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音楽が生き続けること 「坂本龍一トリビュート展」のためのメモ/一日一微発見430

初台のICCでやっている「坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア」に行くことができた。規模からすれば大きくはない展示だったが、とても考えさせてくれるよい展示だった。
個人的なメモのようなものを書いておこうと思う。

音楽はそれがつくられたり、プレイされた後、何十年たっても死ぬことはない。ひとつは楽譜で、ひとつはプレイを記録した録音だ。今はそれに加えてデジタルデータがある。
それらを通し、優れた生命を持つ音楽は、ずっと聴き続けられる。生き続ける。
デジタルデータも永遠不滅ではないが、いかにアップデートされ続けるかが今後の課題だろう。

魂の不死を希求した古代文明は、我々よりもはるかに保存メディアを追求した。石碑に刻まれた文字や、ピラミッドや古墳、さらにはミイラや埋蔵の技術を見れば瞭然だ。その真剣さには、現代文明はまるでかなわない。

生身の人間の生が「はかない」ことは止められない。そのリバウンドは、諸行無常や、万物流転、輪廻転生などの思考技術を生み出した。永久を求めるか、消滅と転生を求めるか。いずれにせよ、それと真摯に向かい合うことは、人間文明の哲学や芸術の極点であるにちがいない。

この「坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア」の会場を巡りながら想起したことは、坂本さんは単に「メディアアーティスト」ではない、ということだ。いや、正しくは、メディアということをもっともっと深く向き合っていた、ということだ。

一つは、「生き続ける音楽」ということ。そして、その土台となる「共」のものとして音楽を捉え、実践しようとしていたということだ。

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