5.清く正しく

【登場人物】

高木 秀才(たかぎ ひでとし)、原 春(はら はる)、原 秋(はら あき)→『1.これが生徒会』参照。

光明院 涼華(こうみょういん すずか)→『4.新たな仲間…?』参照。

白鳥 沙月
(しらとり さつき)→『3.謁見』参照。

春と秋の母(原母)

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清く正しく

涼華:生徒会長を目指してるのは分かった。

秀才:ならば、我が生徒会に加わってくれるな?涼華嬢。

涼華:いや、意味分かんないし、その呼び方やめてよ。

秀才:そ、そうか、ならば何と呼べば…ご令嬢とやらと接するのは初めてでな。

涼華:あの、やっぱ勘違いしてるって。うちは普通の家庭だから。なんか苗字が珍しくて、響きで勝手に金持ちだと思われるんだけどさ。そんな多くはないにしろ、他と比べたら高知に多い苗字らしいよ。あんま里帰りとかしないうちだからその辺もよくわかんないんだけど。

春:うん。ごめん。

秋:ワイワイ騒いじゃって申し訳ない…

秀才:すまぬ。

沈んだ顔の3人。

涼華:あ、えっと…いいよ。そんな暗くならないで。逆に申し訳なくなる。

秀才:まぁ、その、もし王室に興味があればだ、

春:王室には興味無いと思うよ。

涼華:王室だか何だか知らないけど、あんま人前に立って何かするの好きじゃないから遠慮しとく。

秀才:もったいない…あ、いや、無理強いはしない。

涼華:うん。あんまやる気ないかな。それに、お嬢様じゃないと分かったら用無しなんじゃないの?(笑)

秀才:そんな事はないぞ!君の目にはキラキラとしたものを感じる!

涼華:は?

春:秀、いい加減にしろ?気持ち悪がられるだけだから。

秋:うん、あたし達は慣れちゃってるけど、普通の人は気味悪がるよ。

春:さーて、もう帰ろう。ごめんね、押しかけて色々騒いじゃって。

秋:ごめんなさい!よし、秀、行くよ!

双子に引きずられて行く秀才。

涼華:なんなの?あれ。

秀才:少しでも気が変わればいつでも来てくれー!君が必要だー!君がいてくれればいいのだー!

秋:はい、静かに!

春:状況悪化させるだけなんだよなぁ、こいつ。

ぽつんと残された涼華。

涼華:君が必要だ(笑)………か。本当に必要とされてたらいいな。


――――――――――――――――――――

原家。

秀才:うむ。涼華嬢は仲間に加わってくれるだろうか?

秋:乗り気じゃなかったよ。

秀才:そうなのだ。うーむ。

春:いい加減諦めなって。無理に言ったところで嫌われるだけだよ。

秀才:そうだな…しかし、仲間に取り入れたい。

秋:何でそんなにこだわってんの?お嬢様っぽいから?(笑)

秀才:いや…所謂お嬢様ではないのは分かった。しかし、あの目は…良いものを感じるぞ!

秋:良いものって?

秀才:こう…あれだ。共に良き学園を作り上げるのに…その…あれだ。

春:どれだ。

沈黙。

春:だから、いい加減に諦めなって。漫画っぽい感じの人を集めたいだけっしょ?そういう人を集めるだけじゃ、良き学園とかいうのは作れないと思うよ。

秀才:いや!そうじゃない!本人は謙遜しているが、きっと力になれる、なってくれると思うのだ。

秋:んー、見込みがあったっていう感じ?

秀才:そうだ。

秋:そっか。

春:あ、秀さ、明日生徒会の会議じゃなかった?

秀才:む…そ、そうだな。

春:準備できたの?

秋:準備とかあんの?

春:ないと思う(笑)でも秀がすごく緊張して、備えねばー!って言ってたから。

秀才:備えてないのだ。

春・秋:だろうね。

秀才:だろうね?

秋:そうでしょ。だって備える事自体そんなないし、秀だからさ。何て言うの?慌てるだけで準備できなそう。

秀才:む…そんな事は…

春:あるんだなぁ。

ナレーション:秀才、撃沈。

秋:そんなに落ち込まなくても(笑)

秀才:どうすれば良い!?

秋:別に自己紹介くらいでしょ?やる事は。

秀才:そうなのか?

秋:たぶん。「庶務の高木です」って言うだけだよ。

秀才:会長への礼はきちっとできるだろうか?

秋:そんなのないよ(笑)全員で「よろしくお願いします」とか、それくらいでしょ。

ナレ:秀才のイメージ上、役員会議とはこういったものである…

――――――――――――――――

長机の短辺の席に白鳥がついている。
長辺、白鳥の右側に副会長、左側に書記。

副会長:それでは、第一回生徒会役員会議を始める。

白鳥以外、立ち上がり白鳥へ向かい右手を左胸に当てる。
白鳥、全員の顔を見てから会釈程度。
全員着席。

白鳥:諸君、よく集まってくれた。本日より、この学園をあるべき姿へと導くべく力を貸してもらうぞ。

白鳥以外:はっ(返事)

――――――――――――――――

ナレ:そして、この程度しか思いつかない。

秀才:むむむ。まず背筋を伸ばして、手の角度はこうか?いや、もう少し真っ直ぐの方が…?

春:そんなのないって。軍隊じゃないんだから(笑)…秋ー!これ分んないー!

秋:これってか全部じゃん。

春:だって数学できないんだもん。算数の時からできないもん。

秋:得意そうなのにねー。

春:よく言われるけどさ!できないもんはできない!

秋:えらそうに言わない。教えてあげるから。

春:一応、教えてもらいながらならできるし、テストにはいつも間に合わせてるよ。

秋:知ってるわ(笑)てか、「秋はテスト勉強しかしないよね~」とか言って馬鹿にしてたの誰ですか?

春:んー、まぁ、ごめんだけどさ。秋もできるっちゃできるのは分かってる。

秋:ストレートに「できる」って言って欲しい。

会長への”礼”を無言で練習している秀才。

秀才:あああ!会議なんて出席できない!!!!

春:あー、なるほど。これ見た事あるわ。

秋:さっきやったしね(笑)

秀才:おおおおおおおい!

春・秋:何!!??

秀才:俺がこんなに悩んでると言うのに何故無視する!

春:別に無視してないよ。急に宿題なんて出ると思わなかったし、難しいし…とりあえず今は秀もこれ(宿題)やっちゃいなよ。そっちは明日1時間目に数学っしょ?

秋:そうなんだよねぇ。やっちゃお。

宿題に取り掛かる秀才。
電話の呼び出し音。原母が出た様子。

秀才:…この問題、教えてくれぬか?

双子、無視。

秀才:……無視か?

春・秋:うん

秀才:無視か!!!!

春・秋:(笑)

秋:ごめん、どれ?

秀才:むむ…これだ。

秋:あー、これねー、ちょっと待ってねー…

原母(声):秀くーん!お母さんが、もうそろそろご飯だから帰ってきなさいってよー!

秀才:な、なぬ!?まだ宿題が、そして会議でのお作法が…!?

春:しょうがないな。…お母さーん、宿題教えたりしてるから時間稼ぎしといてー!

原母(声):はーい!頑張る!皆も頑張って。

秋:宿題教えてるのはあたしでーす!

原母(声):はいはーい!偉い。

秋:うちもそろそろご飯だね。さっさと終わらせよ!…これは、こっちの問題と同じパターンのやつだね。

秀才:んんん。この公式とやらが分からぬ…

秋:公式は覚えちゃえば当てはめるだけだよ。

春:できる人はそう言うんだよなぁ。

秋:まぁ、なんかややこしくなってて単純にはめ込めないように見えるのもあるしね。

秀才:こうか!

秋:お、それそれ。

春:おーし、終わった。

秀才:……うむ。こちらも終わったぞ。

春:お腹空いたよ~。ご飯だ。

秀才:あの…会議は…

秋:明日の会議?うん、頑張れ!

春:応援してる。

秀才:応援は嬉しい。だが、神聖な生徒会室において清く正しい作法で臨まねばならぬのだ。どうかアドバイスを…

春:アドバイスったってなぁ。

秋:なんて事ないと思え!ってくらいかね。

秀才:なんて事…あるのだ。

ノックする音。

春・秋:はーい。

原母:失礼しまーす。(入室)宿題終わった?

春:うん。ちょうど。

原母:そう、お疲れ。ね、秀君、生徒会入ったんだって?

秀才:な、何故それを!

原母:お母さんに聞いたよ。まさかあの子が生徒会なんてって言ってたけど、秀君は真面目だし一生懸命やる子だから向いてそうだと思ったなぁ。

秀才:ありがとうございます。

原母:行事とか大変だろうけど頑張って。

秀才:…は、はい!頑張ります!頑張る!

ナレ:早くも感極まる秀。まだ始まってもいないのだが…

原母:(笑)秀君、素直で可愛いよね。うちの子達ももうちょっと可愛げあっても良いのに~。

秋:えー、お母さんそれ酷くない?

春:可愛くしてたら何かご褒美ある?(笑)

原母:そういう発言が可愛くないの(笑)…さてさて、宿題終わったならもうご飯ね。

秀才:はい。それにしても春と秋のママさんはうちの母より分かっててくれて嬉しいです!頑張ります!

原母:いえいえ、お母さんも応援してると思うよ。

春:じゃぁね。

秋:明日ね。

秀才:それでは失礼する!

原母:はいはい(笑)またね。

ナレ:意気揚々と自宅へ戻る秀才。次回、ついに第一回生徒会役員会議!なんと大事件が………いや、特にないだろう。