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アドリアーノ・ベトロサの第60回ヴェニス・ビエンナーレをイメトレする/一日一微発見448

ヴェニス・ビエンナーレに最初に行ったのがいつだったかは定かではないが、はっきり意識的に行くようになったのは2000年頃からだと思う。それ以降はこの2年に1度の国際芸術祭に皆勤賞で行くようになった。
コンテンポラリーアートは、時代を写す鏡であり、もっと言えば未来を予知する水晶の玉だ。
ヴェニス・ビエンナーレを見続けることは、アートの流行りとかの話しではなく、アートを通じて時代や人間の行方を診る重要な機会なのである。
ビエンナーレ自体は4月から始まり、半年ぐらい開催されるが、僕は大学の新学期の授業もあるし、慌てることなく、毎回6月頃に行く。たっぷり妄想を膨らましてからいくのが好きなのだ。

今回のディレクターは、プラジル人キュレーターのアドリアーノ・ペドロサである。彼はサンパウロ美術館MASPの館長であり、昨年末の『Art Review Power100』で14位。

彼はカリフォルニアの美術大学でアートを勉強した。ヴェニスビエンナーレのオープニングパーティで、ペインターのマーク・ブラッドフォードがサプライズで参入している画像がSNSにあがっていたが、なんと同級生なのだという。
調べてみるとサンパウロ・ビエンナーレやイスタンブール・ビエンナーレなど、さまざまな国際的に重要なフェアや芸術祭に関わったキャリアがある。

2014年にMAPSの館長に就任するや、新たな展示方式(ガラスの壁面)を導入したり、また、アートの歴史や文脈を再編するキュレーションする「Historias」を初めて一躍注目を集めた。「Historias」は、アイデンティティを求心的、右翼的に強化するものではなく、逆に複数のヒストリー(ストーリー)に「イシュー」ごとに分散し、開いていくことを意図したものなのだろう。

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