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中古(ジャンク)コーナーの常連大正琴たち その3


SUZUKI(鈴木楽器製作所)|電気「桐」

令和の現在、「一般人がもっとも大正琴に触れやすい場所」となっているリサイクルショップ(ハードオフなど)の中古(ジャンク)楽器コーナー常連の機種紹介の3回目。前回紹介したSUZUKI(鈴木楽器製作所)「桐」のエレアコ版「電気 桐」です。

なんと未使用のデッドストック品です。これもすでに生産完了品です。「桐」と同じく1990年代に入るタイミングでカタログ落ちしていたようなので80年代の機種ということになります。

▶ 諸元

種別:ソプラノ大正琴(5弦)
音域:下5~上6#(G3~A5#) 27鍵
素材:木部/総桐 絃/スチール
寸法(cm):75(長)×15.0(幅)×高さ(8.8)
重量(kg):1.7kg(ケース 3kg)
価格(当時): 49,500円(1980年代 消費税導入前)

前回は手元の「桐」実機を私が測ったものでしたが、今回はセットでついてきた説明書と当時のカタログからの転記なので公式データです。

▶ 電気「桐」所感

・当時の位置づけ / 付属品

電気「桐」付属品

電気「桐」の所感は前回の「桐」の記事に準じますが、なにせデッドストックなので付属品が全て揃っているのは貴重です。

チューニング用の笛と交換弦、エレアコとしてシールドが付属しているのは順当なところでしょうが、弦巻き機がついているのとなにより本鼈甲製のピックがついているのがこの大正琴が高級機であることを示しています。ワシントン条約でべっ甲細工の原料であるタイマイの国際的商取引が禁止されたのが1993年ですからそれ以前ではありますが、いまだとこの2枚だけで3000円近い値段になるのではないでしょうか。

ちなみにこのデッドストックを入手した値段は送料込みでそれ以下なので、これだけで元が取れていると言えます…

・メッキ

電気「桐」弦掛けカバーのメッキ

「桐」・電気「桐」の弦掛け(テイルピース)は琴表面に取り付けられていて、それを金色にメッキされたカバーが覆っています。前回の「桐」よりは状態がよいですが、やはり劣化は見えます。私の趣味の一つであるカメラでもそうなのですがデッドストックはけっして新品そのままが保存されているわけでない、しまい込まれたまま静かに劣化していく、ときに致命的にというのは楽器にも共通することなのです。

・ジャック周り

電気「桐」ジャック周り

電気「桐」はエレアコですので、「桐」と違いピックアップが装着されています。琴に向かって右側という、大正琴の定番の位置に音量・音質のノブとジャックがあり、その上に操作を説明する透明シールが貼られています。同世代の砂丘ソプラノなどにも同じシールが貼られていたので世代共通なのでしょう。

この電気「桐」のノブですが、ハードオフのジャンク棚で観測すると固着してしまっている個体をよく見ます。おそらく使われているグリスが劣化して固まっているようで、その場合は掃除をしてやる必要があります。このジャック部分は簡単に取り外せるのでそう難しくはありません。

▶ 総評

丁寧に作られている「桐」シリーズですが、ケースの雰囲気が”レトロ”なのもあるのか、ジャンクコーナーだと最低価格帯の捨て値になっていることの多い琴です。おおくの場合金メッキが劣化してしまっていること、電気「桐」のジャックやノブが固着してしまっている場合が多いのもその理由なのでしょうか。

カタログ落ちから30年以上経っていることからメンテナンスは必須ですが、まずは掃除して弦を張り替えてやると、もともとの作りが丁寧であるだけによい響きを取り戻します。個人的には、簡単な整備(エレキギターを手に入れた際レベル)を前提として「和」の音を大正琴に期待するならばとてもよい選択肢の琴だと思います。500円(税抜き)から探せる往年の高級大正琴、皆さま一台いかがでしょうか。

あとがき

書きかけてから2ヶ月経ってしまいました。こんな記事がもう二桁貯まっています。今年中にはなんとか公開していきたいですね…

(2024/3/20 第1版 公開)

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