精神の崩壊

 ああ、やはり……。私は欠落品だったのだ。

 「全部気のせい。誰も自分が思っているほど他人に興味ない。気にするな」

 誰もがそう言う。そんなことはわかっている。それでも『気になってしまう』のだ。私は知ってしまったのだ。『人は恐ろしい生き物である』ということに。だから、もう止められない。

 長年信頼を築いてきたはずの繋がりは、たった一度の会話で消滅するだけでなく、自己を崩壊、人としての根本を壊す。人を信頼しやすい人ほど、その衝撃は強く根強いものにさせる。

 「人が信じられない? なら俺を信じることから初めてみてよ。俺は絶対に裏切らない自信がある」

 「完璧な人間なんていない。だからしょうがないんだよ」

 人の弱い部分を見せると助けになろうとしてくれる人は沢山いる。そういった人間は、自分の手に負えなくなったり、自己顕示欲が満足すると去っていく。ああ、頼りになるなと思わされた人に幾度も騙された。プライドの高い人ほど、分からないことも分かると嘯く。人にランク付けを施し、このくらいの人にはこの対応でいいだろうと線を引く。

 「私はその人にとってその程度の人間だった」

 だから何だ。人間らしくていいじゃないか。自分も皮を被り、へらへらと笑ってればいいじゃないか。『完璧な人間なんていない』そうだよ。そうすればいい。そう思えればどんなに楽か。だが、一筋の光さえもなくなった私は、無敵であり雑魚だ。

 「教育を間違えた」

 私は失敗作で、『金食い虫』だと知った。自分たちで望んでこの世に誕生させたというのに。私はマニュアル道理にこなしてきたのに。だがどうやら私は不備がある邪魔者だった。ドシンと金槌に打たれたような重みが頭にのしかかり、悲しみに明け暮れたものだが…ああ、そうかと妙に納得した。

 確かに、欠落品らしく私は未熟で足りないものばかりだ。それなのに、裏切られた、信じていたなどとおこがましい。今まで自分のせいで費やされた分を返した後は、ひっそりと部品集めでもしていこうと思う。皆が言う、完全品にはあるものを。そして、自己を隠し俯瞰して考えられるように。

 「○○はしているのにお前は……」

 「普通は……それが当たり前」

 「変わってるよね、なんか」

 比較、監視されているような息苦しい社会、信じる者が信じられない社会に足をつけるために。ネガティブな思考から脱却するために、二面性を持ち今日も生きていく。


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?