森林

森にどういうイメージがありますか?

森林ジャーナリスト田中淳夫氏の『虚構の森』を完読。本著は、森林に関して一般的に知られている常識や、そのSDGsとの関連性などを、実際の研究結果と照らし合わせて、矛盾点を見出すような構成になっている。耳障りの良い内容に対して、実際は利得権益が絡んだため間違った情報が垂れ流されているようなケースもあり、色々と発見のあった一冊であった。本著は、完全に矛盾を実証できるほどのデータはなく、著者自身もあくまで仮説と述べているように、新しい視点を持つための一冊と言える。ただ、一次データを自分自身で調べて考察し解釈していく重要性が述べられているようにも感じた。

本著を読み進める上で、森林や植物に対しては大きく分けて、①課題が情報として知れ渡らず個々の知識不足で解決が進まない or 間違った方向に行く、②利益追求のための短期志向の対策が長期的に不具合を及ぼす、③個々に神聖視されて信仰や癒しの対象となり課題解決に先立って感情論が湧き上がる、という問題点があるように思った。①であれば教育や啓蒙で少しずつ改善できる可能性はあるのだが、②は資本主義の構造的問題であり、③に対しては宗教を変えることが難しいように多様性の世の中で解決には進みにくい。今の問題点だけではなく、後世のために環境問題をどう捉えていくのかが改めて重要だと感じた。万人が納得する答えがない中で、どのような未来を誰が思い浮かべるのか。本当に難しい問題だ。

本著を読み進めるうちに、自分自身も③の要素を少なからず持っていることにも改めて気付いた。緑は癒しとなり、森や草原を歩くこと自体で心が晴れやかになるケースも多々ある。一方で、森自体は人間が守らなければならないものなのか疑問を感じたことも事実である。どれだけ過酷な環境であっても、樹々はその環境に即した生態系を主体的に構築していく。守るというよりは過度に手を加えさえしなければ良いのではないだろうか。この数カ月、樹々を意識的に観察していても思うことである。

生物多様性も、種を絶滅させてはいけないという理念だと保護に傾くが、自然淘汰を許容するのであれば攪乱の方が重要になる。交雑や突然変異も許容した上で、種の総数が増えればよいのであれば、絶滅種が出ることもまた自然の摂理なのかもしれない。このような話を、単純に二項対立で述べてしまうと争いの元になるので、どのような着地点にするのか、様々な視点を持ったメンバーで話し合うことが大事なのだろう。

動物も植物も共生している。それを理解した上で、心地よく生きていければと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?