千川昶
かつて読んだ思い出のなかの本たちについて書きます。 書評というより、一冊一冊にまつわるエッセイといったところです。 でもこの文章をきっかけにどなたかが本を手に取ってくれたら、それはそれでとても素晴らしいことだと思います。
式根島という伊豆諸島の小さな島がありまして、そこは大島のひとつ南の島なのですがあまりに小さいので地下水がたまらず、海底ポンプで水を大島から運んで調達しているとい…
「手術台の上の蝙蝠傘とミシンの出会いのように美しい」というシュルレアリスト(ブルトン?)の言葉がありますが、僕はこの言葉を思い出すときなぜかいつもボルヘスの本と…
2021年12月8日 22:01
式根島という伊豆諸島の小さな島がありまして、そこは大島のひとつ南の島なのですがあまりに小さいので地下水がたまらず、海底ポンプで水を大島から運んで調達しているというところで、泊まった旅館ではシャワーを浴びるのにも節水してくださいと書いてありました。別に何があるという場所ではないのですがむかし三日間ほどふらふらとその島に滞在し、そこで食べたトビウオの刺身がたいへんおいしかった。いやそんなことはどうで
2021年10月10日 22:41
「手術台の上の蝙蝠傘とミシンの出会いのように美しい」というシュルレアリスト(ブルトン?)の言葉がありますが、僕はこの言葉を思い出すときなぜかいつもボルヘスの本と出会った時のことを考えます。そのとき僕はまだ大学生でした。消費期限を5日過ぎた鶏肉を食べて腹を壊し、どうにかバイトに出勤したもののとても働けるような状態ではなくて、早退したはいいけれど家まで帰る気力もなく仕方なしに入った書店の本棚で、ボル