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頑な息子よ、ねんねしよ|エッセイ

突然だが、幼稚園児だったときの話をする。

幼稚園時代で一番鮮明に覚えている記憶は、
「いただきます」をきちんと言わなくて先生に叱られたときのこと。

当時、なぜかクラスの中で「いただきます」を「いただきマウス」と言うのが流行っていた。

ある日の昼食のとき。

みんなで手を合わせて「いただきます」と言うそのタイミングで、私は「いただきマウス」と面白がって言っていた。

先生に何度も
「いただきますだよ」
「いただきますと言おうね」
と注意されていた。

けれど、それさえも面白かった私は頑なに
「いただきマウス」
と言っていた。

そうして、何回目かの「いただきマウス」の後、
先生に部屋の外へ連れて行かれ、こっぴどく叱られた。

なんで叱られなきゃいけないの?
と当時は意味など全く分かっていなかったが、
大人になってその意味を理解し、先生には感謝した。


そんな私の長男は、2歳9ヶ月。
絶賛イヤイヤ期。
とにかく寝たくない男の子だ。

寝室に行くまでにも、

歯磨きイヤ〜
パジャマ着ない〜
トイレ行かない〜

と一悶着、二悶着、十悶着くらいあるのだが、

寝室に行ってからもさらに寝ない。

お水飲みたい。
ゆさゆさ(抱っこ)して。
どこここが痒い。

など、何かと理由をつけては立ち上がったり部屋から出たがったりする。

出来るだけ対応はするものの、
それもどこまで応えるべきか。

拒絶すると大声で泣き喚くので、それも困り果てている。

私のすぐ横には2ヶ月の次男坊が眠っているので、大きな音や声で起きられては大変なのだ。
二人が泣き喚くカオスな光景が目に浮かぶ。

なので、親二人も神経質にならざるを得ない。


そんな毎夜の光景だが、今日は一段と寝たくなかったようで、寝室に入ってから1時間。
まだまだ寝そうにない。

いい加減我慢の限界がきた夫が、
怒り気味に何度目かのお水を飲みに向かい、
帰ってきて横になる。

そしたら息子が突然手を打ち鳴らしだした。

これに、次男がビクビクと反応。
待ってくれ、起きそうだ。

「しないよ」
「寝ようね」

と声をかけても辞めない。

「しないって言ってるでしょ」

と夫の怒りボルテージが上がり、
声色も低くなる。

それでも、怯えながら控えめに。
手をパチンと打ち鳴らす。


あぁ、なんて頑固なの。
怒られるのが分かっているのに、何故か辞めない頑なさ。

そんな息子の性格は、
「そっくりだよね」と夫のお墨付き。
「いただきマウス」を言い続けた私そのものだ。


結局、夫にこっぴどく叱られ、
涙をながしながら私のところに転がってきた。

最後はなぜか耳の後ろが痒いと言うので、
「これでぜっっっっったいにっ!!!!最後だよ

と約束して、リビングに戻ってムヒを塗った。


やっと眠る気になったようで、静かに横になる。

そんな涙なみだのやりとりがあったのに、寝入る直前に大きなオナラをして夢の中に入っていった息子。
その横で私は、笑いを堪えながら悶えている。

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