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閃きは現場にあり!課題から考えるヘルスケアビジネス vol.1 <3/18フォーラム開催報告>

2021年3月18日(木)・19日(金)・20日(土)の3日間にわたり「にいがたヘルスケアベンチャーフォーラム  〜閃きは現場にあり!課題から考えるヘルスケアビジネス〜」がオンラインにて開催されました。

本フォーラムは、新潟ヘルスケアICT立県実現プロジェクトが主体となり、2021年4月から始動する「にいがたヘルスケアアカデミー」の開講を記念して行われました。

新潟で地域に寄り添い日々課題解決に取り組む医療者とヘルスケアICTソリューション開発の最前線ベンチャー企業経営者とのコラボレーション対談や、ヘルスケア分野に特化したベンチャーキャピタルの代表による講演、さらにはケースディスカッション形式のワークショップなど、面白い企画が盛り沢山だった3日間の様子を、全4回にわたってお届けします!

vol.1の本記事では、3月18日(木)に行われた「講演」や「対談」の様子を簡単にお伝えしていきます。(アーカイブ動画はこちら

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ゲスト紹介

◇ 佐藤賢治(さとう・けんじ)氏 / 佐渡総合病院 病院長
1986年 新潟大学医学部卒業、新潟大学外科教室入局
1995年 佐渡総合病院外科勤務
2001年 佐渡総合病院外科部長
2015年4月 京都大学大学院医学研究科非常勤講師     
            4月 佐渡総合病院副院長
2016年4月 佐渡総合病院病院長、現職   
            9月 総務省地域IoT実装推進タスクフォース構成員(終了)
2019年10月 日本農村医学会理事  
◇ 阿部吉倫(あべ・よしのり)氏 / Ubie株式会社 代表取締役
2015年 東京大学医学部医学科卒業
2017年5月 Ubie株式会社を共同創業
  医師の働き方改革を実現すべく、全国の医療機関向けにAIを使った問診システムの提供を始める
2019年12月 日本救急医学会救急AI研究活性化特別委員会委員
2020年 Forbes 30 Under 30 Asia Healthcare & Science 部門選出


モデレーター紹介

◇ 佐藤 創(さとう・はじめ)氏 / 株式会社メプラジャパン 代表取締役
株式会社メプラジャパン:世界中の人々に最善の医療を提供すべく、国内外の医療ヘルスケア分野での新規事業創出・グローバル展開等を支援している


講演 〜佐渡総合病院 病院長 佐藤賢治氏〜

佐藤氏には、「超高齢社会・佐渡における医療提供体制の課題と対策への模索」というテーマでご講演いただきました。

<佐渡の医療課題について>
佐渡における「少子高齢化・人口減少」と、それに伴う「生産年齢人口の減少」の問題はとても厳しい状況です。病院では収益性が大幅に減少し、設備や人事など全てにおいて投資が困難となります。ゆえに、これから腕を磨こうとする若者にとっては魅力のない病院に見えることも問題となっています。
このように、従来型では医療提供を維持できず、社会も医療も働き手を確保できないという現状にあります。

<7つの医療圏別の人口予測>

新潟県の7つの医療圏のうち、佐渡以外の全地域の高齢者は、2030年あたりをピークに減少していきますが、佐渡だけは既に全年齢層で減少が始まっています。他の地域の高齢化対策は、佐渡には適応できません。しかし、いずれはどの地域も佐渡と同じような経過をたどることが予想されるので、今、佐渡で有効な対策が講じられれば、新潟県ひいては全国で適応できると考えます。

<対策① 超高齢社会に対応した社会保障システムの構築>

今後、超高齢社会に対応した社会保障システムを築く上では「機能分担」と「機能分担を繋ぐ」仕組み作りが必要となります。現在、佐渡には、住民情報の共有として双方向性多施設連携システム「さどひまわりネット」があります。ここでは、病名・処方・検査結果・画像・一部の介護情報などが共有されています。島内の医療・介護・福祉事業の約6割が参加し、情報共有に同意する住民は人口の約3割です。佐渡で電子カルテがあるのは佐渡総合病院のみであるため、電子カルテシステムがない医療機関や施設にも対応した仕組み作りとなっています。

<対策② 超高齢社会に対応できる人材の輩出>

人材育成として「佐渡の学校化」に力を入れています。佐渡職種別標準研修プログラムといって、様々な職種の研修プログラムを作成しました。看護学校では、看護師を養成することを目的としたプログラム「3+3養成」も作成し運用しています。

<最後に>

「現場が困っている」と「現場が課題を認識している」というのは違います。課題を課題と認識するには、困っているという意識がしっかりとあって、そして、視点を偶然でも気づくチャンスがあることが大事になります。


講演 〜Ubie株式会社 代表取締役 阿部吉倫氏〜

阿部氏には、「AI問診による医師等の働き方改革とCOVID-19対策」というテーマで、現場の課題をどのようにして技術の力で解決するのかご講演いただきました。

<Ubie 株式会社について>
Ubieのミッションは、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」ことです。2017年に創業し、2021年1月現在、メンバーは105名います。

<Ubieが解決する課題>

「疲弊する医療現場」と「立ち行かない病院経営」をなんとかしたいという思いが原点です。医師の燃え尽き症候群の割合は42.5%、医師の労働時間上限は過労死ラインの2倍にのぼる1,860時間、1999〜2019年で閉院した病院は1500病院など、現場のスタッフや雇用を守る病院経営どちらとも限界であると言えます。

<課題の分析>

海外の研究では、医師の外来診療が1時間増えると電子カルテ記載など事務作業が2時間増えると言われ、医師は医師本来の診療業務意外で忙殺されている現状が指摘されています。
また、日本における医師の時間外労働の主な理由は、
・1位:緊急対応(64.8%)
・2位:外来・手術の延長(57.7%)
・3位:カルテ作成 (55.6%)
と言われており、2位と3位はテクノロジーによる効率化の余地があると考えられます。

<AI問診ユビーの特徴>

AI問診ユビーでは、従来、医師や看護師が付きっきりで行っていた問診を事前に患者のみで行うことができ、診察までに9割の問診が終了している状態を可能にしました。患者ごとに問診事項が最適化され、高齢者でも安心して使えるよう、デザインは銀行ATMやカラオケの電子リモコンを参考に開発・設計しました。70~80代の患者さんの約9割がスタッフのサポートなく自力で最後まで入力できています。さらに、いつでもどこでも来院前問診が可能であるため、院内滞在時間を削減できたという結果も出てきています。

<AI問診ユビー 医師画面の特徴>

問診内容を自動で「医師語」に翻訳することができます。また、問診の漏れを防ぐため「病名辞書」の機能も追加しました。さらには、covid-19院内感染拡大を防止するため、コロナ関連症状のある患者はアラートにて表示される機能もあります。 

<コロナ対策>
来院前問診、クイックトリアージ問診、症状アラート/カルテ入力支援の機能により、患者・医療従事者のための安心外来「covid-19トリアージ支援」を提供しています。


対談

対談は3つのテーマで進められていきました。

① 経営方針について

佐藤氏からは佐渡総合病院の経営方針について、阿部氏からは、医療機関の経営課題とUbie AI問診システムの開発経緯や思いをお話しいただきました。

▼ 佐藤氏:
佐渡では、島内全体の施設・職種・行政が一緒になって、今後の体制について協議が進められています。人を呼び込み、生き残るためには「話し合う」ことが必要であり、課題といえます。超高齢化社会・佐渡で課題に取り組む、とういう事を逆にメリットとして、リーダーシップを持って進んでいくことが必要です。


阿部氏:
私は現場で医師として働く中で、患者さんの話を聞きながらカルテを書かないと業務が終わらないなど、事務作業にあまりにもリソースが割かれていることにカルチャーショックを受けました。病院外には業務効率化のサービスがたくさんあるけれど、病院には少ないため、そこをなんとか技術の力で変えたいと思いました。現場の負担にならないよう、標準的な業務プロセスに合わせて誰でも簡単に使えるように、シンプルな設計にしました。

② 業務改革のポイント

佐藤氏には、佐渡総合病院におけるの業務課題と改革のポイントについて、阿部氏には、佐渡総合病院でみられたような業務改革の効果を出すためのシステム導入の課題・プロセス・工夫についてお話しいただきました。

佐藤氏:
AI問診ユビーを導入した時、現場は課題として認識してはいないけれどとても困っている状況でした。現場の看護師が、非常に情熱を持って進めてくれました。現場がその気になっていないのに進めていくことは不可能です。「困っている」ということを自覚してもらうことが大事で、そこに気づける人が必要だと思いました。

阿部氏:
現場には、業務の根幹となる部分と事務作業などの部分があるかと思いますが、ユビーでは、価値のある時間にリソースをいかに使えるかを重視しています。
今後は、医療・介護連携などの分野で活躍の場を広げていきたいと思っています。


③ 医療者の働きがい向上、地域の魅力アップについて

佐藤氏に、佐渡総合病院における働きがいの向上や地域で働く魅力アップの取り組みについてお話しいただきました。

佐藤氏:
佐渡の魅力を伝えていくために様々な取り組みを行っていますが、相手に伝わるかは分かりません。しかし、一生懸命伝えないと人には伝わらないと思っています。地域として若い人を呼び込むためには、我々が作った仕組みを、我々が使ってそれを魅力に変えることが必要です。一人一人が、次の人に繋ぐということを意識して活動していけるといいですね。


続くVol.2では、3月19日(金)に行われた講演や対談の様子をお届けします!

次回のゲストは、株式会社 Kids Public代表 橋本直也氏と、Connected Industries株式会社代表 園田正樹氏です。


参加者の声

(当日参加者:115名)

▼ 参加者の声
・ヘルスケアのベンチャー企業がこれほど盛り上がっているとは知りませんでした。私は佐渡市の課題について興味があり参加しました。佐渡の高齢化と人材不足の課題については佐渡汽船でつながっている新潟市の医療・ 介護の分野で協力できることは沢山あると感じています。

・このコロナ過においてより一層医療従事者の方々に大変お世話になっております。厳しい環境に加えて大きな課題を改めて認識致しました。課題をまずは認識すること、そしてその課題に対して具体的なアクションを行っていくことの重要な思いを強く感じました。

・私も課題に対して、それを放置するのではなく、解決に向けた 具体的なアクションを起こしていきたいと強く感じました。ありがとうございました。

* 全体的な満足度や参加者属性等のアンケート結果は、vol.4にてご紹介致します。

最後に

にいがたヘルスケアアカデミーでは、現在、参加者を募集中です!

▼ お申込みはこちら 
https://www.bsnnet.co.jp/h_academy/application/

第一次申し込み締め切り:3月31日 23時59分
応募資格:新潟のヘルスケアをより良くしたい!と考えている県内外の全ての皆様
参加費:無料
主催:ヘルスケアICT立県実現プロジェクト
運営:株式会社BSNアイネット・ハイズ株式会社
後援:新潟県

皆様からのご応募、お待ちしております!

Twitter:アカデミーの活動や関連情報、新潟のヘルスケア情報や潜在的な課題などを発信しています。

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