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【レポート】 データヘルスの時代のヘルスケア~医療×工学の面白さと可能性〜

2021年7月1日 (木) 、にいがたヘルスケアアカデミー主催の特別企画が開催されました。

テーマは「データヘルスの時代のヘルスケア~医療×工学の面白さと可能性〜」、ゲストには株式会社データックCEO 二宮英樹氏と、慶應義塾大学理工学研究科総合デザイン工学専攻修士1年の木戸祐輔氏をお迎えしました。

本記事では、イベント当日の様子を簡単にお伝えします。「デジタルヘルスの時代のデータサイエンティストの役割」「非医療者を含んだ多職種チームでのヘルスケアICT開発」「新潟の地域課題を解決できるプロダクト作り」等に関心のある方は必見です!

ゲスト紹介

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■ 二宮 英樹 氏
株式会社データックCEO/医師/データサイエンティスト

ラ・サール高校、東京大学医学部医学科卒業。脳神経外科を経て、株式会社メドレーにてオンライン病気事典及び遠隔診療に従事した。株式会社トライディアで、データサイエンティストとして企業向けデータ解析・AI開発に従事。2018年 株式会社データックを設立。医療データ解析をするなかで、医療データの収集体制づくりの大切さを痛感。医療データを収集しiPad問診システム、医療言語処理技術の開発を行っている。「医療4.0」では日本の医療革新に関わる医師30人に選出。


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■ 木戸 祐輔 氏
慶応義塾大学理工学研究科修士1年/医療用ロボットに関する研究を行う
1997年福岡県久留米市生まれ。米国のカリフォルニア大学サンタバーバラ校での派遣交換留学を経て、2021年に慶應義塾大学理工学部を卒業。慶應義塾大学野崎貴裕研究室にて神奈川歯科大学・慶應義塾大学医学部と共同で、歯科用インプラントドリルの制御の研究に従事。2020年度に「日本ロボット学会優秀学生賞」を受賞。文部科学省の「大学の世界展開力強化事業」である「JEMARO(Japan-EU高度ロボティクスマスタプログラム)」にて、2021年9月よりイタリアのジェノバ大学に留学予定。


イベントの流れ

1. 開会挨拶
2. ゲストトーク
 ▶︎ 二宮さん「データサイエンティストの視点からみる医療革新の可能性」
 ▶︎ 木戸さん「学生として取り組む、医療工学の魅力」
3. ゲストとアカデミースタッフの対談
4. 参加者の方とのQ&A


「データサイエンティストの視点からみる医療革新の可能性」二宮 英樹 氏

■ データックが目指す世界:
"リアルワールドデータの活用により適切な医療を広めていく"

二宮氏は脳外科医としての臨床経験から「医療のアンフェアを解消したい」という思いからデータサイエンスの世界に飛び込みました。その後株式会社データックを創業し、リアルワールドデータの活用により適切な医療を広めていくことを目指して日々活動しています。

リアルワールドデータとは、調剤レセプトデータや保険者データ、電子カルテデータなど、臨床現場で得られる診療行為医に基づく情報を集めた医療ビックデータのことです。リアルワールドデータが十分に活用されると、さまざまな可能性が拡がります。

① エビデンスプラクティスギャップの可視化
 (事例:骨粗鬆症患者で治療割合が低い)
② 前向き試験を実施しにくい状況でのエビデンス構築
 (対照群をRWDとする治療や観察研究など)
③ 安全性における活用性
 (より長期なフォローアップ、まれな有害事象でのフォローアップ等)
④ データに基づく判断
 (薬価の適切な決定、医療政策への貢献:COVID-19に関するRWDの調査)

リアルワールドデータを更に活用していくために、データックでは、データ解析とデータ作りに取り組んでいます。

■ 機能学習プロジェクトの現実
実は、ほとんどの機能学習プロジェクトはPoC(Proof of Concept:概念実証)で終わり、社会実装されていません。そのため、機能学習プロジェクトの社会実装についてナレッジを集積し、社会実装例を増やすことが求められています。

実システムに機能学習を組み込む課題としては、確率的な処理があるため自動テストがしにくいことや、長期運用しているとトレンドの変化などで入力の傾向が変化する事などが挙げられます。

それらを解決に導く対策としては、人手でゴールドスタンダードを用意して予測性能のモニタリングをしたり、予測モデルをモジュール化してアルゴリズムのA/Bテストが出来るようにする等があります。

■ 医療データに携わって感じたことと新たな挑戦

二宮氏が医療データの活用に携わってきて最も感じたことは、「適切なデータがほしい」ということでした。医療機関等が保有している既存のデータは解析をすることを目的に集積されたものばかりではないので、その活用にどうしても限界があります。そういった経験から「データ整備の大切さ」を痛感し、今、データックでは自分たちで医療データを作るプロジェクトを開始しています。「データづくりによって可能性が拓けること」を信じ、持続可能」なデータ作りに焦点をあて、多様な専門家の協働(臨床家、疫学者、医療機関、企業の協働)によりその実現に向けて、取り組みを進めています。


「学生として取り組む、医療工学の魅力」木戸 祐輔 氏

木戸氏は慶應義塾大学大学院にて『上顎臼歯部のインプラント手術における切削抵抗の変化に基づく、ドリルの貫通時自動停止制御』の研究をしています。研究チームは、木戸氏が所属している理工学研究科に加え、慶應義塾大学医学部、神奈川歯科大学と協働で実施しています。

■研究を通して感じた魅力
研究が社会の役に立つイメージが持て、やりがいを感じました。目的(医療課題)が明確だが、手段は自由(工学)といった点も魅力的です。また、医学の知見のみならず、機会や物資の援助が受けられたことも貴重な経験となります。純粋な工学技術に比べてプレイヤーが少ないため、差別化が図れます。

■苦労した点  
医学と工学の常識の相違には苦労しました。医学の基礎知識を学ぶだけではなく、工学の知見を噛み砕いて説明することも必要です。また、再現をとるのに初期から人体への実証実験はできないため、現実を模擬した語りで実験を行う必要があります。その他、臨床の先生方が忙しいため、診療や手術の合間を縫って連携をとる必要があるため苦労しました。

■多職種による協働研究に求められる能力 
推進力、傾聴力、工学の高い専門性、根気が必要と感じました。私自身も、これからさらに磨いていかなければならないと思っています。

実際に社会で活用される技術に興味のある人、チームワークを重んじる人、好奇心旺盛な人、腰を据えて取り組みたい人にはぜひ挑戦してもらいなと思います。すぐには結果が出ないため、長期プロジェクトに向いている方はマッチすると思います。

【対談】 
非医療者でも巻き込む時代!ヘルスケアICTを多職種チームで開発する面白さ:新潟ヘルスケアアカデミーの強みを探る!

ーー元々の専門とは違う領域でご活躍されていますが、新しいことをする ”面白さ"とは何でしょうか?

二宮さん:
私は学ぶことが好きなので、新しいことを吸収できる機会があるたびに面白さを感じています。もともと好奇心は旺盛で、いろんなことをやってきました。病院を出た後に関していえば、メディア運営や遠隔シェア、営業、開発といったことに挑戦しています。

色々やってきた中で、今の「データサイエンティスト」にたどり着きました。データとは非常に相性がよかったんですよね。 ”好き” と言うのも大事な要素かもしれません。


木戸さん:
医療行為を見つめる際に、私は患者・医師・工学部生の3つの視点を持っています。患者としての目線だけでは気づけなかったことに、医師や工学部生としての視点を持つことで気づくことができました。より解像度高く見えるようになったことがとても面白いですね。

例えば、医師と工学的な目線の違いとしては、医師は感覚的なスキルを大事にする属人的な面がある一方で、工学ではトルクとかスラスト力とか、より数値化したり再現性のあるものを作ったりすることがほとんどです。その視点の違いは、良いものを生み出す過程において必要だなと感じました。


ーー様々なバックグラウンドがある方と働くのはいかがですか?

二宮さん:
面白いですね。何か課題があったときに、自分の視点しかないとアプローチ方法も限られ壁にぶつかってしまいます。しかし、そういった時に違う視点から意見をもらえることで解決につながることがあります。

経営者としては、いろんな人のステークホルダーを考えながらバランスをとっていくことを大切にしています。

ーービジネスプランを考える際に生きる、工学の専門性とはどのようなものでしょうか?

木戸さん:
工学によって解決できることが増えると思います。幅広い知識を持っていることで、より多くの選択肢が提示できます。工学、ビジネス、医療、エンジニアなど、解釈方法がそれぞれ違っているところが面白いですね。掛け合わせる事で良いものができることもあります。

二宮さん:
選択肢が増えるのは事実としてあります。技術がわかっていないと、選択肢も考えることができません。医師だけの視点では、工学的なソリューションは思いつきにくいと思います。まずはコラボしていくことに価値があると思います。


ーー最後に一言、メッセージをお願いします!

木戸さん:
僕は医療工学という領域で今後もやっていきたいと思っています。現場の課題を深掘りしながら、一緒に頑張りましょう!


二宮さん:
私の反省も含めてですが、課題を明確にして、それが解決することで何が良くなるのか、どんな未来があるのか、その辺りをしっかりと考えていくことは大切だと思っています。継続できる形にすることも見据えて、取り組んでもらえたら良いかと思います。


ーー 医療×工学の面白さや今後の可能性について感じることの出来た、とても楽しい時間となりました。二宮さん、木戸さん、本日はありがとうございました!


にいがたヘルスケアアカデミー
受講生:新潟のヘルスケアをより良くしたい!と考えている県内外の方々
主催:ヘルスケアICT立県実現プロジェクト
運営:株式会社BSNアイネット・ハイズ株式会社
後援:新潟県
Twitter:アカデミーの活動や関連情報、新潟のヘルスケア情報や潜在的な課題などを発信しています。

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