ウイルス

ウイルスに対して何を感じていますか?

池井戸さんは好きな作家で、メジャーな半沢シリーズを始めとする銀行ものこそ読んでないのだけれど、それ以外は大体目を通している。今日は『民王シベリアの陰謀』を一気読みした。池井戸さんの本はハズレが少なく、いつも通り読後感の良い一冊だったと思う。

10年程前に韓国駐在していた時だった。唯一現地で視聴できた日本の局がNHKのみで、ちょうどその時に『七つの会議』のドラマ版が毎週土曜日に放送されていた。サラリーマンあるあるがシンプルに描かれていて、その中で正義感などの志を描いた場面も多く、珍しくドラマを全部視聴した。その時に、原作が池井戸さんであることを知って以来、新作は結構な確率で読んでいる。研究開発という職業柄、『下町ロケット』シリーズや、『空飛ぶタイヤ』などもお気に入りで、後者に関しては映画版も見に行ったりした。

池井戸さんの本の特徴として個人的に思っていることは、とにかく分かりやすいネタを、分かりやすい文章で書き、心が動くポイントも直球で描かれている。正に今盛り上がっている社会問題や課題をモチーフにして、かつ読者に響きやすいタイミングで刊行されるから、ベストセラーにもなりやすい。作者は伝えたいことをタイムリーに伝えられて、出版社は儲けられるし、読者は現在進行形もしくは少しだけ過去の社会を、ちょっとだけ違う形で追体験できる。そういう意味でwin-winになりやすい構図だと感じている。

今作も複数のテーマが背景に盛り込まれているが、メインがウイルスということで、ほぼ全ての読者が何らかの思いを抱いているネタである。池井戸作品の中でも、ここまで万人に共通性の高いネタを扱ったものは初めてなのではないだろうか。

読み進めながら、コロナウイルス流行により得たもの、失ったもの、想起された感情、自身や社会に起こった変化など、様々なことを振り返ることができた。また、新たな視点からコロナウイルスを見つめなおすキッカケもあった。そして、2年前の自分より、少しだけ強く、そして優しくなれたんじゃないだろうかと思った次第である。


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