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ケーショガール 第15話 ②/3

社内恋愛のススメ ②/3

「高橋さん。じゃあもしかして北宮さんと片桐さんも?」

高橋はここからが話のメインディッシュだと言わんばかりのワクワクした顔で言った。

「古寺ちゃん。正解」

「えっ?どういう事っすか?デラコどういう事?」

「いや、今の話聞いてたらその権力のある男って言うのが片桐さんの事で、北宮さんも片桐さんと付き合うまでに競走したのかなって思って」

「確かに‼えっ?どうなんスか?」

2人で高橋を覗き込む。

「古寺ちゃんが今言った通りよ。北宮は三吉と違って勝ち上がった女なの」

「あ、それ余計イラっとする言い方っスね」

「でもさ、2人とも。店内で付き合っただけで片方が異動になるなんて普通じゃないと思わない?」

私は異動の細かいルールが分からず黙っていたが三吉が答えた。

「確かに。聞いたことないっスね。結婚したらどっちかが異動しないといけないって言うのは聞いたことあるっスけど。付き合っただけでって言うのは。てかうちにも前に付き合ってたスタッフいましたけど移動になんかなってないスよ?」

「でしょ?おかしいでしょ?そりゃあ店内恋愛が厳しく禁止されている店舗もあるわよ?仕事中にカップルがケンカしだして大騒ぎになったなんてどこの店舗でもある話だし。でも普通は恋愛なんて個人の自由だし、それに私達大人でしょ?だから禁止されてない事がほとんどよね」

「それじゃあなんで北宮は移動になったんスか?」

三吉は餌を目の前に待てをさせられ、もう我慢できない犬のようになっていた。

「わたしもそれ気になってさ、新江古田の知り合いに聞いたの。そしたらね、1年以上前の事なんだけど―
北宮はその当時片桐とは別のスタッフと付き合っていたらしいの。片桐も別のスタッフ、っていうか当時のチーフの子と付き合っててさ。片桐は仕事出来るから4人いる副店長の中でもリーダー的存在で会議であまり店にいない店長の代わりにバリバリ店を仕切ってたわけ」

「あーつまり店内でトップレベルの権力者って事っスね」

「そう。で、その片桐に北宮が目をつけるわけ」

「えっでも北宮さんも片桐さんも店内に彼氏彼女がいたんですよね?」

「そう。だからその中で真っ先に動いたのは北宮みたいでさ、その付き合ってた彼氏の事をあっけなく振ったみたいなの。その彼氏が店のスタッフに「なんで振られたか理由が分からないくらい急に振られた」って嘆いてたって話もあったみたいよ。一歩の片桐はまだチーフの子と付き合ってたんだけどさ、北宮はそんなのお構いなしにグイグイでアタックしたらしいわ。仕事中にやけにくっついてみたり、お菓子作ってきたり。傍から見てられないくらいアピールしてたみたいよ。でもそのうちエスカレートしてきて片桐と自分の休憩時間が合わないと不機嫌になったりしてたみたいで周りのスタッフもそんな北宮に辟易してたらしいのよ。それである日、北宮の行動を見かねたチーフが注意したらしいのよ。あっそのチーフは片桐の彼女の子ね。そしたら北宮なんて言ったと思う?」

「なんて言ったんですか?」

「最近片桐さんとうまくいってないから嫉妬ですかぁ?私の方が片桐さんの事を笑顔にさせちゃってるから?って言ったらしいわ」

「マジっすか。ヤッバ。彼女って分かってて言ってるんすよねそれ。完全に彼女さんの事舐め腐ってるじゃないスか」

興奮している三吉はヤンキー漫画の様な口調になっていた。しかし私も北宮が嫌味を言う顔がハッキリと想像出来ていた。

「でしょ?普段は温厚な彼女も流石に頭来たみたいでさ、バックヤードで言い合いになったらしいわ」

「うわー人の揉め事楽しっ。その場にいたかったスわ」

不謹慎な三吉の言葉を気にもかけず高橋は続ける。

「で、その言い合いを片桐が止めに入ったらしいんだけどさ、よりにもよって片桐は北宮の肩を持ったらしいのよ」

「えっ、マジっスか。意味わからない」

「本当よね、彼女からしたら間違ったことしてるのは北宮だし、北宮より自分の方が役職が上とはいえ彼女である自分を守って欲しいって思うのが普通でしょ?でもそうせずに北宮を守った片桐をみて彼女の気持ちはスーッと冷めたらしいわ。多分片桐の気持ちも北宮に傾いてたんじゃない?結局その後その事が発端で別れたんだってさ」

「うわぁなんか彼女さんかわいそうですね」

「でしょ?そしたら1週間もしないうちに北宮と片桐が付き合いだしたんだって」

「うわ、最悪。そんなのと一緒に働きたくねぇ」

「でもこれだけで話は終わらないの」

「まだあいつなんかするんスか?」

「まぁね。それがね…」

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