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学研グループ入りの裏側

アイ・シー・ネットは2019年9月に学研グループ入りしましたが、その立役者となったのが長年学研グループのグローバル戦略室室長として学研のグローバル展開を担い、当社取締役にも就任した新井邦弘さんです。
今回はそんな新井さんに、当時のお話を伺います。

新井邦弘
株式会社学研ホールディングス 執行役員
株式会社地球の歩き方 代表取締役社長
アイ・シー・ネット株式会社 取締役
大学卒業後に学習研究社(現・学研ホールディングス)へ入社。世界各国のミステリーを取り上げる「ムー」や古今東西の歴史を扱う「歴史群像」など雑誌編集を経て、2015年に学研ホールディングスへ転籍し、グローバル戦略室長に就任。2020年、学研グループへの事業譲渡によって設立された株式会社地球の歩き方の代表取締役社長に就任。

-新井さんがアイ・シー・ネットのM&Aにどう関わられていたかお聞かせください
当時私はグローバル戦略室の室長でしたが、アイ・シー・ネットとのM&Aは厳しく秘密保持がされていたため、最初から関与していたわけではありませんでした。
しかし、アイ・シー・ネットのM&Aでは今後の学研のグローバル戦略の命運がかかっていましたし、私自身も学研内でのグローバル人材不足は長年の課題と感じていたため、M&Aのミッションに参画することになったのです。
このM&Aにより180人の海外事業専門のプロフェッショナル集団を獲得できるというのは学研のグローバル展開を進める上で非常に心強かったですし、学研の経営陣に対して、よくぞこの経営判断に踏み切ったな、と思いましたね。
しかもそれが、発展途上国でODA事業を担う開発コンサルタントということで非常に意外性がありました。

-当時、アイ・シー・ネットに対してどんな印象を持ちましたか?
私にとって結構インパクトがあったのが、当時アイ・シー・ネットのコーポレートサイトで公開されていた動画でした。アイ・シー・ネットの社員や現地の人など事業に関わる人々の声がドキュメンタリー風に収められているのですが、見ているとエモーショナルな感動が沸き上がり「この会社のM&Aには本気で参画したい」と思わされました。
学研内の重要な会議で取締役にM&Aの説明をしたときも「アイ・シー・ネットを知るにはまずコーポレートサイトの動画を見てください」と話しましたね。
また、アイ・シー・ネットの幹部と会ったときに、自分とフィーリングが合うな、という印象を持ちました。そんなアイ・シー・ネットが学研グループに入ってくれるのは非常に価値があることだと思いましたし、「このM&Aは絶対に成功させるぞ」と改めて心を決めました。
該当の動画はこちら

当時のコーポレートサイトで流れていた会社紹介動画

-アイ・シー・ネットと学研の事業の親和性についてはどう思われましたか?
2つの観点から、親和性があると感じました。
1つ目は、両者とも「人を育てる事業」という点において共通していることです。
アイ・シー・ネットは創業以来、日本や途上国で技術移転や能力開発といった人的資源の開発に取り組んでいますし、学研も教育コンテンツや教育サービスの提供などを通じて人の可能性を拡げる事業を手掛けていますので、両者の理念や目指すべきところで共通する部分は多く、親和性もあるなと感じました。

2つ目は、アイ・シー・ネットと学研が組むことで、ODA事業で起こした変化やインパクトをビジネスに引き継いで、持続させることができるという点です。
ODAでは2~3年現地に張り付いて事業を実施し、事業期間が終わると現地を去らざるを得ないですよね。プロジェクトに関わってきた人からすると、「もう一歩踏み込んでやりたいのに」、「これからだったのに」と、中途半端なところで終わってしまうケースもあるわけです。
その様な現状に対して、アイ・シー・ネット代表取締役の百田さんが
「ODAなどの公的な枠組みを活用して動き始めた挑戦や変化を、民間の力だけでも回していくことができれば、より持続可能な開発効果へ繋げることができる。純民間として現業を回している学研グループと協働することで、その構想も実現でき、ODA事業から軸足をシフトすることで、アイ・シー・ネット自体もODA予算に依存しない安定した経営を目指すことができる」と話していたんです。
このビジョンを聞いて、なるほど、一見距離がありそうなODAコンサルティングの会社と国内中心で教育事業を手掛ける会社でも、最終的なゴールを目指していけばシナジーは見込めるな、と思いました。

-ということは、アイ・シー・ネットに求められていた役割としては、現地で事業の種を探してくる、ところだったのですね
そうですね。公的予算なりで畑に鍬を入れる、というフェーズはアイ・シー・ネットがまさに現場でやっていることで、そこから芽吹いて実を刈り取るまで、を学研と協働していく形です。このゴール設定や戦略の立て方は、今も変わっていないですし、まさに今実施している学研トルコの事業はこのストーリーに当てはまりますよね。

学研トルコでは学研の教材を利用したプロジェクトを実施している

-アイ・シー・ネットがグループ入りしたことによる学研内での変化は何かありましたか?
経営体制が人の入れ替えも含めて大きくシフトしました。
アイ・シー・ネットの代表である百田さんが学研の取締役に抜擢され、グローバル戦略室はアイ・シー・ネットが主導する形になり、私はグローバル戦略室室長を退いて事業承継の話が来ていた地球の歩き方に注力することになりました。
アイ・シー・ネットのグループ入りによりグローバル戦略を担う人材を十分に得られたので、配置転換もしやすかったのだと思います。学研のアイ・シー・ネットに対する期待値も高かったんだろうなと思いますね。

-学研の社員からすると当時アイ・シー・ネットは異質な存在だったのではないでしょうか
そうですね、アイ・シー・ネットを異質だと感じた社員も少なくなかったと思います。ただ、その背景には畏敬の念があったと思うんですよね。大学院を出て、外国語ペラペラで、外務省とお付き合いし、我々には想像もできないような場所で想像もできないような能力を発揮している超プロフェッショナル集団ですから。当然、アイ・シー・ネットは自分たちとは少し違うなという意識は学研職員の中にあったと思います。

こうした距離感は縮めていかなければいけませんが、お互いにどういう背景を持ち、どんなビジネスをしているのか、まだまだ知らない人もいるので、両者の交流の場があったらいいなと思います。アイ・シー・ネットの社員の個人個人のキャラクターや、人となりは学研と非常に親和性が高いと感じるんですよね。私からすれば、お酒飲んだらこんなに面白い人たちはいないですよ。(笑)

いつもアイ・シー・ネットのイベントに参加くださる新井さん

一案として、お互いに出向してみるのもありかもしれませんね。学研の若手にも実は語学力に長けているものの、爪を隠している人材はたくさんいます。また、語学力は無いけれど、本当は途上国の困っている子供たちを助けたい、社会課題解決を本気で考えている、といった熱い想いを持っている人は世の中の平均以上に学研の中には存在していると思います。そんな学研社員がアイ・シー・ネットに出向して、実際に途上国の現場に触れてみる、みたいなことがあっても面白いんじゃないかと思います。

-いいですね。優秀な人材が学研から来ていただけるのは当社にとっても非常にありがたいです


今回は当社の取締役である新井邦弘さんに、当社の学研グループインの裏話をお伺いしました。
次回は、新井さんが代表取締役社長を務める地球の歩き方社と、アイ・シー・ネットがタッグを組んでどんな取り組みができるかについてお話を伺います。