しながら)適切にコード化しました。

 研究に参加した子どもや若者の4人に1人強が、親がカウンセリングを受けたことを思い出し(28%)、5人に1人がメディエーションに参加したことを思い出しました(20%)(表2.24)。また、親が自分や家族のために(人間関係のカウンセリングとは対照をなす)カウンセリングを利用したと回答した子どもや若者もいました(18%)。少数の参加者は、子どもコンタクトサービスや警察が関与していたと述べました。
 研究に参加した子どもや若者が思い出したサービス1つ1つに対して、そのサービスに満足できたかどうか、彼らに尋ねました。児童心理士やカウンセラーを除けば、子どもや若者が直接接触した専門家は、家族報告書作成者(思い出した者の95%、研究参加者の20名)、ICL(思い出した者の79%、研究参加者の11名)、カウンセラー(思い出した人の65%、研究参加者の11名)でした。親が裁判所を利用したことを記憶している研究参加者のうち、裁判所職員と面会したと回答したのは10%(n=3)だけでした。同様に、親が弁護士に依頼したと回答した子どもや若者のうち、弁護士に会ったと回答したのは14%(n=5)だけでした。
 また、別離中と別離後の家族法サービスの利用状況をより正確に把握するために、別離中と別離後にどの家族法サービスを利用したかを親に尋ねました。表2.25によると、1人を除く全ての親が、子育てに関する取決めをまとめるために少なくとも1つのサービスを利用し、その数は平均で8つでした。ほぼ全ての研究に参加した親が、弁護士や法的サービス(96%)、人間関係カウンセリング、メディエーション、家事紛争解決(FDR)(94%)を利用したことがありました。研究に参加した親のうち、83%が裁判所と接触しており、60%が家族コンサルタントや家族報告書作成者と接触し、36%がICLを任命されていました。また、大多数の親が、別離中の子ども支援するために、私的カウンセラーや心理学者に連絡を取ったと述べていました(72%)。研究に参加している親のサンプルのほぼ半数(47%)が、別離中または別離後に家庭内暴力サービスに連絡しており、更に13%が警察に連絡していました。
 表2.25に示した子どもや若者のデータは、親が利用したサービスごとに、親がサービスを利用したことを思い出した子どもの割合を示しています。「子どもの想起」データのサンプルは、各サービスにアクセスした親の数に基づいています(子どもや若者の完全なサンプルではありません)。親がサービスを利用したことを報告していないが、子どもがサービスを利用した場合、その分は含まれていません。例えば、弁護士に連絡した96%の親のうち、63%の子どもが弁護士への連絡を覚えていました。カウンセリング、FDR、メディエーションを利用した親の94%のうち、44%の子どもがそのことを記憶していました。
 親が裁判所と関わったと回答した場合(83%)、その親の子どもは半数強がそのことを記憶していて(57%)、親が家族コンサルタントや家族報告書作成者を利用した子どもや若者の半数強がそのことを記憶していました(57%)。ICLが任命されたと回答し36%の親(n=17)のうち、半数以下の子どもはそのことを記憶していました(46%)。別離後にドメスティックバイオレンス・サービスへ連絡した親の47%、別離中に警察に連絡した親の13%(n=6)では、子どもは誰もそのことを認知していませんでした。

 また、親に、別離後の子育てに関する取決めを最終的に決定するまでの主な経路についても質問しました。研究に参加した親の大半は、主に裁判所を通して取決めを行ったと回答し(62%)、さらに21%がカウンセリング、FDR、メディエーションを主な経路として挙げ、11%が弁護士を利用したと回答しました(表2.26)。少数の親が、幾つかのサービスとの接触はありましたが、子育ての取決めを最終的に決定する主な経路はもう一方の親との話し合いでしたと述べました(6%)。

 親に、主な経路が「子どものためになった」と思うか、「子どものニーズが十分に考慮された」と思うかを尋ねました。研究に参加した親の半数強は、経路が「子どものためになった」と思っておらず(51%)、子どものためになったと答えた親は44%でした(表2.27)。同様に、58%の親は、主な経路が子どものニーズを十分に考慮したものであったことに同意していませんでした(同意した親は38%)。

 表2.28は、親が子育ての取決めを最終的に決定するために利用したとされる主な経路別に、養育時間の取決めの配分を示したものです。この分析は、サンプルに含まれる子どもや若者の体験の背景を明らかにする上で重要であると思われますが、サンプル数が非常に少ないため、これらのデータを詳細に解釈することには注意が必要です。親が取決めを最終的に纏めるために裁判を利用した子どものうち、報告によれば、その半数強(51%)が、夜の100%を母親と過ごしていました。また、主に非法律専門家を利用して子育ての取決めを最終決定した13人の親のうち、7人の子どもが共有養育時間の取決めをしていました。

 最終的な決着に向けて裁判所と接触した親に、どの段階で事件が決着したかを尋ねました。36%の親は、最終審問の前に同意によって解決していました(表2.29)。更に33%の事件は判決によって解決され、18%の事件は命令の申請が行われ、もう一方の親がその命令に異議を唱えませんでした。最終的にどのように解決されたかを明確に判断できない親も少なからずいました(多くの場合、複数の命令があったため)。

2.5 まとめ

 本章では、研究に参加した子どもや若者の背景、現在のウェルビーイング、親子関係や養育時間などの家族のダイナミクスに関する情報を提供しました。提示された量的データは、親との面接や子どもや若者との面接の半構造化された「調査形式」の要素から引き出しました。子どもや若者の両親は平均7年間別離しており、大半の問題は2016年または2017年に決着していました。研究参加者の平均年齢は13歳で、男女の分布は比較的均等でした(それぞれ56%、44%)。大多数は自分の健康全般を非常に肯定的に評価していましたが、少数ながらメンタルヘルスが問題であると回答した者もいました。ウェルビーイングの他の側面についても、社会生活、自信、気質、生活全般を含め、概してかなり良好だと報告しました。
 参加サンプルのうち、大多数の子どもや若者は、「共同養育」の取決めをしている(26%)か、母親と殆どあるいは全ての夜を過ごす(64%)かのいずれかでした。大多数の子どもや若者は、それぞれの親と過ごす時間は「ちょうどよい」と感じていて、親を身近に感じていますが、父親よりも母親に対し顕著に高い親密感を抱いていました(それぞれ95%、57%)。子どもや若者がそれぞれの親に会いやすいかに関しては、居住地が近く、行き来の便が良いことは明らかにその因子であることは勿論ですが、親が子どもと有意義な時間を過ごそうとする努力や、子どもの都合に合わせて対処する姿勢を持つことが、会いやすいという評価をより高くする最も一般的な原因でした。逆に、親に会いやすいという評価が低い原因としては、親との距離が近い、親が子どものために十分な時間を割くことができない、あるいは割こうとしない、人間関係の緊張、子どもや若者自身の忙しいスケジュールなどが挙げられています。また、大多数の子どもや若者は、自分に直接影響を与える決定について、どちらかの親や両方の親から相談を受けていると回答していました。
 特に注目すべきことに、研究に参加した親の50%が、もう一方の親との継続的な接触に関連して、自分自身かつ/または子どもの安全性に懸念を抱いていることを、その懸念の背景として、最も一般的である精神的虐待、怒り、メンタルヘルスの問題を挙げて、報告しました。
 親は、子育ての取決めが最終的に決着するまでの間、平均8つのサービスと接触したと報告しました。この研究に参加した親の圧倒的多数が、弁護士(96%)、カウンセリング、FDR、メディエーション・サービス(94%)、裁判所(83%)と接触しました。研究に参加した子どもや若者にも、親がどのようなサービスに接触しているか尋ねたところ、最もよく言及したサービスは、弁護士(61%)と裁判所(48%)でした。親と子どものサービス利用に関する報告の整合性を調べたところ、親が離婚協議中に法律の専門家にアクセスした場合に、子どもや若者はサービスを最もよく思い出していました。つまり、親が弁護士、裁判所、家族コンサルタントや家族報告書作成者、ICLを利用した子どもや若者は、親が法律以外の専門家と接触したときの記憶と比較して、より高い割合でこの出来事を記憶していました。
 研究に参加した子どもを持つ親の大半は、子育ての取決めを最終的に決着するための主な経路は裁判所(62%)、次いでカウンセリング/FDR/メディエーション(21%)、弁護士(11%)と回答しました。裁判所を利用した親のうち、36%が純然たる同意で解決し、さらに3件に1件は審問後の判決(33%)、18%は審理中の同意で解決していました。親に、主な経路が「子どものためになった」と思うか、そのプロセス期間中に「子どものニーズが十分に考慮された」と思うか、という質問をしました。研究に参加した親の間では、これらの記述に対し賛否はかなり分かれ、「このプロセスは子どものためになった」に賛同した親は44%、「子どものニーズが十分に考慮された」に賛同した親は38%でした。このサンプルの親におけるこの2つの記述への賛同は、親を対象とした先行研究(カスピウ、カーソン、ダンスタン、デ・マイオら、2015年を参照)と比較して著しく低いものでした。しかし、先行研究とは募集方法が大きく異なり、サンプルを構成する親に法的経路を利用して問題を解決した親が先行研究より多いことからわかるように、直接比較できるように設計されていません。更に、この研究の焦点は、子どもや若者自身が報告した経験であるため、親が別離した後の子どもや若者のニーズを考える際に、子どもや若者にとって何がうまくいき、何がうまくいかないのか、彼らの実体験に基づいた物の見方を検証するまたとない機会を得ています。これからの章では、この点を具体的に取り上げていきます。

[訳者註]子どもの独立弁護士 ICL,Independent children’s lawyer
子どもの最善の利益のために中立・公正な立場で活動。家庭裁判所が一定の複雑な事案で裁量により選任する。資格は弁護士に限定される。子どもの法的な代理人ではなく、子どもの意向に従う責務はない。

[訳者註]オーストラリアの小学校・中学校・高校と義務教育
オーストラリアの初等・中等教育期間は、日本と同じく12年です。日本の6・3・3制とは異なり、オーストラリアでは、Prep Year(小学校準備)の後、Year 1(1年生)~Year12(12年生)までの学年制となっています。
初等教育は(通常Year 1~Year6 まで、南オーストラリア州やクイーンズランド州ではYear 1~Year 7まで)”Primary プライマリー” と呼ばれています。
中等教育はYear 7(南オーストラリア州やクイーンズランド州ではYear 8)~Year10までの”Junior Secondary ジュニアセカンダリー” と、Year 11~Year 12の”Senior Secondary シニアセカンダリー” に分かれています。
義務教育はオーストラリアでは学年でなく年齢で定められており、15才(タスマニアのみ16才)で義務教育を修了します。この年齢ですとYear 10(日本の高校1年)になりますが、大学に進学する学生はYear 11&12に進み、Year 12修了時に各州の統一卒業資格試験を受けることになります。

「オーストラリア留学EIGOmate AUS」サイトより抜粋

(了)


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