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ケーショガール 第14話 ②/2
副店長会議のススメ ②/2
会議が始まると各店が順番に今月の売上進捗を発表していく。
「…以上、こんな感じでうちは上手くやってまーす」
馬淵がひょうひょうと店舗の実績を発表を終える
「馬淵さんあんな軽い感じで良かったんですか?」
「良いの。今集まってる店舗の中で実績が1番良い店舗知ってる?」
「知らないですけど」
「うーち」
近距離でのウィンクはなかなか辛いものがあった
「次、新江古田店」
エリアリーダーの三ツ木が次に発表する店舗を言うと威勢のいい返事で新江古田店の発表が始まった。
「はい。新江古田店の売り上げ実績を報告いたします。現在昨年度予算対比で120%の推移で進捗しており、このままの推移で行けば…」
さっきとったメモによると馬淵や冬真とは対極の固い言葉遣いで発表をし始めたのは新江古田店の副店長の片桐だった。
いかにも体育会系と言ったスーツの上からでもわかる筋肉質な体つきに、横を借り上げた短髪はラガーマンを彷彿とさせる。
「あの人凄いハキハキしてて馬淵さんと正反対ですね。」
小声で馬淵に話しかけると「あいつはこの中では1番の次期店長候補だからねー」と教えてくれた。
「そうなんですね、確かにしっかり仕事出来ますって感じですもんね」
「ちなみに2番手は僕だからね」
私が「えぇ!」と思わず大きな声を出すとエリアリーダーに
「新宿店うるさいぞ。お喋りしたいなら会議室から出てやれ」と注意されてしまい小さく縮こまる私をよそに馬淵は「すいませーん」と気の抜けた返事をしていた。
会議が終わると店舗に帰る前に馬淵が冬真に挨拶をするというので付いて行く。
「あーつかれた。僕もう帰りますねー」
「おう、ぶっちーおつかれ。会議どうだった?うちの片桐変な事言ってなかった?」
私は思わず「凄かったです。しっかり発表や意見を言っていて馬淵さんとは大違いって感じでした」そう言うと
「はぁ?デラコ言うねぇ」と馬淵は笑いながら言っていた。
「だってさ片桐。ちゃんとやってたみたいだなぁ」
冬真は横にいる片桐の肩を叩きながら言った。
「もちろんっス。自分の失敗は佐々木店長の顔に泥を塗る事になりかねませんから」
会議が終わっても固い片桐の口調はその生真面目な性格からくる癖なのだろうと思った。
冬真だけでなく馬淵も一緒になって片桐の固い口調をからかっている。
片桐は噴き出す汗をハンカチで拭いながら笑っている。
男性の上司と部下の関係も捨てたものではないとその光景を眺めていると
ズキッ
こめかみに走る一瞬の痛み。
「痛っ」手を当てながら小声で呟く。
「あれ?デラコどうした?具合悪い?」
「あっいえ全然そんな事無いです。大丈夫です」
「そっか。でも慣れない会議で疲れたでしょ。そろそろ店戻ろうか」
店に帰って来た私が休憩室で一息ついていると、ちょうどお昼に入ってきた北宮に出くわした。
「お疲れ様です」
「どうだった?新江古田店?楽しく遊んでこられた?」
開口一番嫌味を言う北宮に普通に挨拶出来ないのかとイラつきを覚えながら
「はい。他店舗って雰囲気が違うのでいい刺激になりました」と無難に答える。
「ふーん。新江古田の男はどうだった?イケメンいた?」
「イケメンですか?仕事だったので特に意識して見てなかったのであまりわかりませんが…あっでも店長の佐々木さんと副店長の片桐さんは良い人でした」
北宮の眉がぴくっと反応した。
「あなたもちゃっかりした女ねぇ。会議に行ったのに男漁りしてきちゃって」
もはや嫌味を言う為に話しかけてきているのではないかと思う程の北宮の言葉に閉口していると北宮は楽しそうに続ける。
「ま、でもあの2人を見たらそう思うのもしょうがないか。あなた彼氏いるの?」
「急に何ですか、なんでそんな事言わなきゃいけないんですか。いないですけど」
「やっぱりね。艶のない顔してるもの。あなたも大好きな彼氏くらい作った方が良いわよそろそろクリスマスなのに寂しく過ごす事になるわよ?」
嫌味だけでなく彼氏の有無によるマウント取りをされ、イライラのゲージは最大限を指し示す寸前になっていた。
「北宮さんの相手はそんなに良い男なんですか?」
売り言葉に買い言葉でつい口に出してしまった事を北宮の口から返答が発せられる前に後悔した。
前に池内が話していた北宮が新江古田店から新宿店に移動になった理由を思い出し、北宮がこの後のセリフを言う為に吹っ掛けて来た事に気がついたからだ。
「あら、あなたが今日漁ってきた男のうち一人は私の男よぉ?」
北宮は狐が狸に勝ち誇ったような顔をしながら私の想定したセリフを口にしていた。
「そうですか良かったですね」
それ以上話しかけられないように出来る限り感情を殺して答えたつもりだったがエンジンがかかった北宮は止まらない。
「どっちか気になる?どっちもだったりして。あはは。ねぇあなたいつから彼氏いないの?彼氏いないとつまらなくない?起きて仕事して家に帰って寝て、それでまた起きて。この繰り返しでしょ?あ、もしかしてご飯食べる楽しみの為に生きてる人種だったりする?」
もう少しゆっくりしていたかったがどうにも耐え切れなくなり「すいません。仕事戻るので行きますね」そう一言告げ休憩室を後にしたが、それでもなお北宮の嫌味が背中に刺さった。
「イケメンのお客様来ても連絡先とか渡しちゃだーめよぉー」
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