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『戦利品』と呼ばないで

文学フリマ東京38に出店するにあたって、どうしても書いておかなければならないことがござります。なるべく軽い感じで書くので、まぁお読みいただけるかたは流し読みしてくださいまし。

これまで私のZINEを買ってくださったお優しい皆様にはそういうかたはいらっしゃらなかったのだけれど、もしかしたら! ひょっとしたら! 今後私のZINEを間違って買ってくださるかたが現れた際に、お互いにとって不幸な結末にならないように、ひとつだけお願いがあるのです。


『戦利品』って呼ばないでくれよ。

私がせっせと作ったものを、私がいいと思う著者にお願いして書いていただいた作品を、あなたが正当な対価を支払ってお買い上げくださった品物を。

暴力で奪い取って手にした獲物みたいに言わないでくれ。


『戦利品』という言葉の本来の意味を辞書で引けば、書き方は違うとしてもどんな辞書でもまずいちばん最初に必ず「戦争で敵から奪い取った領土や物品」という意味が載っている。




近年では転じて「苦労して得た品物」という意味で広く使われている。この意味について詳しく書いたサイトを見つけたのだが↓

https://okikura.jp/senrihin-meaning/

ここではむしろ『戦利品』の本来の意味について

“今は日常的にそのような使われ方はほとんどしません。”

https://okikura.jp/senrihin-meaning/


と書かれており、まるで本来の意味を気にするほうが悪いような論調に感じてしまった。


だが本来の意味で使われる『戦利品』という言葉は遠い昔の死語ではなく、今なお世界中で生きている言葉だ。国によっては日常的に使われる言葉でもあるだろう。

ガザでおどけて写真をおさめるイスラエル兵が立つ土地。

ロシア兵がウクライナから持ち出したスマートフォンやテレビや冷蔵庫や洗濯機。

もっと言えば、まだ百年も経たない近代に、日本が侵略し支配下に置いた東南アジアの国々の土地。そこに住んでいたひとびとの財産。

その本来の意味を踏まえて、日本人が日常の買い物やらイベントやらで得たものを『戦利品』と呼ぶこと。

そこまで考えてなお「いや私は私の考えがあってあくまで『戦利品』という呼び方にこだわります! 信念を持って使い続けます!」というのなら、その意見も尊重されるべきだ。


だがしかし、それなら私が私の作ったものに対して「私のZINEを『戦利品』だなんてお呼びにならないでいただけますこと?  そのようにお呼びいただくならお買い上げご遠慮くださいませ!」と主張するのも自由だ。


そして、こういう点で意見の合わない者同士は文章を読んだところで永遠に分かりあえないだろうから、買ったり買われたりせずにお互い距離を取って関わらないという選択肢はお互いにとって平和的な解決になるだろう。


というわけで、ここまで読んでご不快に思われたかたは、まぁ元々無名の私のことなぞご存知ないでしょうし興味も買う気もお持ちでないとは重々わきまえてはおりますが、一応まかり間違っても私めのZINEはお買い上げにならないでくださいませ。ごめんあそばせ。









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