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~第112回~「夏越の大祓の話」

6月末、日本各地の神社で大祓が行われます。
この大祓は夏越の祓とも言われ、人形(ヒトガタ。人の形に切った白い紙)などを用いて、身についた半年間の穢れを祓います。
また、無病息災を祈り、茅を束ねた茅の輪をくぐるため、「茅の輪くぐり」の祭日としても有名です。
※大祓自体は、自らの心身の穢を祓い、無病息災を祈る神事として、年に2回(6・12月)おこなわれます。

この「茅の輪くぐり」は氷川神社の御祭神・スサノオノミコトの神話に由来します。
『備後国風土記』逸文に以下のような神話が残っています。

北海に住んでいた武塔の神が、南海の神の娘に求婚をするために出かけたところ、途中で日が暮れてしまいました。
そこでその地で暮らす将来という二人の兄弟に「泊めてほしい」とお願いをしたところ、豊かな弟・巨旦将来は宿を貸しませんでした。
一方、貧しい兄・蘇民将来は宿を貸し、粟柄で席を作り、粟飯などの御馳走でもてなしました。
その後、何年が過ぎ、武塔の神は八人の子供を連れて再訪。
蘇民に「昔の親切に応えたい。お前の子供や家族は?」とお尋ねになりました。
蘇民が「私には娘と妻がおります」と答えると、「では茅の輪を作って腰の上に着けなさい」とおっしゃいました。
蘇民は言われた通り、茅の輪を作って腰に着けさせました。
そしてその夜、蘇民の娘ひとりを残し、みんな死んでしまったのです。
そして武塔の神は「私はスサノオノミコトである。後の世に疫病があった時には、蘇民将来の子孫だと云い、茅の輪を腰に着けた者だけは疫病から逃げることができよう」とおっしゃいました。

この神話で腰につけていた茅の輪は、いつしか日本各地の神社の境内に設置されるようになりました。
「疫病が消えてほしい」という私たちの祈りは、時代や地域に限らずに万人に共通した祈りです。

最後になりますが、この神話とは別に、さいたま市指扇の堀江家にスサノオノミコトがお越しになられ、麦飯で丁重におもてなししたという伝承も残っております。
スサノオノミコトの旅は関東まで及んでいたのかもしれませんね。

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〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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