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悔しい、って感情を忘れたくないな

特別な存在の友人がいる。

大学で出会った彼女には、いろんな感情を持ってしまう。

単純に一緒にいて楽しいし、刺激的な時間をくれる大切な友人だ。大学時代には何度も一緒に海外へ旅をした。他の人には言えないようなことを話したこともあるし、彼女もまた私に打ち明けてくれたこともある。いつも自分の感情に素直で、だけど他者にも心を配っている。突拍子もないような言動に驚かされるけど、理由にはちゃんと自分の揺るがない軸がある。

いつも頼れて、尊敬し、憧れて、たまにつらくなる。

つらくなるのは、いつだって自分に自信がないときだ。

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「今日は転職の話がしたかったの!」

同棲している彼との話や、料理に凝ってること、スポーツを始めたこと、お互いの仕事の話から、そういえば、というふうに切り出した。

意外だった。彼女は理系で大学院に進み、就活のとき必死でもがいている頃を知っている。その道の大手企業に入社して3年目、たしかにハードだけど仕事への誇りややりがいを語っていたから、転職を考えているとは思わなかった。

聞けば、工業系技術職ともなると、結婚・妊娠・出産の女性特有のロールモデルになる人が存在していないらしい。ほぼ男性社会のハードな組織で、そこを切り拓いていくことがどれだけ難しいかは容易に想像がつく。「だから、働き続けるイメージができなくて」とこぼした。

「転職とか考えない?」

来た。心に黒い煙のようなものがゆらゆらと広がっていくのが分かる。

されたくない質問だった。

「したいよ。する、するけど…今じゃないかなって…」

歯切れの悪い答え。自分でも、情けない声だと思った。もうずっとそのことで悩んで、考えることから目を逸らして、悩んでを繰り返している。

行動にうつそうとしても、今の自分には胸を張れるスキルなんて無い。足元がグラつくような感覚になる。向き合わないといけないことは分かってるけど、こわい。

「そう?でもここ3か月でも何人か転職してるよ!大丈夫だと思うけどなー。私もそろそろ考えないと」

『今じゃない』の言葉をコロナ禍にある転職市場の状況と指して彼女は言った。

私の言った『今じゃない』は、コロナの前から言い続けている言い訳でしかない。

彼女の話す“転職に成功した人たち”は、彼女と同じように将来を真剣に考え、仕事に正面から向き合って、能力やスキル、経験、信頼を得てきた人だ。

(その人たちも、あなたも転職できるよ。絶対に。)

その先も、思ったけど、言えなかった。

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将来の話になると、いつも決まってみじめな気持ちになる。

今までに納得して、受け入れたはずの過去が、またどうしようもなく価値のないものに思えてしまう。

過去を振り返ったとき、生き方は自分で選択してきたんだからと受け入れられる。

だけど、キャリアや仕事へはぜんぜん自信がないままだ。

彼女といてつらくなるのは、自分ができないこと、できていないこと、してこなかったことの現実を突きつけられて、その時間と行動の差に劣等感を感じてるからだ。

勝手すぎることにも気づいてる。家に帰って、思い出して少し泣いた。変わろうと思ってひとつ行動はしたけど、そこから今何が変わった?何をした?明らかに行動が足りてないことにも気づいてる。向き合うしかないのだ。

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