途上国のスタディツアーという仕事
アイ・シー・ネットでは、人材育成事業にも力を入れており、高校生や大学生を対象にした途上国でのスタディツアーや、日本での教育旅行などを企画運営しています。
今回は、最近カンボジアのスタディツアーに携わった大塚恵美子さんに、プログラムの内容や学びを深めるために工夫したこと、そして仕事を通じて感じたことについて話してもらいました。
東武トップツアーズと連携し、令和5年度 「信州つばさプロジェクト(県企画プログラム)」 「SDGs探究コースⅡ(国際協力)(カンボジア)」 企画・運営業務という案件を長野県教育委員会から受注しました。国際社会で活躍する人材育成を目的としたプログラムで、SDGsや社会課題解決に関心を持つ長野県の高校生28名に対して、カンボジアで1週間のフィールドワークを実施するという内容です。参加した高校生の学びが深まるように、以下4点を重視したプログラムにしています。
1.主体性を促すための事前学習
主体的な学びを促すためには、事前準備が欠かせません。事前学習として、生徒一人ひとりが自己分析をし、各自の興味関心に沿ってカンボジアで探究したい課題と訪問先を決定し、情報収集や質問等の事前準備をしてもらいました。
2.カンボジアの高校生との協働学習
現地で、カンボジアの高校生とともに学ぶことが今回の特徴の一つです。日本人とカンボジア人とで興味関心の近い者同士でグループを作り、一緒にフィールドワークを実施し、あるべき理想の世界を考えるワークショップなどを協働で実施することで、視点や考え方に多様性が生まれるような設計にしました。英語の苦手な生徒も多かったですが、英語で発言しなければいけない機会を意図的につくることで自分の考えを英語で話すことに徐々に慣れていきました。カンボジアの高校生たちの積極性にも触発され、帰国のころには自信を持って発言できるようになっていたのがとても印象的でした。
3.仲間との振り返りと共有
現地ではほぼ毎日、一日の終わりに振り返りの時間を設けました。学校見学・企業訪問によって収集した情報や発見、感じたことを紙にまとめ、それを共有することで多角的な視点で物事を捉えてもらうことを意識しました。
フィールドワークで自分の眼で見て、現地の人の話を聞き、違った価値観を持った同世代と話し合いを繰り返すことで、それまで知識として学んでいた貧困などの社会課題を、リアリティをもって理解していったように思えます。
4.帰国後のアクションにつなげる仕掛け
今回のフィールドワークで学んだことを帰国後に活かしてもらうため、あるべき理想の世界、自分のありたい姿、理想を達成するための自分のアクションなどをまとめてもらいました。短い時間だったので整理しきれない部分もありましたが、今後も考え続けることで、自分たちなりの答えと行動を導き出してほしいと思います。
仕事を通じて感じたこと
貧困を体感したことでカンボジアとの比較で自分たちが恵まれていることを改めて実感し、複雑な思いを抱く生徒もいましたが、それらをきっかけにカンボジアや世界の問題に対して何か行動を起こしたいと言っていたのが嬉しかったです。日本の高校生とカンボジアの高校生とのやり取りを見ていると、議論をするだけでなく、心の交流をしていると感じます。カンボジア人、日本人といった国の違いは関係なく、高校生同士、人間同士としての関係性を築いていたのは、素晴らしいことだと思います。
また、出発前は初めての海外に不安を覚えていた生徒たちが、たった1週間で顔つきがどんどんたくましくなっていきました。こうした変化を見るのはやりがいを感じますし、仕事の楽しさでもあると感じます。
帰国して日常生活に戻ると、どうしても現地で感じた高揚感は薄れていってしまうものですが、この1週間を単なる思い出にするのではなく、現地で感動した出来事やカンボジアで出会った人々に思いを馳せ、少しでも行動を起こしてくれたら嬉しいです。