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立ち止まってなどいるものか

元々は、日本マイクロソフト品川本社セミナールームでの開催を予定していた「東京学芸大学附属小金井小学校 ICT×インクルーシブ教育 成果報告会」、コロナウィルスの影響で一旦は中止としていましたが、昨日、オンラインでの配信という形で開催しました。その顛末を書いておきたいと思います。

オンサイトからオンラインへ

品川での開催中止を決めたのは18日(火)でした。その前日にお茶の水女子大学附属小学校が研究発表会を中止したこともあり、「大きなイベントを開いて、そこに子どもたちを呼んで人を集めて、というわけにはいかないだろう」という機運が急速に高まったのです。その時点であれば、もしかしたらまだゴリ押しできたかもしれませんが、「児童の健康に危険が及ぶかもしれないイベントを開くなんてあり得ない」と考えて中止を決断したわけです。イベント開催の10日前でした。

中止が決定したその瞬間に「オンラインでの開催を模索しよう」と考えましたが、正直その時点ではノーアイディア。そこから準備を始めてのオンラインイベントというのは、なかなかギリギリなタイミングだったと思います。

まず配信そのものに関してはマイクロソフトの頼れる皆さんにお任せすることにしました。我々の中止そこまで我々がやっていたら、絶対中身のことを考える時間がなくなります。餅は餅屋。よろしくお願いします、という体で。

しかし、マイクロソフトの皆さんにとってもTeamsでの配信、なおかつ我々が考えていた「スタジオからの中継の合間にムービーを挟む」という形式はチャレンジング。都合3回も本校にお越しいただいて準備をしていただくことになりました。

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コンテンツ、どうしよう?

さて、中身です。公開授業はできなくなったので、その後に行うはずだった協議会ももちろん無理。となると、午後のトークセッションが中心にならざるを得ません。とは言え、講師の先生に遠くからお越しいただくのは時期的に厳しいわけですし、だいたいオンラインであまり長い講演を流しても見ていただけるとは思えません。

であれば、基本は聞きやすい「対談」とし、これを前撮りして、そこにスライド等を挟み込んだムービーコンテンツを作り、スタジオからの生中継と組み合わせようということになりました。当初、我々が考えたコンテンツは以下の5つでした。

MECトレーニングコース予告
読み書きアセスメント​
国語における困りごとを抱えた児童への支援
理科における困りごとを抱えた児童への支援​
藤野先生と迎先生

このうち、「MECトレーニングコース予告」は、既に完成しているムービーを編集すればいいのですぐにできそう、「読み書きアセスメント」は、昨年暮れのATACで作ったスライドを使えるのでそんなに大変ではない、という読みでした。「理科」はスーパーバイザーの寺本先生がいらっしゃる予定があったので、そこで撮ってしまおうと決断。藤野先生は、迎先生の出勤日の空いている時間に本校に寄っていただければ撮れるだろうと考えました。

問題は「国語における困りごとを抱えた児童への支援」。元々、公開授業で見せる予定だったので、プレゼンする予定も気持ちもまったくありませんでした。しかし、佐藤さんから「鈴木先生の授業を見ようと考えていた方々にオンラインで見ていただくのに、先生のコンテンツが無いなんてあり得ない」と言われ、急遽、どうするか考えることにしました。

公開授業は「宮沢賢治の世界をマイクラで作る」というテーマでやろうと思っていたのですが、これは相当に尖った授業です。オンラインでやるなら、その前段階の「やまなし」を扱った時にどのようなインクルーシブの視点を持っていたかをお話しした方がいいだろうと考えました。単元を進める際に使ったスライドはあるし、児童のふり返りも全てデータで取ってあるので、まあ何かしらコンテンツにはなるだろうという読みもありました。

こうしてコンテンツの目処はつきました。しかし、時間がありません。そこからの日々は、夕方になるとひたすら撮影か編集でした。これがきつい...。

しかし、そういう時に援軍というのはあるもので、まず新たに撮影に応じてくださった皆さんが素晴らしかったです。基本、一発撮りでOK。特に藤野先生と寺本先生はさすが!そして、「読み書きアセスメントについての動画メッセージをいただけますか?」とお願いした仙台の小池先生からは「学会発表ですか!」というような動画が届きました。ありがたいことです。

それでもドタバタ感は否めません。前日になって「『事業概要報告と提案』ってあるけど、これって何するの?」などと言っている体たらく。いや、本当によくできたものです。

ドタバタは当日も

配信開始は10時。8時半頃からマイクロソフトの皆さんがいらっしゃってセッティングをしてくださったのですが、もうドタバタの連続。
「顔、暗いですね」
「スポットライトつけましょうか」
「あれ、スポットライト、テレビに映りますね」
「テレビの角度、変えたらどうですかね?」
「オーいい感じ」
「ちょっと音が遅れているような...」
「あー、言われてみれば」
「ムービー編集したから気になるんですかね?」
「ええ(笑)」
みたいなことの連続。とにかく私の対応力が低いので、マイクロソフトの皆さんには相当なご迷惑をおかけしてしまいました...。

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始まってからわかったのが「流れだけでも台本を用意しておけばよかった...」ということ。やっぱり生だと頭が真っ白になるんですね。全部、自分の頭に入っていたつもりでも、「あれ、次は何を話せばいいんだっけ?」となる。準備が足りなかったな、と本番の真っ最中にずっと反省していました。

それと、オーディエンスがいない中で話すことの難しさ! 普段って、やっぱり相手の反応を見て話しているんですよね。授業であれば子どもたちの反応を見て話題を変えたり口調を変えたりしている。それがオンライン配信だと全くわからないのが非常に難しかったです。テレビのアナウンサーって凄いですね。この辺りは修行が必要だな、と思いました。

そういう意味では、「一人でやらなくて良かった」というのはあります。今回、佐藤牧子さんと二人で回していったので、そこは非常に気が楽でした。役割を分けることもできますし、自分の番のときでも一息つきたかったら相手に振ればいい。佐藤さんはいい迷惑だったかもしれませんが、これを一人で回すのは無理だなぁと思っていました。

そしてゲストを迎えるのが楽しい! UiPathの原田英典さんをお招きしてRPAについてお話ししていただきましたが、この時間は非常に楽しかったです。あまりに楽しいので、こういうオンライン配信、定期的に行いたいな、と思ってしまったくらい(笑)。

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立ち止まってなどいるものか

今回、本当に多くの方にお世話になりました。まずはマイクロソフトの皆さん。お休みの日にも関わらず、皆さん楽しそうにやってくださったのが何よりも嬉しかったです。配信終了後の乾杯も楽しかったですね。

原田さんには今回だけでなく、継続的にお世話になっているのですが、立場が変わってもこうして応援してくださること、心から感謝しています。これからも末永く協力関係を続けさせていただければと思っています。

ムービーに出演していただいた藤野先生、寺本先生、ムービーを送ってくださった小池先生のご協力も欠かせませんでした。藤野先生にはスライドまで送っていただいたので、かなり充実したコンテンツになりました。これは今度、公開したいですね。

そして視聴していただいた皆さん。今回、最大時で74名の方からアクセスがありました。土曜日の朝からありがとうございました。好意的な反応を多くいただけて、かなり励みになっています。色々と課題は見えたのですが、こういう時代ですので「オンライン配信によるイベント開催」のノウハウを積み重ねていきたいな、と考えています。

思えば、このオンライン配信の前日、学校が突然、翌週から休校になることが決まりました。私が担任している6年生との児童とは、唐突に「今日でお別れ。今日が最後の授業の日だよ。」と言わざるを得なくなったのです。

困惑、悲しみ、怒り、諦め、寂しさ...子どもたちの様々な気持ちが渦巻く中、なんとか子どもたちに「君たちが僕のクラスで良かった」ということを伝え、さよならをした翌日のオンラインイベントでした。

最後に子どもたちに配った学級通信にONE OK ROCKの”C.h.a.o.s.m.y.t.h.”を紹介しながら、こう書きました。

教師として働ける限り、僕は前に進むことを止めません。正直、適当に当たり障りなくやろうと思えばできるだけのテクニックはあるし、僕はカメレオンだからね。何か適当に形を整えるような教師であろうと思えば、それはそんなに難しいことではありません。
でも、そんな教師でいることはしない。君たちは、これから中学生、高校生、大学・・・とどんどん成長して進歩していくでしょう? その進歩の度合いにはもちろん敵わないけれど、君たちが歩みを止めないように、僕も歩みを止めません。いくつになっても新しいことに挑戦していく。
6年3組は卒業と同時に解散になるけれど、歌詞にあったように君たちの心のなかで「変わらず この場所はある」のだとすれば、僕は「この場所」の番人としての役目を果たせるよう、挑戦を止めません。そして、ここからずっと歩んでいく君たちを応援し続けます。
少し早いけど卒業、おめでとう。

休校に関して、言いたいことは山程ある。でも、それを言う時間があるなら、次の一歩を踏み出した方がいい。グチャグチャ文句を言って立ち止まってなどいるものか。できることを、できるところから全てやっていく。進んでいかなければ子どもたちに顔向けができない。

今回のオンライン配信イベントは、私にそんな決意を再確認させるものになりました。


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