くだらないの中に
最近「生きててよかったなあ」と思うことがすごく多い。
アベンジャーズの完結編を映画館で観られる。
星野源のライブを生で体験できる。
ヒーローアカデミアをリアルタイムで追うことができる。
世界中の美味しいビールを飲むことができる。
「生きててよかった」と思う。
けど、
「生きてるな~」
って思うのは、
物事がどうも思った通りにいかなかった時だったり、
自分がどうしようもないやつだと気づいた時だったりする。
起きなきゃいけないってわかってるのに布団の中でずっとTwitter見てたり、
デニムのポケットにイヤホンを突っ込んでそのまま洗濯機にかけてしまったり、
早く寝なきゃいけない夜に限って長めのAVを観始めてしまったり。
本当に情けなくてどうしようもない人間だなあ、と自分にうんざりすると同時に、
「生きてるな~、人間だな~」とも感じる。
ある時、
家でナポリタンを作ろうと思いたった。
冷蔵庫を見るとケチャップを切らしていることに気が付き、
コンビニに向かった。
家から一番近いコンビニは徒歩5分もかからないところにある。
ケチャップを買って帰宅し、
玉ねぎとピーマンとベーコンを炒め、
いざパスタを茹でようと思ったら、
パスタがない。
さっきまで鼻歌交じりでキッチンに立っていたのに、
電源が切れたみたいにその場に座り込んでしまった。
「なぜケチャップの前にパスタがあるかどうかを確認しなかった?」
「前に一気に買い込んだし、、、、」
「あーでも一週間くらいに切らしてまたいっぱい買ってとこーと思ったんだった」
身体は動かないのに頭の中は騒がしい。
、、、いやいや、買いに行けばいいんだ。
具材は炒めてしまったし、
ここから別のメニューにするのもなんかシャクだ。
家から一番近いコンビニは徒歩5分もかからないところにあるってさっき言ったじゃん。
さっさと買って帰ってくればいい。
、、、のだけど、
どうも電源が付かない。
まず単純にめんどくさい。
「あーさっき気づいていれば―」とばかり考えて、
それが悔しいし、めちゃくちゃめんどくさい。
それに、恥ずかしいじゃないか。
さっきケチャップだけ買いに来たでくの坊が、
次はパスタだけ買いに来るなんて。
「いらっしゃいませ~」のクセが強すぎて「ラシャ―セ!」になっちゃってる韓国人(と思われる)のバイトの女の子に、
絶対ナポリタン作るんだろうなーって思われるじゃん!
パスタなかったんかーい、って心の中でツッコまれるじゃん!
よしわかった、
別のコンビニに行こうじゃないか。
次に近いところだって5分もありゃ着くんだ。
家を出た。
お腹すいたなー。
2番目に近いコンビニに着いた。
パスタ、、、パスタ、、、、
パスタが、、ない??
嘘じゃん??
いや、確かにない。
すぐに店を出て次のコンビニに向かう。
もうスーパー行けばいいじゃん、なんて指摘は受け付けない。
受け付けてたまるか。
コンビニで、
パスタを、
買うんだ。
次に近いコンビニまで無心で歩いた。
パスタぁ、、、
俺に、俺にパスタをよこせぇ、、、
パスタ、パスタ、、、
あった!!
よっしゃ!あった!!
ナポリタンが食えるぞ!
やった!
、、、けど、
これ、束になってないタイプじゃん、、、
束になってるタイプじゃなきゃ、嫌なんだよ、、、、
、、、、「ラシャ―セ!」
束のパスタを3パック買った。
彼女は俺を訝しげに見上げていた。
外に出て天を仰ぐ。
くだらないことにこだわって、
無駄に歩いて、
結局最初にめんどくさがってたことをやる羽目になった。
だけど気持ちは軽い。
自分で自分のことを面白いやつだと思えた。
ナポリタンを食べながら、
自分の行動を思い返して笑ってしまった。
無駄のないスマートな人生はきっと送れないんだろうけど、
くだらないの中に生を見つけられるほうが楽かもしれない。
自分の心が簡単なだけかな。
今日はコンビニで108円のチョコを買うかどうか、
気づいたら棚の前で10分迷ってた。
くだらないの中に。