1.これが生徒会

【登場人物】

高木 秀才(たかぎ ひでとし)→主人公。身近な人からは(ひで)と呼ばれる。中学2年生。所謂"厨二病"(重度)。それ故気持ち悪がられる事も多いが、真面目で一生懸命な性格で人の為に動く事ができるので一度好かれると大事にされる。生徒会長という存在への憧れが異常に強い。

原 春(はら はる)→秀才の親友。小3の時に高木家の隣に引っ越して来てから高木家とは家族ぐるみの付き合い。秀才の変わり者っぷりに振り回され苦労する事も多いが、決して見捨てない。秋とは双子。

原 秋(はら あき)→秀才の親友。漫画によく出てくるような元気っ子。春とは双子。


これが生徒会

ナレーター:とある公立中学にて新しく生徒会長に就任した生徒がいる。高木 秀才!容姿まあまあ、成績そこそこ、性格………痛い。


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ナレ:時はのっけから遡り、秀才2年生の4月。

原家に来ている秀才。

秀才:俺!生徒会長になる!

全く気にしない春。

秀才:俺!生徒会長になる!

春:いや、もう分かったって!

ナレ:秀才の「生徒会長になる宣言」に聞き飽きているこの少年は秀才の親友、原 春である。

秋:(深いバットに直接流し込まれ作られたプリンを持っている)お待たせ!お母さん特製プリンでーす!

ナレ:こちらは同じく秀才の親友で、春とは双子の秋である。2人は男女の双子ながらとても仲が良く、中学生となってもよく一緒に遊ぶ。かつては世間の"双子を見る目"に嫌気が差し、互いを避けるような事もあったのだが、それ程瓜二つでもなく、世間が思う"双子っぽさ"があまりない為、次第に双子双子と持て囃される事もなくなり、仲良しに戻ったのであった。

バットに入ったプリンを3人分皿に取り分ける秋。

秋:はい、どうぞー。

春:お母さんもちゃんと個別の容器に入れて作れば良いのにね。友達も来てるのに。

秋:まあまあ。秀は家族みたいなもんだしいいじゃん。

春:まぁ…秀はまだね。でもさ、いつだっけ?お父さんの知り合いが来るって時も、お茶菓子にって用意するのは良いけどなんか適当なボウルで作ったムースか何か出そうとしたじゃん?あれはないって。

秀才:そうか?君らの母上の菓子はいつも美味だぞ?

春:美味か(笑)……お菓子作りは好きだって言うし、確かにうまいとは思うんだけど。


秋:それよりさ、今日の実力テスト?とか言うの、どうだった?まだ4月だよ!?実力も何もなくない!?

春:去年ちゃんとやってたかって事でしょ。秋はやっても"テスト勉強"しかしないからなぁ。抜き打ちだとホント駄目だよね~。

秋:全然やらないよりマシだもん!

春:去年の抜き打ちテストで解答欄に「分かりません」とか書いてたのは笑ったわ!

秋:あー!あー!聞こえない!何も聞こえない!

からかう春とブーブー文句を垂れたり騒ぐ秋。それを見て感動する秀才。

秀才:お…お兄ちゃんだ…!

春・秋:は?

秀才:春!お前はやっぱり"お兄ちゃん"だな!

春の肩を掴みガクガク揺らしながら嬉しそうな秀才。

ナレ:説明しよう!秀才の中での"お兄ちゃん"とはこうだ。1.妹がいる。2.妹をからかったりする。3.もしくは逆に妹から馬鹿にされたり、スケベ扱いされる。4.でもなんやかんや妹を大事に思っている。

ナレ:ついでに"妹"は、1.お兄ちゃんがいる。2.お兄ちゃんがうっとうしい。3.でも本当はお兄ちゃん大好き。……である!

秀才:…ん!いや、普通に、お兄ちゃん大好き!べったり!というパターンもあるぞ!どうだ!?秋!!!!

秋:え、どうって言われても…あたし達普通に仲良いし、好き嫌いと言えばまぁ…好き…?だけど。お兄ちゃーん!大好き!ギュッ…みたいなのはないよ?(笑)だいたい、双子だとそんなにお兄ちゃんって感じでもないし。

秀才:なっ…なに…?

秀才のこんな反応には慣れっこな2人。

秀才:ちょっと待て、ちょっと待て。お兄ちゃんだぞ?

秋:うん

秀才:妹からすれば、アホでうっとうしくて、余計な事をして来て…

語り続ける秀才。

春:プリンうまい。

秋:表面焼こうと思ったけど面倒くさかったからやめたとか言ってた!

春:このままでも良いよね。

秀才:そしてな、やはりお兄ちゃんはなんやかんやと妹の事は案じてるものなのさ。分かるか?

春:ゲームしよう。

秋:うん。昨日めっちゃ練習した!

秀才:わ・か・る・か?

2人の目の前に秀才。

春・秋:うわ!

秀才:君達は、"お兄ちゃんと妹"たるものがどういったものか分かってるのか?と言うのだ!

春:お前、一人っ子だろ(笑)

何も言えない秀才。2人がそのままゲームを始めて手持ち無沙汰な秀才。

秀才:おーい。

秀才:……なぁなぁ、お兄ちゃん。

春:お前にお兄ちゃんって言われたくないな!

秋:……(ゲームに集中)

秀才:なぁなぁ、妹よ。

秋:……


漫画を読み始めた秀才。

秀才:生徒会長様…

ナレ:秀才が読んでいるこの漫画『王国学園』[キングダム スクール]は、秀才が小6の頃より連載が始まった少年漫画で、生徒会役員により統治されている学園が描かれている。登場人物達はカーキ色の軍服調の制服を着ており、生徒会役員は勲章のような役員バッジを付けている。それを見た生徒達は何をしていようと役員達を恐れ敬い、敬意を表し頭を下げるのだ!

秀才:生徒会…か…

ナレ:そして生徒会長は代々受け継がれる外套を羽織っており、将校といった出で立ち。作中で事件が起きた際に外套をバサッと翻し主人公である生徒会長が現れるのがお決まりである。先日アニメがスタートした際には、例の登場シーンにファンの誰もが注目した……とかなんとか!

秀才:生徒会長ってすごいよなぁ…

春:うん。

秋:ね。

片手間で返事をする2人。

秀才:はぁ。

さすがに適当に流されている事に気付いた秀才。

秀才(独白):俺は元々、漫画やアニメにはそれ程興味が無かった。見るとしても、テレビをつけたらやっていたのでなんとなくという程度だ。しかし、この作品に出会い衝撃を受けた。生徒会…生徒会長…!なんとかっこいいのか!!!俺は憧れの生徒会長に近付く為、隅々まで研究した。そして、漫画をきっかけにこんな素晴らしい生徒会長様に出会えたのだ、漫画という物を研究する価値あり!…そう感じてから、他の漫画やアニメも研究対象とした。

ナレ:研究対象とは言いつつも秀才は浅はかである。他の作品は広く浅く、時々深く嗜んでいる。

漫画を読み終えて寝そべりため息をついた秀才。

秀才:俺はこんなかっこよくはなれない。

秋:秀、そんなに生徒会長になりたいの?

秀才:え?そ、そりゃ、なりたいともさ!

秋:なりたいともさ!って(笑)

春と秋は笑っているが、馬鹿にした様子ではない。

秋:秀ってさ、残念な奴だよね。

春:うん、はっきり言って痛いよ。

秀才:い…痛い……だと…?

秋:そういうのとか!…でもね、良い奴なんだなぁ。だから、応援するよ。

春:うん。応援しないとさらにしつこそうだし(笑)

秀才:なんか、叩かれている気がしないでもないが…ご好意なのだろうか?

春:ご好意もご好意ですよ。……そういや、去年は何で生徒会入らなかったの?会長と副会長以外は選挙じゃないし、1年でも入れるからとりあえず先生に言ってみれば良かったのに。

秀才:ふははははは!甘いな、春君!

「ふはは…」とうまく笑えず文字通りに"言っている"秀才。

春:は、はあ…わたくしのどこが甘いのでしょう?

秀才:まずは様子見だ!如何なるツワモノが集まり、生徒会と言う王室を築き上げているのか!いきなり身を賭すのは危険と言うもの…

秋:どうせタイミング逃しただけだよね?

春:秋、つっこんでやるな。

秀才:そんなわけなかろう!見定めていたのだよ、時を!!!

ナレ:実際の所、1年生で生徒会役員になれるという発想が当初無く、知った時には既に遅しであった。

秀才:よいか?春君、秋君!生徒会とは如何に強大であるか!まずはそれを知らねば攻め入る事など叶わぬ。

春:生徒会の仲間入りしたいんじゃないの?

秋:攻め入るって敵対してるね。

秀才:そう、生徒会…学園を統べているのだ。会長はおろか、その他の役職であっても決して侮れない力を持っているのだよ。そこへこの身一つで飛び込むなど、いくつ命があっても足りなかろう!

春:武装集団かよ。

秋:つっこんでやるな。

秀才:いいか!諸君!

秋:あー、もういい!分かった、分かったから!もっと具体的な話をしよう!

春:うん。それがいいよ。もう生徒会の強大さは分かったわけじゃん?そしたら、もう準備万端も同然だよ。

秀才:そうか?

秋:そうだよ!…んーと、じゃ、今年はひとまず書記辺りで生徒会入ってみれば?

春:いいね!偵察だよ、偵察。生徒会内部を知れば、会長になるのも容易い…て感じ?

何故か気乗りしない様子の秀才。

秋:どうしたの~?憧れの生徒会じゃ~ん!書記じゃ嫌とか?

秀才:……

秋:おーい…

秀才:何の準備もなく、俺のような奴が生徒会になんてなれるだろうか。生徒会だぞ!?こうしてる間にも生徒会の座を、そして将来は生徒会長の座を狙う奴らが様々な工作を…

春:ねぇよ。

秀才:む…

春:こうしてる間にもと思うなら、明日にでも先生に言えばいいんだよ。書記とか庶務とかなら入れるって。

秀才:生徒会の名を…冠するのか…

何故か震える手のひらを見つめる秀才。

ナレ:秀才にとって「生徒会」とは、重く、遠い世界のような響きだ。この言葉だけで緊張してしまう。

春:秀、「生徒会」って何なのか分かってる?俺達だって、生徒会の一員なんだよ。

秀才:何ッ…?お、お前…いつの間に…

春:あ、いやいや。なんつーの?"そういう"意味じゃなくて。生徒会って、全生徒の事を言うんだよ。

秋:あー!なんか生徒手帳にもそんなような事書いてたかも……あ、ほら。

秀才:生徒全員…

春:そう、生徒会ってのは、生徒全員の事で、その中から各クラス代表が学級委員とか風紀委員?とかいうの。そんで、それらを更にまとめる代表が生徒会「役員」とか「本部」「執行部」っていう人達。

秋:だからさ、「生徒会」って言葉にそんなにビビらなくて良いんじゃん?

秀才:俺も生徒会の一員…

ナレ:どちらかと言えば「本部」や「執行部」といった言葉の方がお堅く緊張しそうなものだが、「生徒会」という世界に囚われていた秀才にとって自身も生徒会の一員であると認識する事は心構えを変えるきっかけとなったのだった。

秀才:そうか…何も恐れる事はないのだな。生徒会…俺も一員…受けてたとうじゃないか執行部!!!

ナレ:何と戦おうとしてるんだ……そうつっこむのはやめた双子であった。


続きはマガジン『これが生徒会!』(https://note.com/ichiroiro/m/m3e293ebb4fd4)で、のーーーんびり公開していきます(笑)