見出し画像

閃きは現場にあり!課題から考えるヘルスケアビジネス vol.2 <3/19フォーラム開催報告>

2021年3月18日(木)・19日(金)・20日(土)の3日間にわたり「にいがたヘルスケアベンチャーフォーラム  〜閃きは現場にあり!課題から考えるヘルスケアビジネス〜」がオンラインにて開催されました。

vol.1に続く本記事では、3月19日(金)に行われた「講演」や「対談」の様子を簡単にお伝えしていきます。(当日のアーカイブ動画はこちら

ヘルスケアやICT、起業に興味のある方、そして何より新潟をよくしたいという熱い志を持った方は必見です!

画像1


ゲスト紹介

◇ 橋本直也(はしもと・なおや)氏 / 株式会社 Kids Public 代表取締役
2009年 日本大学医学部卒業
2011年 聖路加国際病院にて初期研修修了
2014年 国立成育医療研究センターにて小児科研修修了
2016年 東京大学大学院  公共健康医学専攻修士課程卒業
2015年- 都内クリニック勤務、株式会社Kids Public設立
2020年- 成育医療等協議会委員、健やか親子21推進協議会幹事
◇ 園田正樹(そのだ・まさき)氏 / Connected Industries株式会社 代表取締役
新潟県糸魚川市出身 佐賀大学医学部卒業 
産婦人科医(東京大学医学部 産婦人科教室)
2017年 Connected Industries株式会社を創業
2020年4月 病児保育支援システム「あずかるこちゃん」をリリース
2021年2月 横須賀市に導入、東京大学大学院との共同研究を実施中
成育医療等協議会委員、健やか親子21推進協議会幹事に選出


講演 〜株式会社Kids Public 代表取締役 橋本直也氏

橋本氏には、産婦人科・小児科オンラインの解決したい課題や、それに対するサービス内容についてお話いただきました。

<きっかけは現場の課題感>
医師として現場で働く中、外来で虐待を受けているお子さんを診る機会がありました。その子は、大腿骨を骨折していました。目の前の子の骨折を治すことも当然大事ですが、「そうならないように何かできなかったのか」という歯がゆさを強く感じました。それと同時に、お母さんが孤立してしまっていることの方にも問題意識を感じました。病院で待っているだけでなく、掌にあるスマートフォンに接点をもっていくことで、問題の上流にアクセスできるのではないかと考えました。

<コロナ禍により増す重要性>

2020年の初頭から日本でも感染が拡大しているCOVID-19。小児・産婦人科領域では、虐待や産後うつの増加が指摘され、家自体が安全な場所ではなくなったことが示唆されました。SOSを出せる場所が対面前提では、なかなか厳しい状況と言えます。ICTを活用して、掌に接点を持つという重要性がより強調されました。

<10代の子ども達への活用>
10代の子ども達におけるメンタルヘルス対策は緊要の課題だと考えます。成人の精神疾患の75%は思春期に発症します。いじめや不登校は毎年増加し、10代の死因の第一位は自殺と言われています。そのような子が、自分たちでアクセスしやすい新しい環境を掌のスマホで展開していくことは、大切なことであると考えます。

<産婦人科オンライン / 小児科オンラインのサービス概要>

「産婦人科オンライン」および「小児科オンライン」は、不安や孤立をオンラインでサポートしていく事業です。サービスは主に5つあります。

いつでも相談 : 毎日24時間質問を受け付け、24時間以内に医師・助産師より回答送付されるサービス
夜間相談:平日18時〜22時に1枠10分以内の予約制で、メッセージチャットや通話に対応するサービス
医療記事配信:医師や助産師が執筆した記事が読めるサービス
④ オンラインLINE配信
産後うつフォロー:10人~7人に1人いると言われている産後うつに対するサービス。妊産婦の亡くなる原因の第1位は自殺であり、その背景には産後うつがあると言われています。産後1年まで定期的にスクリーニングを実施し、ハイリスク者はより手厚く頼ってもらえるような仕組みづくりにしています。

<オンライン相談のメリット>

現代のお母さんお父さんは、日常的にLINEで会話をしている方が多く、電話をする機会も減ってきているという現状があります。そのため、チャットという形をとることで利用者のニーズとマッチさせることができます。実際に利用者様からは、「緊張して聞き忘れた、聞きたいことを言えなかったということが対面の診療より軽減され、納得できるまで聞けてよかった」という声が上がっています。対面だけだと引き出せないことが、オンラインだと引き出せる可能性があります。

<最後に>

産婦人科・小児科オンラインは、対面を前提として行われてきた産後サポートをデジタルトランスフォーメーションし、with・postコロナ時代でも安心して妊娠・出産・子育てを迎えることができる環境整備に貢献していきます。今後の日本における母子保健が向かうべき姿を、全国に提唱していきたいと考えています。


講演 〜Connected Industries株式会社 代表取締役 園田正樹氏〜

園田氏には、病児保育支援システム「あずかるこちゃん」で解決したい課題やサービス内容についてお話いただきました。

<Connected Industries 株式会社>
vision:安心して生み育てられる社会をつくる
mission:育児に関わる全ての人を笑顔にする

<現場の課題>

産婦人科領域、特にお産の前後に起こる問題として、これまで1番問題視されていたのは「出血」です。しかし現在では、輸血の流通や出血の対応が仕組み化したことで、かなり改善してきました。残った課題は「産後うつ」と「虐待」です。私はこの問題を解決したいと立ち上がりました。

<課題のブラッシュアップ>

多くの現場に足を運び、たくさんのお母さん達から話を聞きました。その中で、「子どもの病気」で仕事を休むことが増え、結果的に仕事を辞めざるを得ない状況があるという事を知りました。話を聞いていくと、職場には「離職」「キャリア支援の失敗」「生産性の低下」など様々なリスクがあることが分かりました。みんな悪くないのに、みんながしんどい状況。これをなんとかしたいと強く感じ、「病児保育施設」を使いやすく整備する事が必要だと考えました。
(*病児=軽症の子ども、保育園では預かってもらえない)

<病児保育の現状>
病児保育の利用率は30%程度に留まっています。事前の登録が必要で、いざ子どもが発症したら、予約・診察・入室・保育・決済という過程を全てアナログ(紙や電話)で行わなければない現状があり、使いづらさが原因と考えられました。

<「あずかるこちゃん」で解決した課題>

・初回時の登録を紙書類からオンライン化へ
・施設を探す時の空き状況の把握ができるように、マップ検索機能で空き状況を見える化
・電話での予約を、LINEやスマホで予約&キャンセルできるように
・毎回の紙書類による問診票を、オンライン化へ(これから)

<今後>
全国の病児保育が繋がって、さらには保育園や幼稚園と繋がることで、日中子どもが発熱して親が呼ばれるという現状を変えていきたいです。例えば、病児保育施設のスタッフが迎えに行って夕方まで一時保育をする、とう仕組みを市区町村や企業と連携してやりたいと考えています。現場は届けたい相手と必ずしも繋がれていないので、その課題を間に入って解決する必要があります。
私は、「子どもが真ん中にいる社会」を実現したいと思っています。そのために、父親や母親が社会からきちんと支援を受けられるように整備する必要があります。


対談

対談は3つのテーマで進められていきました。

① 起業の経緯

▼ 橋本氏:
当時の自分に「やらない」という選択肢はありませんでした。私の今やっていることは、小児医療の一つのカタチだと思っています。小児医療の中に、臨床もあれば起業もあり、私は小児科医として一本の道を歩いていることに変わりはないと思っています。なぜ起業だったのかというと、病院で待っているだけでは何ともならない事を解決したかったからです。既存のやり方に拘らず、新しい道を開拓する必要があったんです。

▼ 園田氏:
大学院の時に、社会に対してできることないかなと考え、いろんな現場に足を運びました。そこで出会った病児保育の現場の課題に、怒りに近いような感覚を覚えたんです。誰かが変えなきゃ変わらない、だったら自分がやろう、と思いました。大学院を休学してビジネスに集中する決意をする前、実は指導教員に止めらました。それで一旦立ち止まって考えてみたのですが、やはり自分には起業という選択肢しかありませんでした。起業したいと悩んでいる方には、ぜひ「本当に起業する必要があるのか?臨床でできないか?」という事をしっかりと考えていただきたいです。また、リスクを定量的に書き出し不安の棚卸しをすることは、自身を客観視することが出来る一つの手段かもしれません。

② 臨床経験から気づいた課題

▼ 橋本氏:
課題は、日常外来をやっている中で感じていたので明確でした。子どものいる友達からときできSNSを通じて相談があり、答えることができていました。その経験もあり、一歩踏み出す決意ができました。いざ事業を始めた時、課題は明確でしたが解決方法としては不十分なところがありました。例えば、最初はスカイプを使って始めたのですが、あまり使ってもらえませんでした。保護者の方でスマホにスカイプを入れている方が少なかったからです。そこで初めてツールが適切でないと気づきLINEのチャットに切り替えたところ、利用する人が増えました。

▼ 園田氏:
私は、当事者の方々に話を聞くことがとても大事だと思います。どこに解決する課題があるか、自ら全国70施設以上を訪問しました。
病児保育でいうと、こんなにいい場所があるのにほとんど認知されていなかったため、これを世に広めたい、と思いました。自分がそこを担うことでさらに価値が上がるとも思いました。

③ 課題解決に資するソリューション開発のポイント

▼ 橋本氏:
「このプロダクトは本当に人を健康にしているのか?」という問いは大事です。一歩間違えると、ヘルスケア分野は、不安のある方をさらに悩ませてしまう可能性があるからです。そうなると全く意味がありません。さらに、「国民が健康になる」という前提のもと、自分のプロダクトが社会に与える影響についてしっかりと評価し続ける事も大事です。

▼ 園田氏:
「誰のために」「なぜするのか」など、設計をきちんと突き詰めていく事は大事です。課題が明確だけど今何をやっていいか分からない人は、エンジニアリングを学ぶと良いなと僕は思います。一緒にやることになった際も、他領域に入っていくことは必要だと思います。すぐにはできないけど、できるように前進していくことは大事なことです。


続くVol.3では、3月21日(金)に行われた講演や対談の様子をお届けします!

次回のゲストは、燕労災病院 遠藤直人氏と、株式会社Rehab for Japan代表 大久保 亮氏です。



参加者の声

(当日参加者:77名)

▼ 参加者の声
・ヘルスケア分野のDX活用について考えるきっかけとなりました。

・橋本先生・園田先生の御二方とも、ユーザーからのネガティブな意見を積極的に活用して、サービスの改善に役立 てているという話は印象的でした。裏を返せば 、提供し始めた時は100点のサービスではなかったということだと思います。 何点のものでもいいからとりあえず世に出してみて、そこから完璧に近づけていく姿勢を私も見習いたいです。

* 全体的な満足度や参加者属性等のアンケート結果は、vol.4にてご紹介致します。


最後に

にいがたヘルスケアアカデミーでは、現在、参加者を募集中です!

▼ お申込みはこちら 
https://www.bsnnet.co.jp/h_academy/application/

第一次申し込み締め切り:3月31日 23時59分
応募資格:新潟のヘルスケアをより良くしたい!と考えている県内外の全ての皆様
参加費:無料
主催:ヘルスケアICT立県実現プロジェクト
運営:株式会社BSNアイネット・ハイズ株式会社
後援:新潟県

皆様からのご応募、お待ちしております!


Twitter:アカデミーの活動や関連情報、新潟のヘルスケア情報や潜在的な課題などを発信しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?