火曜日の奴隷

定期を更新した。

6ヶ月モノなので、それなりのお値段。財布から取り出した この世で一番すてきな紙切れは、あっ というまに券売機の中に吸い込まれてしまった。

初めて 定期券 という名の魔法のカードを手に入れたのは高校生のときだと思う。小さな片田舎の駅で、おっちゃんのいる窓口に並んだものだ。雑に切られた申し込み用紙が懐かしい。氏名も利用駅も手書きしてたんだよ。通学証明書を持っていかないと学生料金にしてくれなかったんだよ。それでも一瞬ひるむ金額だったのだけど。

紙のようにぺらぺらの定期券は、友達と買った定期入れに入れていた 気がする。正直なところあまり覚えていない。無愛想なおっちゃんから渡された定期券は、これをなくすと雀の涙ほどのお小遣いが往復の切符代で消えてしまう、という間の抜けた危機感と一緒にカバンにしまいこんだ。

今ではすっかり おとな とか おばさん とか言われる年齢になってしまった。私は相変わらず定期券を使っていて、定期を忘れるとお小遣いが減ってしまう という危機感も持ち合わせたままだ。カード式になってしまった定期券はちょっとだけさみしい。

ようやく機械から吐き出されたカードを抜き取ると、ほんのり温かい。表面に少し濃い色で6ヶ月後の日付が書かれているのを確認して、カバンにぶら下がったカードケースに収めた。

禁錮 6か月

不意に浮かんだ嫌な言葉を振り払うように頭を振り、わたしは今日も家路を急ぐ。