見出し画像

『エントロピー理論』とは?『時間逆行』の方法とルールとは?『無知が武器』であるという理由とは?
未来では何が起こっているのか?『アルゴリズム』の正体に迫ってみます。


今回のコラムを見るメリット

テネットを新しい視点で鑑賞することが出来るようになります。
ついでに、量子力学などの物理学理論と私たちの生活を結びつけるヒントを得ることが出来ます。
この映画の内容が「あり得る世界である」と理解することが出来ます。

まず、あらすじを解説します。

※ネタバレ注意

名もなき男「主人公」
彼は、あるテロ事件に特殊部隊として参加したことから、第3次世界大戦を防ぐための謎のキーワード「TENET」を巡るミッションに巻き込まれます。

ニール
名もなき男の相棒です。
世界各国で任務遂行を手助けする優秀なエージェント。

アンドレイ・セイター
富を一代で築いたロシアの富豪。
未来と現在を繋ぐ役割を持つ謎の悪人です。

キャット
セイターの妻で一児の母。
セイターの秘密を握っています。
身長191cmもある。

まず、簡単にストーリーを説明します。

主人公「名もなき男」は、CIAの特殊部隊として、ウクライナのオペラハウスで起きたテロの鎮圧作戦に参加していました。
この時、バックパックにオレンジ色の「お守り」を付けた男に助けられます。

主人公は、そこで仲間を守り、テロリストに捕らえられてしまいます。
尋問がくり返されますが、機密情報を漏らしてしまう前に自らの命を断つために、彼は毒薬の入ったカプセルを口にします。

しかしその中身はおそらく鎮静剤にすり替えられていて、彼は船の上で目を覚まします。
そこである男から、謎のキーワード「TENET(テネット)」を聞かされます。
そして、未来から来た敵と戦い「世界を救う」というミッションを与えられる事になります。

そして彼はある研究所に行き、時間逆行装置と「時間を逆行する弾丸」の存在を知ります。
その弾丸の出どころを探る感じで話が進みます。

その後、彼は相棒となるニールと合流し、弾丸の出どころはロシアの武器商人セイターである事を突き止めます。

主人公達は、セイターに取り入るため、セイターの妻キャットと接触します。
キャットはもともと画商でしたが、セイターへ贋作の絵を売ってしまった過去があるらしく、セイターに、ある意味「囚われの身」となってたんですね。

主人公は、キャットの信頼を得るために、絵を破棄することを約束します。
そして、主人公とニールは、絵が保管されているというオスロの空港の管理室へ行きます。
しかし、そこで正体不明の何者かと乱闘になって、絵の破棄に失敗してしまいます。

そこから様々な事が判明していき、セイターは、時間逆行装置である「アルゴリズム」を使って、地球全体の時間を逆行させようとしている事が分かってきます。

「アルゴリズム」はその危険性から、それを開発した未来の科学者によって
9つに分解され、過去のさまざまな場所に隠されていたらしいんですね。

セイターは、すでにそのうち8つを手に入れていて、主人公たちは、セイターと、アルゴリズム最後の1つ「プルトニウム241」を奪い合うことになります。

エストニアで彼らは「プルトニウム241」を手にすることに成功します。
しかし、時間を逆行してきたセイターに奪われ、回転扉がある場所でキャットが「逆行する弾丸」で撃たれて負傷してしまいます。

主人公とニールは彼女を治療し、逆行してオスロの空港の倉庫に戻ります。

そこで主人公は、過去の自分と鉢合わせする事になります。
以前、オスロ空港で出会った正体不明の人物が自分自身だった事が分かります。

セイターは、自分が死ぬと「アルゴリズム」が起動するように設定していて、過去に戻り、自らの出身地であるスタルスク12で「アルゴリズム」を起動させる計画を立てていました。

それを知った主人公たちは、最後の望みをかけてスタルスク12へ行きます。
時間を順行する赤チームと逆行する青チームに分かれて、「プルトニウム241」を含む「アルゴリズム」の全てのピース奪還を試みます。

それと同じとき、キャットはセイターとベトナムにバカンスに行った日に戻り、過去の自分が息子とともに船を離れている間にセイターが自ら命を絶たないように見張ることになりました。

そしてスタルスク12での作戦が成功し「アルゴリズム」が分解された後には、キャット自らの手でセイターを殺す計画を立てていました。

しかし、彼女は我慢の限界を超えてしまい、スタルスク12での作戦成功の連絡が入る前にセイターを殺してしまいます。

そのころ、スタルスク12では、「アルゴリズム」を起動させようとするセイターとその手下 VS
「テネット」チームで、戦闘が行われます。

主人公は順行の「赤」チームから独立して「アルゴリズム」を奪いに行き、トンネルのなかに閉じ込められてしまいます。

トンネルの中「アルゴリズム」がある場所へは、鉄格子があり、中に入ることが出来ません。

その時一人の男が、「アルゴリズム」がある場所へ男たちが入れるように、内側からドアを開けます。

その男のバックパックには、オレンジ色の「お守り」が付いていました。
しかし、その男はセイターの部下に頭を撃たれてしまいます。

扉が開いたことで、主人公は「アルゴリズム」を奪うことに成功します。
逆行の「青チーム」として参加していたはずのニールが、同じ順行にも居て、トンネルに繋がる穴にロープを投げ込み、彼らを救出します。

作戦を成功させた後、彼らは再び「アルゴリズム」をバラバラにして過去に隠すことにしました。
別れ際、主人公がニールに、彼らを過去に差し向けたのはいったい誰なのかと尋ねます。

ニールは笑いながら、それは未来の貴方「主人公」だと言います。
そして「また会おう」と去っていきました。

そこで彼は、ニールのバックパックにオレンジ色の「お守り」が付いていることに気が付きます。
最初にオペラハウスで助けてくれたのも、トンネルの中で扉を開けてくれたのも、ニールだった訳ですね。

その後、新たな「現在」に戻った彼は、TENETのメンバーである「プリヤ」がキャットの命を狙っていると知って、自らの手で彼女を始末します。

ここまでが、大まかなシナリオになります。

時間が逆行する装置について

時間逆行装置には、時間が順行する「赤の部屋」と、時間が逆行する「青の部屋」があります。
それぞれの色の部屋では、それぞれの方向に時間が進む、または戻ります。
ちなみに、逆行の部屋は、逆行の空気で満たされている様です。(出たとき困るから)

時間を逆行させる装置には、独自のルールがあります。

1つめは、装置に入るときは、検証用の窓から自分の姿を確認すること。
これを怠ると、装置から出られなくなる。

2つめは、時間を逆行している状態では、肺に外気を取り込めないので、酸素マスクを着ける必要があるということ。

3つめは、防護スーツを着ずに過去の自分に直接触れてはいけないということ。
身体が対消滅してしまうそうです。

そして最後に、時間を逆行しているときは、熱エネルギーの作用も逆転するということ。
逆行している世界では、炎は熱を奪うとのことでした。

終盤の、アルゴリズム争奪戦では、「順行」の赤と「逆行」の青に分かれて、挟み撃ち作戦が行われます。
最後の作戦では、時間を順行する主人公たちのチームが赤、逆行するニールたちのチームが青の腕章をつけていましたね。

タリンのフリーポート

主人公たちは、大規模な作戦を決行しつつ、正体不明の逆行する車を利用して「アルゴリズム」の最後のピースであるプルトニウム241の奪還に成功します。

逆行してきたセイターには空箱だけ渡し、プルトニウム241は見知らぬ車に投げ入れます。

その後フリーポートで、キャットが「逆行する弾丸」で撃たれて負傷します。
主人公は、もう1度プルトニウムを奪い返そうと、逆行してセイタ―を追います。

その際、順行していたときにプルトニウムを投げ込んだのは、後に、逆行している自分が運転している車だったと判明します。

彼はプルトニウム奪還に成功したものの、またしても逆行してきたセイターにそれを奪い返され、車に火をつけられてしまいます。

このシーンは、相当難解ですw

この攻防は、いかにレギュレーションを熟知しているかが勝敗を分けます。
セイターに至っては、結果を見て、そのように芝居するシーンまであります。

ニールは凍傷になりかけた主人公を救出して、さらにキャットを治療しますが、「逆行する弾丸」で撃たれた彼女を回復させるために、逆行します。

逆行すれば、どんな怪我でも治癒する訳ではないようです。
これは、後で説明します。

再びオスロ空港へ侵入

逆行弾に撃たれたキャットが回復するまでの時間を稼ぐために、主人公たちは時間を逆行し、そのまま空港に戻ります。
(空港で順行に戻そうとしたのか?)

しかし主人公は、ジェットエンジンの噴射で倉庫内に吹き飛ばされていまいました。
爆発ではなく、噴射なので、吸い込まれるのと逆になる訳です。

そこで過去の自分と鉢合わせ、前回、倉庫へ行ったときに戦った正体不明の相手は自分自身だったと知った訳ですね。

スタルスク12での奪還作戦

主人公たちはセイターの計画を阻止するため、この時点まで戻ってきます。

このスタルスク12での奪還作戦は、オペラハウスでのテロ、そしてキャットたちがベトナムでクルーズ旅行をしていたのと同じ日に起こっていました。
この日は、14日とされる、ストーリー最初の日ですね。

セイターはこの土地でアルゴリズムを起動させる計画を実行しようとします。
しかしニールの活躍によって、「アルゴリズム」をセイターの手下達から奪うことに成功します。

この世界全体を時間逆行させる装置「アルゴリズム」は、再びバラバラにして過去に隠されることになりました。
別れ際にの主人公とニールのやり取りは、辛いものがありましたね。

主人公は、ニールがこれから過去に戻って死んでしまう事を知っていて、作戦のために、伝えることが出来なかった訳ですから。

クルーズ船でキャットがセイターを殺害シーンから

このとき、クルーズ船でセイターと過ごしていたのは、未来から来たキャットです。
彼女は主人公たちの仲間として、セイターを見張っていました。

セイターは末期がんを患っていて、彼が死ぬと同時に「アルゴリズム」が起動してしまうためです。

先ほどの、逆行すれば、怪我が治癒するのでは?という疑問ですが、キャットは、逆行弾による怪我であって、セイターの末期がんとは種類が違います。

逆行している本人目線では、自分自体は順行している訳で、セイターは、ガンを治すために逆行しても治癒しないという事が分かります。

しかしセイターを心の底から憎んでいたキャットは、スタルスク12から連絡が入る前に彼を殺してしまいます。

彼女がセイターを海に落とした時点ではまだ彼は死んでいなかったんでしょうね。
幸い「アルゴリズム」奪還作戦は成功したため、世界の破滅を阻止出来ました。

ニールをはじめとする「主人公」に関わった人たちは、未来からやってきた敵と戦うために“「無知」を武器にする”と言っています。

普通であれば、この先なにが起こるか知っていたほうが有利に思えますが、自分以外は、そのことを知らないので、知らせることは大きなリスクになります。

さらに言えば、逆行している本人も、逆行する前にすでに、自分が行った行動が適切ではなかったことを知っているだけです。

したがって、未来を変えるには過去の行動を変える必要がある訳ですが、もちろん、自分以外も変化します。
そのため、自分が行う行動の最適解はその場で考えて動くことになりますね。

そして望んだ結果を出すことができれば、その行動は未来というか今の自分から見たときに適切だったと分かる訳です。
ダメだったら、もう一度検討してリトライすることになります。

“知らない、知らせない”ことで、自分が予定外の選択肢をとる可能性を排除し、予測しやすい状態を作るという事かもしれませんね。

知ってしまうとエントロピーが増してしまう訳ですが、エントロピーの減少=能力であり武器であって、エントロピーをいかにコントロールするかというのが、生命の能力そのものであり、今回の映画における戦力にあたる部分になるという事だと思います。

最初に空港の保管庫に忍び込んだとき、主人公は未来の自分と戦い、そうとは知らずに殺そうとします。

ニールは彼が戦っている相手の正体を知っていましたが、理由を言わずに彼の「自殺」を止めました。

もしここでニールが相手の正体を明かしていたら、主人公のその後の行動はどうなっていたか分かりません。
つまり彼らがやってきた未来にきちんと繋がるかどうか、分からなんです。

映画終盤のスタルスク12での戦闘で、もっとも重要な役割を果たしているのがニールです。

彼は逆行部隊の一員として作戦に参加します。
しかし主人公とアイブスがこれから突入しようというトンネルの入り口に、敵が爆弾を仕掛けているのを目撃したあと、彼らを警告するために、急きょ順行して車で追いかけますが、結局主人公たちは気づかず、案の定トンネルに閉じ込められてします。

ニールは、さらに時間を遡って、先にトンネルに侵入して、扉を開けるという行動に移ることになる訳ですが、その行動自体は、戦闘が終わってアルゴリズムを奪還した後です。
したがって、このシーンは、映画内における最先端の歴史ではないという事が分かります。

というか、映画のシーン全て過去の話ですね。
この後、ニールに、未来のニールがさっき死んだよと言ってしまうと、歴史が大きく変えられてしまうことになるので、さらに上書きされる可能性が起こりますね。

このことから、未来で生きている人たちは、どんどん歴史が代わり、事実自体がどんどん上書きされているという事になりますね。
もちろん、未来人本人は、そのことに気づくことはありませんが。。。

キャットの息子である幼いマックスが将来
「ニール」になってTENETに参加するのでは?という説。

たしかにニールを演じるロバート・パティンソンは、本作では明るいブロンドに髪を染めていて、それがキャットとの血のつながりを思わせます。

まず本作における「TENET(テネット)」とは、未来の「主人公」が人類を滅亡から救うために作り上げた作戦であり、そのコードネームという事になっています。

『TENET テネット』のストーリーラインも回文のようになっていて、前半は現在から未来に向かって時間が「順行」し、そして後半では、ある地点からこれまでのストーリーを「逆行」して、別の物語が展開していくストーリーになっています。

本作で登場人物たちは、過去に戻るためにすでに経験したことをもう1度逆向きに経験しなければいけません。

それがこれまでのタイムトラベルものとの大きな違いであり、タイムトラベルではないタイムトラベルを可能にしました。

物理現象として、より可能性のある範囲にタイムトラベルを引き寄せることが出来ています。

『TENET テネット』が伝えたかったこととは?

セイターと主人公たちを分けたのは「テネット(=信条、主義)」の違い

セイターの目的は巨大な時間逆行装置である「アルゴリズム」を起動させ、地球全体の時間をさかのぼり全てを無に帰すことでした。

親殺しのパラドックスについて、未来人も意見が分かれていたのかもしれません。
後で説明しますが、未来人は、過去にどんな歴史改変が行われたかなど、なにも知りませんからね。

「過去に戻って自分の祖先を殺したら、孫である自分は消滅するのか」
という疑問に対して、実験によって立証することが出来ない為、未来人は、論理的にそれを予測するしかありません。
セイターたちは「祖先を殺しても自分たちには関係ない」と考えている訳です。
まあ、逆行した自分自身には、なにも関係ない事です。

セイターは、主人公達と大きく生き方が違います。
自分の生きる世界が全てであり、元々の世界に興味はありません。
考える意味がないと理解しているのだと思います。
だって、観ることも確認することも出来ない世界を救うって、どうなんでしょうか。

彼らの使っている時間逆行装置では、過去に行くことはできますが未来を知ることはできませんからね。

逆に、主人公達は“未来は変えられる”変えなければならないと信じているのだと思われます。
“「無知」を武器にして”未来を切り開くこと、それが彼の信条(テネット)だと。

この信条や主義の違いが、この争いを引き起こしていると言えます。

また望む未来を導き出すために“「無知」を武器にして”起こした行動は、未来から見ればそのときするべきだった事をしたことになりますが、

未来の人からすれば、それが過去そのものであり、どうでもいい事です。
知覚することすらありませんね。

この考えとニールがよく口にしていた“起こったことは仕方がない”
という考え方は、どちらかというと、セイターの信条に近いかもしれません。

疑問点を考察

『エントロピー理論』とは?

エントロピーが増大する理由
世界は、確率に支配されているというのが、量子力学における考え方です。
おそらく、今最も真実に近い考え方だと思います。

幸運が重なれば、バラバラにした腕時計が、箱を揺らし続ければ、いつか元に戻るという確率は、現実には起こりません。
これは、この現象に関係のある「相互作用」が大量にあるためです。
時計の部品の数だけの話ではありませんね。
その部品をどの順番で、どの角度から組み合わせるかと考えると、途方もないほどのパターンが存在します。

盤面を揺らしたとき、オセロなら64枚の石が、すべて黒になることはあるでしょう。
オセロが5個くらいだと、簡単に、全部黒になったりするかもしれません。

この数が増えれば増えるほど、それは、指数関数的に増大し、難しくなります。

ほとんどの場合は、白黒平均的な割合に落ち着くでしょう。
これが、エントロピーの増大の法則の本質です。

先ほどの時計だと、こんな確率など比ではないほど、確率が下がります。
私たちの見ているマクロの世界では、さらに選択肢は増えます。
それも、数十桁というスケールですから、マクロ視点では、まずエントロピーの減少は、起こらないに等しいと思います。

※統計力学において、乱雑さを表す物理量を、エントロピーと呼び、エントロピーの増大は、時間の経過により乱雑さが増すことを意味します。

どのくらい確率は増大するのか?

64の石が全て同じ色になる確率は、1/922京です。
まあ、出来ないことはない確率ではあります。
この、選択肢が裏か表しかない状態で、これだけの確率です。

三次元空間で、無限とも思える角度など、素粒子の数に匹敵する選択肢がある訳ですから、腕時計が組みあがる確率は、私たちでは数えられないほどの途方もないものでしょう。

量子の世界でエントロピーの減少が起こる理由は、ミクロだから。
ミクロでは、サンプル数が少ないため、エントロピーが増えているか減っているかを確認できません。
増えたとも減ったとも捉えることが出来るという事です。

また、量子力学でいう、観測者というのが、本人の信条や主義に当たると思います。

私たちが日常感じる現実というのは、生物の知覚がもたらす解釈でしかないというのは、量子力学が明らかにした世界だと言なくもないからですね。

生物が、エントロピーの減少を起こしているとは。

エントロピーを減少させるにはエネルギーが必要であるから、世界全体としては、エントロピーは常に増大しているという風に、科学的な合意が得られています。

生物は、細胞膜などを通して、物質を取捨選択し、エントロピーの減少を行っています。

疑問を解決

『時間逆行』の方法とルールとは?

映像を見れば、順行か逆行かは判断可能。
順行の人から見ると、逆行の人や物だけ逆再生だけど、逆行の人から見ると、逆行している人や者以外の世界全体が逆再生になる。

逆行の自分を見ないと、回転扉から出られない。

セイターが死んだ事で、未来が変わることを証明した。
ただし、未来が分かるのは、本人だけ。

逆世界の物質による傷は、逆世界で回復する。

『無知が武器』であるという理由

エントロピーの逆行は、複雑さからの回避である。
情報を知れば知るほど、未来が予測できなくなる。

挟み撃ち作戦は、未来で計画されて、二舞台に分かれる。
片方の舞台は、その時点から逆行して片方の舞台は、そのまま待機、同じ程度時間が経った段階で、えば10分双方順行の部隊は逆行し、逆行の部隊は、順行に移る。

結果、双方10分後に出会って挟み撃ち。
したがって、衝突時逆行チームは、結果を知っていることになる。

ビル爆破について

結局、順行側では、このビルは、スタートの時点で「下側が壊されていた」という事実になります。
この時、昔の記録との整合性は無くなりますが、事実は事実です。
不思議には思うでしょうが、何か知らない間に起こったことだと人は理解するでしょう。

この時、このシーンをビデオに映していたとしても、逆行破壊という事実は事実です。

問題は、このビルが建設された時まで、逆行して遡った場合どうなるのかという疑問です。

もし、私が目の前にあるメモに、丸を書いたとします。
逆行する別の人が、そのメモに書かれた丸を塗り潰したとしましょう。

そのまま、別の人が、私がメモに丸を書く所まで遡ります。
そうすると、私は、おそらく、最初から塗り潰された部分が存在するメモに対して、塗り潰しの周りに丸を書くという事になります。

もしくは、どこかで塗り潰しが起こります。
順行している私たちにとって、不確定な未来があるのと同じく、逆行から見た世界における未来、すなわち順行での過去は不確定だと考えるとつじつまが合うと思います。

『アルゴリズム』とは?

仕組みはあまり分からないw

世界全体を逆行させると、見た目順行になる。
エントロピーの増減が反転するけど、その世界の人はなにも変わらない。

なぜ、未来人は、アルゴリズムを破壊せず、過去に隠したのか?
後で説明します。

セイターの過去と『スタルスク12』とは?

セイターが回収した金は、過去から持ってきたようだったが?
セイターは、金塊を過去に送り続けている可能性があります。

要するにマッチポンプ。

したがって、あの金塊は、逆行物質であった訳です。
おそらく、順行物質に変換して使うのだと思われます。

そして、金塊を落としたときに、プルトニウム241(アルゴリズムの部品)も落とすんじゃないぞと言う。
このときのセイターは、プルトニウム241のやり取りを知っているセイターなんでしょうね。

要するに、登場人物がどの時間を経験した人物かは分からない。
それぞれが観測する登場人物は、すべて別人だと思っていいと思います。

『未来』では何が起きているのか?

未来人って誰よという事。
もしかすると、とんでもない未来の人かもしれません。
論理的に考えると、このような装置を開発出来るとしたら、1世紀以上あとの人類であることは間違いないでしょうね。
もしくは、過去の人類。

時間を逆行させる回転扉に最初に入ったやつは、過去に行って、回転扉を作成した?

一度、過去に回転扉を設置すれば、そこから更に別の人物が過去へ行くので、一瞬にして、全歴史に回転扉を設置したのと同じことになると考えることも出来ます。

まとめ

エントロピーの減少する世界があるかもしれないという話。

ループ量子重力理論による反転期は、もしかすると、エントロピーが減少する世界があるのかもと思わせます。

やるって決めた段階で結果が決まっているのか?について。

ビッグバウンスには、双極があるかもしれないという事。
私たちの知覚では、反対方向の物理現象に見えても、それはあくまでマクロを観測したときの
解釈でしかないため、もしかすると、反転しても同じ世界が進行するかもしれない。

宇宙の大半を占めている物質が、反物質になる。
ホーキング博士が予言した、ブラックホール蒸発によれば、ブラックホールには、反物質が大量に保存され続ける可能性があるんではないかと考えたりします。

宇宙の反転期に、それが逆ビッグバンになり、反転期の世界では、宇宙のはじまりが、最大宇宙であり、小さな火の玉であったビッグバンに向けて時間が進むとかね。

呼吸はピストン運動なので、大丈夫な気もするけど、ガス交換自体は化学反応なので、エントロピーの影響を受ける。

空気を吸うときは、順行では吐いている状態
肺胞では、酸素が奪われ、二酸化炭素が入ってくる。

空気を吐くときは、順行では吸っている状態
肺胞では、二酸化炭素が奪われ、酸素が入ってくる。

順行による酸化は、逆行で還元される。
ということは、肺胞では、還元が起こってしまって、赤血球の酸素は、常に奪われる状態が起こる。

二酸化炭素は、濃度の高い血中の方へ行くので、飽和するまで取り込まれるなど。

このあたりのレギュレーションについては、考え方によって解決することも、否定することも可能なため、映画で描かれた事実だけで解釈しない方が面白いかもしれません。

とにかく、逆行しているものと順行しているものは、隔離しないと存在しえない。

結果、宇宙服のような、その環境で化学変化しにくいもので覆う必要がある。
時間が経過すれば、皮膚さえ、かなり問題を起こすはず。

ここまで私が考察した内容は、すべてが劇中の事実に基づいたものではありません。
すべては、可能性の積み上げによって合理的な判断をしているに過ぎませんね。

事実、私たちが、物理現象すべてを把握している訳ではありません。
これは何も、ややこしい宇宙物理学とかの話ではなくて、日常のほとんどは、そうやって動いているという事を言っています。

例えば、毎日太陽が東から昇ってくるのは、その完全な理由を知っているからではないですね。

昨日、同じことが起こったからとか、皆がそう信じているからとか、沢山の要素を元にして結論を導き出した結果、太陽が東から登ることが分かっている。

という解釈が可能になります。

こういう思考方法を、演繹法と言います。
実は、劇中でプリアの旦那が吐くセリフです。

これに対して、帰納法という思考法がありますが、これは、事実のみを積み上げてまとめ上げて結論に至るという思考方法なのですが、厳密に言うと、人間にこの思考は不可能です。

どちらにせよ、人間が普遍的だと思い込んでいる事実の積み上げでしかありませんから、結果的にすべては、演繹法による思考になる訳です。

ここからも、私たちが生きるマクロの世界は、確率の上に存在する確実性を伴わない世界だという事が言えるのだと思いますし、この映画では、それを表現しているのだと思われます。

と、このように、私たちの世界は、どちらともいえない、可能性の高いものが事実と認識され、世界も、可能性の高い方に流れていくという事が分かると思います。

ちょっと関係ないけど、争いごとにフォーカスすると、無限に行き来できる訳だから、組織の数が多い方が有利である。

もしくは、組織自体「未来を知っている」をその時点で壊滅させる必要がある。
そうでないと、過去に戻って何度でもやり直すことが出来るから。

回転扉の存在を知った誰かが、回転扉を使って何年も過去へ行っていた場合、登場人物がいくらあれこれしようと根底から覆されてしまいます。

セキュリティは万全か?
本当に認識されている回転扉以外に回転扉は存在しないのか?
など、確率論でしか語れない出来事だらけです。

この世がエントロピーの増大によって作られているとすれば、未来と過去は常に不確定。

私たちの存在が、確率が形となった世界だと考えられるので、過去を書き換えれば、確かに現在は上書きされるでしょう。
要するに、主人公すなわち、逆行した本人以外から見たタイムラインの実態は何も変わっていないという事が言えます。

なぜなら、ほとんどの事は不確実であって、変わった変わらなかったという話にはならないからです。

さらに言えば、私たちが感覚から得られる少ない情報からの判断、すなわち、演繹法なのだから、今起こっている解釈だけが事実であり現実だと言えるんですね。

光も逆に進んでいる?
おそらく、素粒子について変化が起こっていないと考えるのが妥当です。
あくまで、エントロピーの逆転。

したがって、素粒子ではない酸素とかなんとかは、逆転する。

量子論における不確定性原理は、観測可能な事実です。
この不確定性原理が、素粒子の位置と速度が同時に決まらないことだとすると、そもそも位置と時間の関係は、マクロの確率が起こす現象なんでしょうね。

観測者と観測対象の間にも、素粒子同士と同じく相互作用があると考えられています。
ここから考察するに、回転扉を出て、もし逆行を見なかったら、関係は崩れますね。

でないと、逆行の自分は存在するか否かが不確定になるからですね。
下手したら、居なくなるか、場所が変わるか、速度が変わってしまう。

全ての可能性は同時進行で存在するので、最初からパラレルワールドであると言い換えることも出来ます。
あくまで、パラレルワールドではありませんが。

現に、この現象を利用して量子コンピューティングは行われていますからね。
同時にすべての可能性を計算するということは、それらが存在し計算出来ていると考えます。

また、世界は、観測者が「どう見えているか」という事でしかないと言い換えることも出来ます。

エントロピー増大は、独立した空間内でのみ把握が可能なんですが、例えば、エアコン、その場は冷やすが、部屋全体は温まってしまいます。

室外機を外に出しているので、空間は独立しておらず冷やすことが可能なんですよね。

無知が武器で、もう一つ。

私たちの思考は、連続性の賜物です。
過去起こったことを記憶して、それと比較することで思考します。
記録も同じことです。

こういった時間の流れの軸で活動することを連続性と言いますね。
三次元なのに、時間を足して四次元だと言ったりするのもこのためです。

我々は、連続性によって、常識を作り出します。
そして常識は、物事を捉えづらくします。

日常で私たちは、知っていることを再度考察することはありません。
しかし、時間を逆行するような世界では、この人間の認知そのものもあてにならない世界です。

さらに言えば、知っていると不利になるという事が、私たちの日常でも沢山起こっていますよね。
バイアスです。

未来を知ってしまう、すなわち、未来を恐れるとだとすると、この映画の世界では、極めて不利になります。

そして、私たちが時間を感じることが出来るのも、ミクロの世界のふるまいを理解していないから、すなわち無知だからに他なりません。
これは、ループ量子重力理論の第一人者カルロ・ロヴェッリが言った事です。

時間の矢と知識の矢、観測も物理現象である事を、この映画を通して再認識しました。

核分裂反応が発見されたとき、連鎖反応によって、すべての物質が反応し、世界が滅びるかもしれないと考える学者も居ました。

粒子加速器によって作られるブラックホールによって、地球が飲み込まれてしまうのではないかという学者も居ました。

今回の世界のエントロピーを逆転させるアルゴリズムも、同じことなのではないかと思われます。
核連鎖の様に時間が崩壊する事態は起こらない可能性が高いですね。

もちろん、劇中では、それを実践した人はいませんし、そう思い込んでいるという可能性も否定できません。

赤と青について
宇宙は膨張していることが分かっていますが、私たちから離れていく星は、赤方偏移します。
そして、近づく星は、青方偏移します。

宇宙の星々は、離れて行っているので、赤方偏移しますから、インフレーション宇宙である赤が順行、逆の青が逆行となったんでしょうね。 
監督拘りますね~

車が燃やされ、凍傷になるシーン

セイターは、逆行状態で火をつけている。
逆行火炎
逆行火炎によって引火したガソリンは、順行上では、火が消えるが、順行目線では、火が付く形にはなる。(順行火炎かもしれません)

火炎自体は順行なので、主人公自体の温度が奪われる。
結果、主人公の目の前にあったガラスの温度も下がることになる。

空間にいる主人公が逆行でなければ、温度が元に戻るだけですが、物理現象自体が逆転したものは、互いに私たちが知る物理現象と同じになると思ってはいけません。

通常は、熱いものが近くにあると、熱を供給されますが、熱いものが近くにあると、熱が奪われる世界をイメージする必要があります。
結構、時間の流れとエントロピーを混同してしまいがちです。

未来人

未来人は、今の事はどうでもいいと思っていると思います。
何故かと言えば、未来人にとって、彼らの「今」は変わらないからです。

未来人は、過去が塗り替えられたことを知ることが出来ません。
変えられた過去が、イコール現実ですから。

したがって、未来人にとって、過去を変えるメリットは無いと言ってもいいでしょう。
そもそも、未来人は、何らかの障害を回避するために、世界そのものを逆行させようと考えて、アルゴリズムを作った訳ですから。(これが真実なら)

それに、未来人が、この世界を逆行させ消滅させる「アルゴリズム」を、過去に隠すというストーリーそのものが不自然です。

やばいなら、破壊すればいいだけですし、なんだったら、過去にそれを送り込むことそのものが、大きなリスクになってしまいます。

もっと言えば、逆行しているように見える現象は確認できていたとしても、それによって、未来が変化しているのかどうかは、逆行した本人しか分からない。

それも、複数人同時に逆行したとしても、観測できない相手が起こした行動は分からないので、結果的にそうであったのだろうと考察することしか出来ません。

未来人は、そうであろうという事しか分からないという事です。
未来が変わることや、パラレルワールドではないこと、時間に関するあらゆる可能性を排除することが出来ませんね。

だって、だれも結果を見ることが出来ない訳ですから。
過去を変えた本人も、それを知った時点で過去の人だし。

アルゴリズムは、セイターが幼少期の頃、手に入れています。
とすれば、少なくとも40年以上は、未来人が過去にさかのぼったか、その時代ごとにリレーしていったかのどちらかという事になります。

この物語では、主役である「名もなき男」が主人公であり、テネット奪還を指示したのも「主人公」だという事が分かりますが、

アルゴリズムを隠そうとした本人であるかどうかや、本当の黒幕であるかどうかなどを、彼らの言動から読み取るというのは不可能です。

だれも何も知らないし、知らない人が、聴いたことや体験に基づいて喋っているに過ぎません。
順行だけの世界においても、分からないことだらけだし、自分も含め、人の記憶ほど信用ならないものはありません。

したがって、逆行可能な世界においては、誰もが皆、自分が主人公であるという事以外、なにも分からない世界であるということです。

結果、劇中で説明されているもしくは伝えられている未来人の意志というのは、嘘であるか間違いである可能性が高いと思われます。

このお話は、量子重力理論やサイクリック宇宙論で考えると、これが現実に起こり得ることが分かってきます。

サイクリック宇宙論とは、ざっくり言うと、物事に始まりや終わりが無いという考え方です。
これは、ループ量子重力理論でも解説しましたが、宇宙は膨張と収縮を繰り返していて、その中に私たちは存在するというものです。

さらに言えば、この膨張収縮を行っているかもしれない宇宙においても、確率が生み出した虚像であるかもしれないという事なんです。

我々は、物事に最初が無いなんて想像出来ませんよね。

宇宙を超えた、この世界において、確率「ランダム」と言い換えてもいいですが、私たちが目にするマクロの世界では、常識外の事は起こり得ません。

なぜなら、ランダムの集合は、一定の常識を産んでしまうからです。
それは、方向であったり、長さで合ったり、重さで合ったりするでしょう。

ランダムを起こす何か。
宇宙を生み出した何か。。。
それは、すなわちランダムを起こせる「より簡単なモノ」であるという事でしょうね。

今分かっている範囲で想像するなら、素粒子。
量子重力理論では、素粒子はつまるところ、空間そのものであり相互作用そのもの。
要するに、情報という事になります。

私たちの理解できる言い方だと、この、より簡単なものというのは、意識でしょうか。
この意識がランダムに存在する世界を想像すると、なんとなくではありますが、最初を考えることから逃れられる気がします。

この映画は、何度も視聴して楽しむよう構成されていると思われます。
また、SNSなどを通じて、より映画を何度も観るというモチベーションを上げることに成功しています。
新しい映画の楽しみ方を発掘したノーラン監督は凄い。

生命とエントロピーについて
見方を変えると増大しているエントロピー

時間にはいろいろなカテゴリーがあります。
生物学からみた時間や、認知学や心理学からみた時間などです。

じつは時間の逆戻りを考えるうえでは、それらの視点も欠かせません。
結局、「時間」を認識するのは生物である私たちにほかならないからです。

読んで下さってありがとうございます。