ポジティブデビアンス

現場から何を学んでいますか?

『ポジティブデビアンス 学習する組織に進化する問題解決アプローチ』を読んだ。デビアンスは逸脱という意味で、ポジティブデビアンス(PD)は既にその組織やコミュニティで良い行動を行っているモデルを参考にして、ボトムアップでメンバーを巻き込んで改善していこうという話が、実例や実際のやり方と共に書かれている著書であった。また、ボトムアップの上では、心理的安全に基づいた対話が何より重要であることも示されている。

PDについては本著で始めて知った言葉であった。概念としてはトヨタの改善活動に近いものはあるものの、改善が定型業務に強いものである反面、PDは非定型業務や変化に激しい環境に適しているという点もあり、色々と勉強になった一冊であった。

研究開発という職種も、顧客の要望が色々と変わる、つまり制約条件が変わる中で、適切な解を模索するという活動である。研究者の中には、独自の嗅覚を用いて新規技術で達成しようとする人もいれば、過去知見を活用して解を導こうとする人もいる。解自体が複数あるはずで、その解にたどり着く手段も複数あることを考えると、PDの手法が活かしやすい分野といえるのかもしれない。

一方で、PDを横展開する難しさもこの著書には書かれている。特に企業で横展開することが難しかった事例も書かれており、現場はいかに自分事化するか、トップはいかに権限委譲をするかが重要なポイントになることも示されている。

研究者自体が多種多様なら、そのマネージメント自体も不確実性が高い業務になるはずで、そこに企業文化が相まってくると、改善には独自性の高い手法が必要かもしれない。そう考えると、現場もマネージャーもPDの概念を取り入れて改善していくことも必要かもしれない。

そんなことを考えつつ、どうせなら自分がPDの実例になって組織や会社を改善出来たらよいかなと思いつつ、楽しみながら読書できた一冊であった。

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