見出し画像

【文学フリマ初挑戦】PhotoshopもInDesignも使えない私がWardと写真切り貼りの超アナログスタイルで白黒コピーZINEを作る話

どういうわけだか衝動のみでZINEを立ち上げてしまった私が、ついに文学フリマ東京に初出店してしまいます。今風にZINEと呼ぶより昭和風に文芸同人誌と呼ぶのがしっくりくるような白黒コピーの冊子をひっさげてアウェイに乗り込むことになりました。私自身はこのようなダサさの塊なわけですが、それでも創作とかしていいんじゃね!?  それが文学なんじゃね!?  ということを叫びたくてこれを書いています。

なぜ私がZINEなど作ったかといえば、ネットで出会った好きな著者様や絵師様に書いてもらいたいというただその欲のみ。自分で書くのも好きだけれど、誰かに書いていただいてそれを読むのもめちゃくちゃ幸せなことです。元々はただの本好きだった私は、好きな本をオススメしたいばかりに一箱古本市(本のフリマのようなイベント)に出まくるようになり、告知も兼ねてツイッターを頻繁に更新していたらウェブの書き手さんとの繋がりもでき、自分も長文を書くようになりました。自分が読んで「これは読んでほしい! オススメしたい!」と思った著者様の作品を、オンラインの枠を越えた新しい読者にお届けしたくなったのがZINEを作り始めた動機です。

執筆して頂いている皆さんについては
↓こちらをご参照ください。



そんな「いい作品をお届けしたい!」という気持ちだけはあるとはいえ、私の普段の仕事は小さな雑貨屋の平店員。アナログな職場で、きちんとしたマーケティングの知識もなければ編集の経験もありません。毎日しているのはひたすら商品を並べて店内を掃除してお会計することのみ。いまだにFAXが主流の店でPOPも全て手書き。PCは全く使わず店にもありません。PCスキルはWordで文字を入力することならなんとか……という程度。
こんな人間が書き手さんの作品をお預かりして編集していいのだろうかと悩みつつ、それでも自分にできる最善の方法を模索してなんとか形にしてきました。

ZINEを編集するにあたって意識したのは以下の点です。

①作品の個性やよさが最大限伝わるように

いちばん大事なのは作品のよさが伝わること。自分が作品のよさを理解し、それがいちばん伝えられる見せ方を考えること。これはとても難しいことで、今の自分にそれが100%できているとはとても言えませんが、そこを目指して努力しています。

先程「見せ方」と書きましたが、本当は「魅せ方」と書けるくらい作品をしっかり魅せられるようになりたいものです。

著者の皆さんは、私が作品をネットで拝見して「これはいい!」と思ったかたたちばかり。私は私の書いたものには全然自信がないのですが、自分のいいと思う感覚は信じています。


②ビジュアルを挿入し、見やすいように

とはいえ文章ばかりだと気軽にパッと手に取ってもらいにくいのでは……と、文章に添えて写真やイラストを入れるようにしました。

Wordに文字を打つくらいしかできないのにどうやって写真やイラストを編集したのかといえば……ずばり切り貼り!

自分で描いたイラストや、スマホで撮った風景や建物や植物の写真をプリントして、白黒コピーして本文にあわせてハサミでチョキチョキのりでペタペタ切り貼りしました。

写真を切り貼りした原稿の一部分
ハサミで切るのが下手くそで
少し曲がったりしています
それも味ということで

PCがちゃんと使えたならちゃちゃっとスキャンしてちょいちょいなのでしょうが……。逆にこの曲がった線なんかは機械には出せないのではないでしょうか、という言い訳。


ただ、ビジュアルを入れるにしても主役はあくまで作品。作品を読む上でノイズになったり著者様の意図に反しては逆効果になってしまいます。

これでいいかしら……と著書様に確認することも度々でした。ちょっとしつこいかな……とも思ったのですが、皆さん忙しい間を縫ってご確認くださり、とてもありがたかったです。

ただ、これについては悩ましい部分もあります。本来、ビジュアルなどなくても作品単体で味わって十分素晴らしいものを、映えるようにいじることの是非をいつも考えています。ビジュアルが入ることでイメージが固定され、読者が自由に読むことの妨げになるのでは、とか、作者の意図とビジュアルが一致しているだろうか、という悩みがつきません。これは簡単に答えを出していいことではないので、これからも迷い続けていきたいです。




③誤字・誤植などがなるべくないように

ノイズになるものがなるべくないように、表記の統一ができているか、誤字脱字等ないか何度も読み直し・見直しをしました。ページ送りなども読んでいるときにスムーズになるようになるべく調整して、細部にも全体にも目を配りました。


そんな感じでなんとか作っているのがZINE『読みたい夜に』です。


印刷はキンコーズの高機能コピー機を利用しています。↓このキンコーズ公式の動画を見ていなければ、私はコンビニコピー機を独占して店員さんに嫌がられながら大量のコピーをし、それを泣きながら自分で折って本の形にするという超大変な作業をするはめになっていたことでしょう。
キンコーズ様ありがたや……。

https://youtu.be/YE1lJpHAmLo?si=0vsMbxZmIHwjT3D7
白黒コピーでも表紙に色のついた紙を使うと結構きれいに見える気がします!

しかし、印刷所を利用して綺麗に製本されたものと比べるとやっぱり見劣りしてしまうのも事実。


少し前にZINEのイベントに出店しました。そこには皆さんが想いのつまった素敵でオシャレなZINEをたくさん並べていました。……正直、ちょっと自信をなくしかけました。どう見ても私のコピーZINEはオシャレなデザインできちんと製本されたものと比べてしまうと見劣りします。

改善のためZINE販売の講座に顔を出してみたところ、そこにいたかたは皆さん仕事でマーケティングをされていたりデザインや編集をされていたりという場合が多かったです。ZINEの世界にはそういうオシャレ最先端のかたがゴロゴロいるようです。

そのイベント講師の方はこんなことを仰っていました。

「ZINEを作らなかったら、起きなかったこと、生まれなかった出会いがある」

確かに私がこのZINEを企画しなければ、このZINEのために書いていただいたあの作品もこの作品も、書かれなかったかもしれない。そう思うと、しぼみそうな気持ちも前向きにできました。

ただし、動かなければ負わずにすむ傷というのもあるはずなのです。私はどちらかというとそういう暗い部分のほうに目が向いてしまう。

だいぶへこみながら……ふと自分に問うたのです。


ZINEがたくさん売れたら、それでいいの?

誰に読んでほしくて、このZINEをつくっているの?



自分の答えは「たくさん売れたらそれでいいのではなくて、お好みに合うかたにきちんと届くよう、ZINEの内容や特徴を分かるようにお伝えしてていねいにお売りしていきたい」ということでした。


見た目はいまいちかもしれない。でも中身にはよさがある。そのよさを伝える努力を自分はしてきていたのか。いまするべきなのはそこではないのか。「私のつくっているZINEはこういうものです」と地道に説明していけば、お好きなかたに届く確率もふえるはず。

そのためにできることをしていこうと思いました。

講座で頂いたアドバイスもあり、会場でZINEの切り貼りした原稿を展示することにしました。また文フリに合わせてつくった新刊のZINEでは、序文やあとがきでこのZINEの概要が伝わるよう意識しました。


序文の一部分



あとがきの一部分


ZINE『読みたい夜に』は、自分の言葉で自分の世界を綴るものたちの集う場所です。知らない誰かの気配を言葉に感じたいあなたに、ちょっぴりひねくれてちょっぴりマニアックでだいたいネガティブで時々前向きで、なにより夜にひとり静かに本を読む時間が好きなあなたに。

いつか見つけていただけますように。



※初出店するのは2023年11/11文学フリマ東京でブースは「す―8」です!
Webカタログはこちら↓
https://c.bunfree.net/c/tokyo37/33575




この記事が参加している募集

文学フリマ