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【鎌倉殿の13人】今年は三谷幸喜の加護を受けた小栗旬&大泉洋らに期待が止まらない

 今年も始まりましたね、大河ドラマ。昨年は、明治時代に日本の資本主義経済を作り上げた、渋沢栄一を主役に据えた「青天を衝け」が数か月遅れで放送。この作品では、彼の経済家としての活躍を中心とするのではなく、彼にとっての’’青春’’であった幕末での成長・活躍を描いたのが印象深い。この作品も名作大河の一つなので、またどこかで語りたいですね。

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 今作は、「真田丸」(2016年放送)で一世を風靡した三谷幸喜先生が描く、後の執権、北条義時が主役。彼を演じるのは、昨年末同じ日曜夜を騒がせ続けた、「日本沈没ー希望のひとー」で主演を飾ったのが記憶に新しい小栗旬だ。

 本日、そんな「鎌倉殿の13人」の第一話が放映された。


令和に創られる平安末期という世

 よくフィクションで描かれる戦国時代や幕末と違い、平安末期とは日本文化の発展途上な時代だ。礼儀作法や武術は確立されておらず、言語ですら今や戦国時代とも大きく異なる。古い時代故に、前作「青天を衝け」と違い、史実に基づきつつも、細かなストーリーは独自性を持たせてもかまわない。この時点でオリジナリティに定評のある三谷先生の筆に合いそうな世界観設定だ。

 文化の最先端である京を知る源頼朝、平清盛を始めとする人々は、より高貴な言葉遣いと所作を演出し、対して伊豆というド田舎に暮らす北条一家ら坂東武士たちは言葉遣いも荒く、武芸も荒っぽい。1話の最初と最後の北条義時と姫(?)の逃走シーンや北条家の軍備のシーンでも、武術や装備の発達途上具合が垣間見える。薙刀や弓矢、弾丸を喰らうことなど知らない薄い鎧、そして兜ではなく烏帽子などなど、大河ドラマなどのフィクションには珍しい様相だ。この差を描くことができるのは、この平安という時代設定だからこそ。この令和の世の技術や時代考証を駆使し、リアリティを持たせてテレビに描く。今後登場する源義経や木曽義仲らとの文化的格差にも注目していきたい。


解像度の高い源頼朝という男

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 近年、俳優大泉洋氏のコメディアンぷりに拍車がかかっているように思える。え?「水曜どうでしょう」の頃からこんな感じだって?そんなの知りません。僕生まれてないので(笑)。

 冗談はさておき、「ぴったんこカンカン」でのバラエティという場の盛り上げっぷり、福田雄一監督の「新解釈・三国志」でのムロツヨシ氏との掛け合い、そして忘れてはならない昨年末の紅白歌合戦での活躍など、彼自身の面白さをいかんなく発揮している。彼が築き上げた人気っぷりはツイッターのミームからも感じられる。

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い つ も の

 しかし忘れてはならないのは彼が名俳優ということ。三谷先生が前回描いた「真田丸」では、大泉氏は父昌幸や弟信繁とは違って真面目に努める真田源三郎信幸/信之を好演した。彼の真面目さが故に空回ってしまうコメディリリーフな役回りもあったが、ギャグ要員で終わるキャラクターではなかった。官位を受け取るにあったっての弟との喧嘩での台詞、犬伏の別れ、父から受け継いだ「幸」の字を捨てて父弟を救う決意の表情、大坂で死のうとする弟を止めようと奮闘する姿、そしてもう会えない父弟を偲んで未来へ歩き出す彼の背中。信之というキャラクターは真田家の船出を未来へつなげ、物語を締める役割を背負うために、より解像度の高いキャラクターとして創られたように思う。

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 今作で同氏が演じる頼朝というキャラクターも、現時点では一回り周囲より解像度の高いキャラクターになっているように思う。1話終盤では、自分と八重(演:新垣結衣!!)の子である千鶴丸が、自分の監視役伊藤祐親に殺されるも、彼はこう語る。

「あの子は人懐っこい子だった」
「これがあいつの天命だったのだろう」

 頼朝という男は、物語開始時点で流刑に処されている身だ。平治の乱で父を殺され、兄2人を殺され、家来を殺され、唯一の肉親である弟とは離れ離れになる。罪人という身分もあり、肩身も狭い。だからこそこんなに達観した考えをしているのだろうか、身内の死になれているのか。

 答えは否。彼は数少ない家来に命じる。

「(伊藤)祐親を殺せ…!」

 彼が周りから、平家から悟られないよう隠し持っていた平家への怒りが、闘争心が、彼の野心が、顔を出す。「源頼朝」というキャラクターを確立した1話の中でも一番の名シーンだろう。彼が日本初の武家政権を確立し、死ぬまではあまりにも前途多難で、非常に繊細な心情を表現する必要がある。だからこその大泉洋氏の起用。「真田丸」でのあの丁寧な大泉洋の使い方を実践した三谷氏なら、視聴者もそのキャラクターに信用できる。これからの三谷氏の頼朝という男の動かし方に、期待と注目していきたい。

個人的これからの注目ポイント

 ここまで長々と書いたので簡潔に…

〇三谷節炸裂な北条家+頼朝のホームドラマ

 大河と言えば家族でのほんわかとしたシーン。「真田丸」成功の要因の一つであり、やはり今作にも期待が大きい。1話から北条家のキャラの濃く、楽しい団欒を見ることができたので、今後も間違いないだろう。

〇後白河法皇(西田敏行)&平清盛(松平健)とかいうやべーやつ

 誰だよこのキャスティング考えたやつwww加減しろバカ!wwwwwww(褒め言葉) 腹の底で何を考えているのかわからない威圧感を劇中だけでなく、お茶の間に与えそうな布陣。この二人なら   もしかして鎌倉幕府成立前に源氏勢力滅亡させそうで怖い。

〇鎌倉幕府成立前後の殺伐とした生存・権力闘争

 血で血を争う源平乱世は、日本で最も激しく、野蛮に権力闘争が行われたのではないだろうか。頼朝らの勢力は平家だけでなく、親戚にあたる木曽義仲、実の弟である義経らの勢力を亡ぼす。幕府成立後も、北条義時らは権力を狙い、重要御家人だけでなく将軍が2人をも手にかける。肉親、友を手にかけるときの頼朝・義時らの丁寧な心情描写に大きな期待が寄せられる。

〇音楽と合戦と政戦

 前述したとおり、剣術の発展していない野性味あふれた合戦と権力を巡る政戦がバトルの中心となる今作。そんなバトルを彩る音楽にも注目だ。1話ラストから、ベートーヴェンの第九のアレンジverを背に馬をかける義時は、なかなか大河では見られない映像だ。どんな音楽で旧来の大河ドラマとの差を魅せていくのか。義時たちの世の中の変革とともに、どのような変革をしていくか。目も耳も離せない。



 今までフィクションで描かれることの少なかった平安から鎌倉にわたる乱世。三谷幸喜先生の描く北条家が、源氏が、彼らが、どのように乗り越えていくのか。一年間の楽しみが、乱世が、今日から始まる。

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