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脚本家とAIの物語から子どもは何を感じるか(後編)

前回の授業は、子どもたちがこのプロンプトを考えるところまででした。

1週間後、これを元にできあがった短編小説を携えて和田さんが再び教室に来てくれました。

まずは、「AIが書いたのか、人が書いたのか」は明かさずに、この短編小説を読みます。

読み終わった途端、子どもたちからは「AIでしょ?」「これAIっぽいよね」という声が聞かれたのですが、一応、改めて聞いてみます。すると。
「登場人物の言葉が丁寧過ぎたり…固い!」
「笑いを取るようなところがなかった」
「除草剤を向けられたところは面白かったよ」
「でも、そこだけじゃん」
というような意見が次々に出ます。ここまでのところ、「今のはAIだろう」という意見が大勢を占めました。

一通り意見を聞き終わったところで、次の短編小説を読みます。(私が朗読しました。)

読み終わったときの子どもたちの反応がどんなだったか、お聞かせしたいです。溜息、感嘆の声、唸り声。放っておいても子どもたちは口々に感想を話し出しましたが、一応、聞いてみました。

・これはAIが書いたのか 和田さんが書いたのか
→AIだと思う 0人  和田さんだと思う 33人

・どちらの物語の方が好きか
→最初の物語 0人  2番目の物語 33人

まあ、そうなりますよね。これだけレベルの差があったら仕方ないです。

では、どうしてこれを人間(和田さん)の作品だと思ったのか。
「表現の仕方が面白い」
「『歯を食いしばる』ときに雑草だから歯はない、とかさ」
「カラスの『カァ』とか」
「人物の気持ちがわかるような情景描写がある」
「脚本みたいな状況がきちんと書いてある」
「題名がAIは子供っぽかった」
などなど。「最後に(終)って書いてあった」など、形式から推理していた子もいましたが、全体的にはやはり物語そのものにやられていた感じですね。

ここで子どもたちから和田さんへ質問。
「お父さんが亡くなることにしようとか、いつ決めたんですか?」
「今回は小説だから展開は考えず勢いで書いていったね」
「なんでキュウリグサだったんですか?」
「『雑草』ってGoogleで調べて出てきた中から選んだんだよね」
「タイトルに『雑草』を入れないで『草物語』にしたのは?」
「悩んだんだけど、響きがよかったからね」
「プロンプトを渡されてからすぐにアイディアが浮かんだんですか?それとも、悩んだんですか?」
「雑草の話だ、雑草は動けないから雑草から見える人々の話だ、みたいなところまでは帰りの自転車に15分くらい乗っているうちに浮かびました。土日は子どもにつきあっていたから、月曜から3日くらいで書き上げましたね。」
「なぜAIが書いたような植物同士の会話ではなくて、カラスとか他の生き物との会話にしたのですか?」
「カラスってあまり好かれていないじゃないですか。そういうのを出した方が、この話は広がるかな、と思ったんですよね。」
「この物語をつくるのは簡単でしたか? 難しかったですか?」
「展開を決めずに書き始めちゃったから、分量のペースがわからなかったからそこは苦労しましたね。」

ここまでで国語の授業としてはもう十二分の学びがあったわけですが、2回の「AIと人間の比較」を経た子どもたちに「どんなことには人間が向いていて、どんなことにはAIが向いていると考えますか?」と聞いてみました。
いくつか紹介しましょう。

  • ちゃんと気持ちを表すのには人間のほうが向いていて、早く作らないといけないという時にはAIのほうが向いている。

  • 人間には、丁寧にしてほしい時に頼んで、AIに頼むときは、あまり時間がない時がいいと思います。

  • 絵や本を書くのは人間が向いていて、ハイキングなど、遊ぶことのプランはAIが考えた方がいいかもしれません。

  • 人間は感情を入れたり、自分が考えた以上のことを書いたり描いたりしてもらいたいときが向いてて、AIは何かのヒントを得たいときや、料理のレシピなどの必ず答えがかえってくるとき、が向いているかなと思います。

  • 感情がこもっている映画を書きたい!(例)と思ったときや、ドラマを描くときに感情がこもっていないといけないから、そういう時に、人間が書くときに役立って、AIが役立つときは、とてもとても急いでいるときです。

2回の「人間とAIとの比較」は、「AIについて考える」授業にしようと思って設計したのですが、結局は「人間について考える」授業になりました。そして和田さんが書いてきてくれた物語は、ICT✕インクルーシブ教育セミナーで紹介したいようなものでした。

授業がねらい通りにいかないことはよくありますが、ねらい通りにいかなくてこんなに幸せな気持ちになることもなかなかないかもしれません。

それにしてもこの記事、私が書いた部分はガラクタみたいなものですが、和田さんの文章を読めるというだけでめちゃくちゃ価値高くないですか?

「草物語」は和田清人さんの創作物です。ここに掲載することは許諾を得ていますが、改変・再配布等、著作権を侵害する行為はご遠慮ください。


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